個性:病原体 作:HERO
しかしこの世界ではそうではない。
"ヒーロー"という職業が存在し、ヒーローを育成するための学校まで存在する。
一応は公務員らしいが、報酬は歩合制。"個性"を悪用する"
英雄がそれでいいのか、とツッコミたくなる部分も多々存在する。だがこの世界におけるヒーローとは、この職業の事を意味していた。
金、名声、力。"モテたいから"という理由など、もはや英雄じゃないだろう、と言いたくなる動機でなる者も多数いる。
そんなヒーローという職業を知った黒染 病。6歳になり、絶賛小学校の始業式に出ている彼は。
(どうやったらなれる……?)
猫耳も禿げたおっさん校長が長話をしているのを聞き流しながら、邪な気持ちを持ちでヒーローになれないかを画策していた。
当然ながら、力や名声を欲したわけでも、困っている人を助けたいから、なんて考えではない。彼がヒーローになりたい理由はただ一つ。
(モテたい……!)
個性のおかげで"思考誘導"ができるのは分かっている。それでも、自身の力で女性にモテて、なおかつハーレムを作りたいと思うのは男の
隣にいる幼馴染の耳郎をチラリと見る。
日が経つにつれてクール系美少女へと育っていく彼女へは、まだ特殊な特性を持つ細菌、ウイルスを感染させたことはない。
成長系で胸を育てようかとも思ったが、仮に小さくなってもそれはそれで味である。
病が見ていることに気が付いたのか、耳郎のジト目と目が合った。
「何見てるの」
「耳郎は可愛いなって」
「っ、うっさいバカ」
照れてくれたのか、耳たぶでペチっと叩かれた。
全然痛くないし、むしろその動作が可愛いので口から出そうになるが、これ以上言うと刺されそうなので堪える。
よく見れば頬が少し赤くなっているので、一応は意識してくれているみたいだ。
(まあそうじゃないと困るんだけどさ)
個性の仕様をある程度まで把握したあの日から二年。
既に病はこの"
やり方は簡単。というよりも、1000人に感染させたことによって解放された"特性"のおかげだった。
("感染力"レベル1。そのままの割には効果は絶大だったな)
何よりもその特殊性が凄まじかった。
普通の"特性"は一度付与してしまうと、付与した細菌やウイルスが死滅するか効力を発揮できなくなるまで再度付与できない。
しかしこの"感染力"は"付与"ではなく"
一度入手すると創り出す全てに効果が適用されるという、まさしく神のような特性だった。
そしてポイントが増えたならば、やるのは成長系を自身に感染している細菌やウイルスに付与する事。
身体系、性器系の全てをレベル3へと上昇させ、さらに感染させた人数が1万人を突破したことで解放された新たな特性も付与しておいた。
(まさか1万人突破記念で解放されたのが"美容系"だとは……)
ウイルスや細菌に美容ってなんだよ、と思わなくもないが、その効果は他者から分かるほどだった。
("美肌"って何だよと思ったけれど、これだけで食っていけそうな個性だな)
取得したレベルは3。成長系は基本的にレベル1で10Pt、レベル2で20Pt、レベル3で40Pt、と倍々に増えていっていた。
だがこの"美肌"は格が違った。
レベル1の取得に50Pt。レベル2で100Pt、レベル3で200Ptである。
だがその効果は絶大。
レベル1の時点で普段から触れあう耳郎に気づかれるほどで、レベル3の今ともなれば"触れていたい"と思わせるほどの肌へと進化した。
他にも"骨格"や"美顔"、"剛毛"や"脱毛"なんてものもあったりする。
"脱毛"と"剛毛"に関してはまだ取得していないが、"骨格"と"美顔"についてはレベル2で取得済み。
この二つは"美肌"の二倍のポイントを要求してくるため、レベル3については保留中である。
校長の長話が終わったため、いつものように耳郎と手を繋いで歩いていく。
幸い耳郎とは同じ教室だったため、最後まで一緒に歩いていった。
ただ席は遠いため一度離れ、こちらへ手を振ってくる彼女に手を振り返しながら椅子へと座る。
そして先ほどまで考えていた内容を思い返し、思いついた内容について考え始めた。
(……全部がレベル10になったらどうなるんだろ?)
