「申し訳ない…まさか呑み込まれるとは…」
「別にいい。怪我人も出ていないし、私も久々に手合わせができたと思えば何も問題ない」
治療室のベットの上でカナメは体を起こす
まだ少し体は怠いが、健康上の問題も無いらしい
ベットの横では召使がリンゴの皮をむいている
「ほら、食べるといい」
皮を剥き、1口サイズにカットしたリンゴを召使が差し出してくる
カナメはフォークを掴もうとするが、召使はそのまま口元まで差し出してくる
「えっと…その自分で食えますって…」
「無理はしない方がいい。休めるなら休むべきだ」
「……はい」
言葉に甘えて召使が差し出したリンゴを食べる
少しの間、親鳥から餌を貰う雛鳥のようにリンゴを食べる
「ご馳走様でした」
召使は食器を片付けている
少しお腹が満たされたからか、少し眠くなってくる
「眠いのか?なら少し寝るといい」
食器を片付けた召使が眠そうなカナメの頭をゆっくりと撫でる
段々とカナメの瞼が落ちていく
召使がカナメの額に唇を落とす
そのままカナメは眠りについた
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「あ、アルレッキーノ!」
資料庫で、蛍は次々と執行官が到着している中でアルレッキーノを見つけて駆け寄る
「やぁ。あれから体調は大丈夫かい?」
「うん。あのくらいのアビスなら何もないよ。それよりもカナメは…」
「健康に被害は無いそうだ。今は診療所でぐっすり寝ていたよ」
「良かった…」
蛍は胸に手を当てて深く息を吐く
もしかしたらアビスはハジメにとっての心臓のようなものなんじゃないか
奪ってしまったら彼の命も危うくなるのではないか
そんなことを考えてしまい昨日は寝れていなかったのだ
その後、道化もそろい、遂に「賢者」フロプタチュールが残した手記の封印を解放し、内容を閲覧する
「……まさか昔の人と話せるなんて…」
「…やつならやりかねん。奴の残していった良心というべきなのかもな」
それぞれがフロプタチュールからアドバイスを受けたようで、用事が終わった執行官たちは解散した
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「はぁ…ほんっとうに息が詰まるわ」
資料室での用事を終えた蛍、サンドローネ、アルレッキーノ、ロザリンはスネージナヤのカフェでお茶をしていた
「サンドローネも息がしにくくなるのか?」
「そういうわけじゃないわよ!この…空気と言うか…大きな戦いを前にしたときの緊迫感があまり好きじゃないだけよ」
今、蛍と執行官の間ではすでに作戦が進んでいる
ロノヴァに対抗するために集めた生の印はレインドットによって全て散らされてしまったが、それによって女皇は生の執政をテーブルにつけることに成功した
後は機が熟すを待つのみだ
「旅人…貴女もどうしたの?かなり死の執政に敵意を向けているようだけど…」
その言葉に思わず蛍は肩を揺らす
その様子にサンドローネはさらに問い詰める
「貴女、何か隠してるわね?」
「……うん」
「私たちにも言えないことなのか?」
「ううん…でも…これは私個人の問題だから…」
心配そうに優しく聞いてくるアルレッキーノ
「何よ。私たちは頼りないって?一回勝っただけでかなり言うようになったじゃない」
「もう…それは言わないでよ…」
それに対して意地悪を言うようにニヤニヤしながらロザリンが詰ってくる
蛍は少し頬を膨らませてロザリンに抗議した後、深く息を吸って喋り始める
「ナド・クライで…一回カナメが居なくなっちゃったときあったよね」
「ああ。ドットーレによって紐のような形にされて消失したと聞いている」
「…あの男がまだ生きていたなら誰の
ロザリンが悔し気に歯ぎしりする
彼女は蛍によってつけられた傷で現在も療養中のため戦闘には参加していなかった
「それで?その時から今にどうつながるのよ」
「カナメが消えた日の夜…私の部屋にロノヴァが来たんだ」
「死の執政が?何故?」
蛍は全てを彼女たちに話した
もうこの世界にはカナメ本人がいないこと
4執政が結託し、天理に隠れてアビスを用いてカナメを作り出したこと
今のカナメも赤月のアビスを呑み込んでカナメの形を作り出していること
サンドローネとロザリンはその事実に驚愕しており、アルレッキーノは納得の表情を見せていた
「なるほど…カナメの周囲に居る時は力の侵食が落ち着いていたのはそれが理由か…」
「ちょっと待って頂戴…女皇はカナメをスネージナヤ市街で見つけたとおっしゃっていたわ…でもその時にはもう…」
重い沈黙がその場を支配する
「…それで…ロノヴァがこの前実験室に現れた時、私にこう言ったんだ」
『もう地上で自由にさせすぎた。彼も回収しなければ』
ロノヴァの言葉通りに受け取るなら、ロノヴァはカナメを連れ去ると予告したようなものだ
「私は、嫌。カナメがもう遠くに行くなんて耐えれない」
蛍は膝の上に置いていた手を強く握る
「なら、勝ちましょう。絶対に」
隣に座っていた蛍の手をサンドローネが優しく握る
顔を上げるとアルレッキーノもロザリンも心強い顔で頷いている
「うんっ!」
そして翌日、運命の日が訪れた
今後のストーリーで天理関係が動くたびにカナメの地盤が大きく揺らぐ