「俺は…カーンルイアの生存者だからだ。アビスがもたらした恐怖と絶望を、この目で見た」
遠くで、隊長や旅人、おそらく炎神であろう赤髪の女性が話している中で、隊長の悲痛な声が聞こえた
その口から語られたのは過去の痛みと後悔と不覚向き合っている声
(スネージナヤ人ではないと思ってたけど…カーンルイア人…)
夜魂の加護を受けるために黒曜石の老婆を探していたカナメは途中で事前にチャスカから聞いていた特徴で黒曜石の老婆であるシトラリを見つけるが、近くに旅人がずっと同行していたことで近付けず、ずっと周囲で身を隠す羽目になっていた
その中で夜神のいる夜神の国で何か異変が起きていること
隊長が何か策を講じていることを知り、それを止めるために隊長の後を追っている旅人達の後を尾行ていたのだ
「その選択肢が、今目の前にあるというのに、何故それを選ばない!?」
「私たちには、その決断を下す権利が無いからだ」
隊長は、今生きる人達を救うために…
炎神は今も未来も捨てないために…
互いの話は平行線になっている
その後、オロルンと呼ばれたフードを被った少年の発言から皆の意識がまとまり始めた
「でも、覚えておいて…人類は天上の神までもが刮目すほどの存在。私から見れば、貴方たち一人ひとりがまるで太陽のように眩しいの。」
頭の中に響く優しい女性の声
炎神の話を信じるならこの声の主は夜神なのだろう
夜神の声を聞き、再度炎神と隊長が向かい合う
「それまでの間、俺と俺の率いるファデュイも協力しよう。」
旅人の意見と受け入れ、隊長と炎神は互いに拳をぶつけ合う
「さて…ナタとファデュイの協定も結べたことだ…お前も早く出てこい」
唐突に隊長がこちらを見てきた
どうやらバレていたらしい
「………気づいてたのか…」
「お前は夜コッソリ逃げ出すことが多々あった。すでにファトゥス内でお前の隠れた際の特徴は共有されている」
両手を上げて物陰から隊長たちの前に姿を現す
炎神は一瞬警戒するが隊長の話からカナメがファデュイ関係者である見抜いたのか警戒を解く
そしてカナメの顔を見た時、目を見開いていた
「別に奇襲しようとしてたわけじゃなくて…ちょっと夜神に用事があって黒曜石の老婆を探してたんだが…そん時にあんたらを見つけたからちょ~っと着いてきてみただけなんだよ」
「っ…ああ…そうだったか…隊長、彼は?」
「カナメだ。ほんとは別の執行官の部下なんだが今回だけは借り受けている」
「お願いします」
「あ、ああ…よろしく」
何やら炎神の様子がおかしい
握手した際の手はやけに力強く少し震えていた
「早速だが私はもう行かなければ…シロネン、外の戦士たちに伝えて来てくれ」
「分かった。オロルンも着いてきて!」
猫耳のついた褐色ギャル…シロネンはオロルンと共に遺跡の外へと飛び出していった
すぐに炎神もバイクに跨って走り去っていった
「俺もファデュイに通告しなければならない。先に戻る。炎神には何人かファデュイの部隊をつけようと思ってるが…頼めるか?」
「分かった。ちょっと夜神と話したらすぐに向かうよ」
そう伝えると隊長も去っていく
残ったのは旅人とパイモン、カナメ、そして夜神だけになった
夜神の提案で旅人が数回の質問をし、納得の答えを貰ったのか旅人とパイモンとすれ違う
「全部終わったら…待っててね?」
耳元で囁かれた旅人の声
一瞬目があった
底冷えするような冷たい、しかし淀んだ熱を孕んだ目
「ふぅ…終わったらすぐ帰ろう…」
目頭を揉みながら夜神の前まで歩く
石像に宿っているのか石像の前まで歩くとまた頭の中に声が響いた
「さて…貴方は……なぜ、死の執政様の香りが…」
「そういえばさっき、夜神の国にはロノヴァが関わってるって言ってたな…」
「ええ。彼女の死の権能をお借りしたことでナタの民達に夜神の加護を授けられているの…」
夜神の国をさまよう魂を6体に分けられた大霊が見つけることで反魂の詩で蘇る
簡単に言うとだいたいこんな感じらしい
あれ?
「なんか…いつもやってることと変わらないな…」
「貴方なら夜魂の加護が無くても反魂の詩の対象に入ってるのかもしれない…」
「夜魂の加護は受けられないのか…」
「戦う時に蘇りたいという訳じゃないの?」
「いや、多分負けないから死ぬこともないし反魂の詩位は求めてないんだ。ただミミックフローラの貼ってるバリアが邪魔でな。それを壊すためにも夜神の加護が欲しかったんだが…」
「ええ…」
夜神から困惑の声が漏れる
「夜神様、何とか出来ない?ほら、旅人は使えてたじゃん」
「………少し待ちなさい。…なんで…古名が?」
ブツブツと何かを呟く夜神
「えっと…何かあったか?」
「いいえ。問題無いわ。貴方にこれを…」
目の前に黒曜石のような雫の形をしたものが浮きながら現れた
「古名は_____。これで、貴方に夜魂の加護が与えられたわ」
古名が聞き取れない
だが、体の奥から何か…力のようなものが湧き出てくる
それと同時に懐かしい感じがした
「行きなさい…____の__よ」
「……行ってきます」