個性:病原体   作:HERO

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個性の検証結果

 個性が発現してから一年後。

 4歳になった病は、母親が家事をしているリビングのソファの上で、個性の画面を眺めていた。

 

(くそ、抗体ができたか)

 

 画面に映る世界地図の中で、二本の棒で作ったような青いYマークが日本に噴き出しとして現れていた。

 

 個性について試していく中で、病は個性によって感染させる方法を知った。

 その方法とは、まず画面でウイルスや細菌をカスタマイズ。この時に付与するスキル──今後は特性と呼ぶ──は例外を除き後から変更することはできず、付与するたびにポイントを消費する。

 その状態でさらにポイントを消費して創造し、自ら誰かに触れる、あるいは呼吸によって空気中にばら撒くことで徐々に感染させていく。

 特性を後から変更できる例外は"自身の身体に留まっている"場合。つまりは他者、あるいは空気中に散った細菌やウイルスには手を出せず、ただ個性の世界地図でどこに行っているのかを眺めることしかできなくなる。

 

 特性や創造に使用するポイントを得る方法は多くの生物に感染させる、もしくは時間経過で一定数回復する。

 感染させると一定確率で抗体が発生し、抗体が発生した細菌やウイルスは効力を失って無駄になってしまう。

 ただし自身の身体限定で抗体は生まれず、また個性によって産まれた細菌やウイルスによる悪影響を受けない。

 

(特性を付与するのに毎回ポイントが必要ってのがな……レベルが低いとあまり効果が無さそうだし)

 

 自動回復の上限は100Pt(ポイント)で、一日10Ptの回復。

 ウイルスを創造するのに100Ptが必要で、特性のレベル1を付与するには一つにつき10Ptが必要。付与した特性はその細菌やウイルスが死滅、あるいは効力を無くすまで他に付与することができなくなる。

 それゆえ"思考誘導"のように重要そうな特性は未だに付与したことが無く、どれほどの効力があるのか不明。

 

 ポイントを獲得するには10人以上に感染で1Pt。症状を発症させればさらに1Pt。

 ただし感染力が低く、そのくせ抗体がすぐにできるせいで広がらず、中々ポイントを得ることができない。

 

(この一年で成長系のレベル1は自分に感染させたけれど……どれだけ効果があるのか分からないんだよなぁ)

 

 特に大事だと思った成長促進系は全て自身の内に感染済み。

 主に"身長"、"筋肉密度"、"骨密度、"脳機能"、あとは"性器系"の"大きさ"、"硬さ"、"長さ"。

 ただしレベルという謎の指数が1であり、どれだけの効果があるのかは不明。

 そもそもレベルが最大幾つなのかも分からず、もしもレベル1000とかが上限ならば、1は本当に無駄でしかないだろう。

 

(つうか成長ってなんだ? 仮に150cmまで育つ人がいたとして、レベル1を取ったらどうなるんだ? パーセント上昇か? それとも固定上昇か?)

 

 その辺りの事も全く分からないため、とにかく経過を見て考えていくしかない。

 幸い自身の肉体に留まっている限り特性は変更可能。身長が伸びすぎそうならば特性を変更すればいいし、もう少し欲しいならば追加で取ればいい。

 

 そうして考え込んでいると、ふとインターホンの音が家に鳴り響いた。

 母親──黒染 伝(つたい)が家事を止めて「は~い」と言いながら玄関へと向かっていく。

 しばらくして聞き覚えのある声が玄関から響いてきた。

 

「こんばんは! やまいくんいますか!」

 

 元気そうな少女の声に立ち上がり、玄関へと歩いていく。

 玄関には案の定、三白眼でボブカットの少女、耳郎響香が立っていた。

 彼女は目が合うと嬉しそうに笑い、こちらへ手を振り始める。

 

「あっ、やまい! やくそく、わすれてるでしょ!」

 

 彼女、耳郎響香とはよく遊ぶ仲ではあるが、その遊びはもっぱら音楽に関係していた。

 病は前世の頃から音楽に詳しくなかったのだが、彼女のおかげで少しは分かるようになっていた。

 そして今日は約束の日。彼女の家に向かって歌と、ついでにギターを教えてもらう約束である。

 

「あー、そうだった。ごめんよ」

 

 病がそう言うと、耳郎は耳たぶのプラグを揺らしながら無い胸を張った。

 

「まったく! うちがいないとだめなんだから!」

 

