段々と、頭が冴えてくる
視界もはっきりして、周りの景色がよく見えるようになった
「ここは…」
無機質な砂漠
空は真っ暗で、赤い目がポツリポツリと浮かんでいる
赤い目は全てこちらの方を凝視している
「赤月を吞み込んだことで…限定的に死の権能を発現させたのか…はぁ…面倒なことになった」
後ろから声がした
振り返るとそこにロノヴァが立っていた
「…………ここはあんたの?」
「違う。死後の世界…本来なら人は来れるはずのない領域だ」
死後の世界…やっぱりあの時の感覚はいつもの…
「なぁ、1つ聞いていいか」
「………なんだ?」
「さっき、オデットと蛍が…俺と同じ状態になったって聞いた。お前がやったんだよな?」
「ああ。あの時か…確かに死を齎したが…それがどうした?」
目の前の存在は、人を1度殺したことをあっさりと白状した
それどころかまるで日常茶飯事で忘れていたかのように
カナメの拳に力が入る
「…………そうだよな。明らかに違うもんな…考え方を理解できるわけねぇよな」
目の前で、何が可笑しいのかと少し首を傾げているロノヴァ
死生観が明らかに異なる
同じ人の姿を象っているのに
「なぁ、人にとって死は怖いって分かるか?」
「理解はしているが…それがなんだ?私の鑑みることではない」
ダメだ
話がずっと滑るような…歩み寄ろうとしても近づけない
目の前の女が改めて上位存在であると実感する
「っ…これは…」
そんなことを考えている間に体が半透明になる
端から粒子状になっていく
「もう時間か。復活が始まる」
目の前の景色が掠れていく
ロノヴァの姿も薄れていく
彼女はカナメに近づくと、倒れるカナメを受け止める
「スネージナヤから離れた方がいい」
「ッ!」
一気に意識が引き戻される
周りを見回すと、上にオデットが乗っかかっていることに気づく
どうやら現実に戻ってきたようだ
(死後の世界…あの時…あいつはなんて言ってたんだ…)
意識が途切れる寸前にロノヴァに囁かれた言葉を思い出そうとするが、思い出せない
そうやって考えに耽っていると、上に乗っかっているオデットが身動ぎする
「うっ……」
倒れていた蛍も起き上がっている
オデットは上半身を起こして、寝起きのように目を擦りながら周りを見回している
「あれ…私たち…何を…」
「オ、オデット…」
蛍がわなわなとオデットを指さす
オデットは最初は頭の上に「?」を浮かべていたが、だんだんと目が覚めてきたようで下の方を見て、自身がカナメに馬乗りになっていることに気づくと顔を段々と赤くして、口をわなわなと震えさせる
「オデット、一旦降りてくれないか?重さで腰の感覚が…」
ゴッと重い音と共にカナメの悲鳴がスネージナヤに響き渡った