 フフン、とでも言いたげに胸を張る耳郎に「そうだね」と同意すると、さらにプラグが激しく揺れる。

 しばらく胸を張っていた耳郎は病の母親へと向き直り、元気な声を出した。

 

「やまいのおかあさん、おじゃましました!」

 

「ふふ、いつでも来ていいからね」

 

 耳郎の行動に母親はニコニコと笑い、病の背を押して耳元で囁いた。

 

「ほら病。しっかりエスコートしてあげるのよ?」

 

 要らん気を、とも言えないのが悔しい所ではある。

 なにせ病の目的に耳郎は既にターゲット入りしていた。

 幼馴染なのだから、当然将来のハーレム候補である。

 まあ耳郎自身は病の暗い欲望には一切気が付いていないようだが。

 

「あー、うん。行ってきます、母さん」

 

 耳郎の手のひらを握り、共に扉を潜って道を歩いていく。

 子供だからかとても温かく、柔らかい。

 ただ指の腹が少しだけ硬い気がする。

 

 耳郎の家まで残り半分といったところで、彼女が笑顔で振り向いてきた。

 

「きょうはひきながらうたもうたおう!」

 

「うん、俺は分からないから教えてくれないかな?」

 

「もちろん! ほら、はやくいこ!」

 

 ずっと個性の検証をしていても仕方がない。

 たまには気分転換も必要だと、走る耳郎に遅れないよう病も走り始めた。

 

 

 

 ****

 

 

 

 耳郎の家までやってきた病は、しかめっ面の肩まで伸びた金髪男性に睨まれていた。

 

「……!」

 

(こわ)

 

 耳郎にギターを教わりながら、男性──耳郎の父親の視線を努めて無視する。

 耳郎はそんな父親に言いたいことがあったのか、ふと教えるのを止めて立ち上がった。

 胸を反らし、頬を膨らませる。

 

「ぱぱ! やまいをにらまないで!」

 

「うっ……ご、ごめんよ響香」

 

 何故かはしらないが、耳郎の父親である彼には最近から睨まれている。

 嫌われているのか、それとも本性がバレているのか。分からないが、母親は普通なので父親特有のものなのだろう。

 確かに一人娘が子供とはいえ男児と仲良くしているのは、父親的には嫌なはずだ。

 というわけで、病は耳郎の父親をフォローするべく口を開いた。

 

「まあまあ、耳郎のお父さんは耳郎のことが心配なんだよ」

 

「むぅ!」

 

 耳郎は納得してい無さそうに、さらに頬を膨らませる。

 そんな様子が可愛らしく、つい膨らんだ頬を指でつついてしまった。

 ぷしゅ~と空気が口から抜けていき、頬がしぼんでいく。

 

「そんなことよりさ、もっとギターについて教えてほしいな」

 

 病がそう言うと、耳郎はチラリと父親の方を見てから病と目を合わせた。

 しばらく見つめ合っていると誇らしげに鼻を鳴らし、笑顔が浮かんだ。

 

「しかたないなあ! いっぱいおしえてあげる!」

 

 耳郎は肩を寄せて密着してくると、「よくみててね」とギターの弦を指で抑えた。

 そのままピックで弦を揺らすと、ピアノでいうドのような音が鳴った。

 

「ここをおさえてならすとたかいドで、こうおさえるとふつうのドなんだよ!」

 

「お、おお」

 

 覚えたてなのか、少し思い出すように止まりながら教えてくれる。

 とても楽しそうにしている耳郎の顔を見つつ、抑える場所を覚えようとしてみるが、複雑すぎてよく分からない。

 ただまあ、せっかく教えてくれるので今回で覚えたい。

 なので申し訳なく思いながら楽しそうにしている耳郎へとお願いすると、彼女は子供を見るような目つきをしながら鼻を鳴らした。

 

「あー、もう一回教えてくれない?」

 

「もー、しかたないなあ! とくべつだよ!」




個性【病原体】

ポイント制のゲームのような個性。
他者には見えない半透明の画面を表示させ、そこで細菌やウイルスのカスタマイズを行う。
初期ポイントは100Pt。自動回復するが一日に10Ptずつ。自動回復上限は100Pt。
他者に感染させる、または症状を発症させることでポイントを獲得することができる。

細菌やウイルスの創造に100Pt。
成長系の特性レベル1を付与するのに10Pt。
必要Ptは特性によって変わる。
一度付与した特性は、特性を持つ細菌やウイルスが死滅、あるいは抗体によって全てが効力を失うまで使用不可になる。
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