レベル3の時点で、耳郎が触れていたいと思うほどの効果。
レベル10にした状態で成長すれば、もしかしたら"見ただけで魅了"、なんてことになるかもしれない。
(多分成長中じゃないと効果を発揮しないから、その分倍率みたいなのが高く設定されているのかな?)
ゲームじゃないんだから、と言えないのが、病の持つ個性の仕様だった。
ポイント制。感染させるほどポイントを稼げて、稼いだポイントでまた新しい細菌やウイルスを創る。
垂れ兎耳の男性担任が何か言っているのを聞き流しつつ、今後をどうしていくか考えていく。
(成長系、特に筋肉密度とか性器系はレベル10まで取るべきだな。必要なくなればその時点で新しい特性で上書きすればいい)
上書きしてしまえば付与していた特性は消去され、ポイントも返ってこないが致し方ない。
身長5mとか、性器の大きさが1mとかになるよりはマシである。
(あとは美容系。やっぱイケメンになりたいよな)
そのためにやるべきことは、ただひたすら感染させていくこと。
あとは"感染力"のレベルをひたすら上げていくこと。
初日のため授業は無いらしく、前世もやったような大量の教科書をランドセルや手提げバッグに詰めて持ち帰る。
耳郎が重さに苦労していたので持ってあげると、「え、すご」と褒められてしまった。
これも筋肉密度のレベルを上げていたおかげだろう。なんだか力が強いし、怪我もしづらくなってる気がする。
筋トレは身長に関わる可能性があるのでまだしていないが、ある程度まで伸びたらしてもいいだろう。
先生や他の生徒に驚いた顔をされつつ教室を出る。廊下を歩いていると皆に驚かれていたので、やはりこの重さはきついのだろう。
だが今の自分ならば余裕である。
万歳、個性。
「あんた、よくそんなに持てるね。もしかしてそういう個性?」
さりげなく荷物を支えるように手とプラグを添えながら、耳郎が感心したように呟いた。
「いやぁ、どうだろうね?」
彼女には、というか世間一般に個性の事は教えていない。
理由なんて簡単で、どう考えても隔離処置される個性だからだ。
病原体が歩き回っているのだ。絶対に嫌だろうし、そんなのが小学校に居るのも嫌だろう。
なので対外的には"個性はあるはずだが何の個性なのか不明"で通していた。
「どう考えてもそうでしょ。1つでも辛いのにそれを二つって……」
周りの生徒たち、なんなら先生すら頷いているような気がする。
ただ本当の個性を言うわけにはいかない。
自身の目的のために。
(よくよく考えたら、俺ってヒーローじゃなくて
しかも自己のためである。
どう考えてもヒーローに倒される悪だが、病の前世にはとても素晴らしい言葉があった。
(バレなきゃ犯罪じゃない。うーん、良い言葉だ)
バレる心配はないはずだが、念のため細心の注意を払って個性を使用するべきだろう。
まさか細菌やウイルスが人為的だと考えるとは思えないが、この世には"個性"がある。"見ただけで誰の個性なのか分かる個性"なんてものがあっても不思議ではない。
(ま、そんな個性があったらどうあがいてもバレるし、バレた時のことは考えていた方が良さそうだな)
小学校を出て耳郎の家までの道のりを歩いていると、彼女から美味しい提案がやってきた。
「ねえ。お礼にさ、うちで何か食べていかない?」
当然、断る理由は無い。
笑顔を浮かべながら快諾し、ついでに楽器について教えてもらえないか交渉してみる。
「お、じゃあついでにベースを教えてよ」
「いいよ」
あっさりと許可が取れた。
ギターもいいが、ベースもいい。
なんか、音の基礎って感じがして。
まあ実際は、ギターを弾くのは耳郎なので、合わせるならベースがいいよな、ってだけなのだが。
「よし、んじゃあどっちが先に着くか勝負しようか」
「……あんた、その状態で勝てると思ってるの?」
教科書二人分を持った自分は確かに不利だろう。
だがそんなことはどうでもいい。この勝負の目的は勝つことではないのだ。
「なに、怖いの? この俺に負けるのが」
「っ、負けてもいい訳しないでよね!」
「しないさ!」
駆け出した耳郎に遅れないよう、病も駆け出す。
当然だが、いくら個性によって強化されていても、重りがある状態で勝つことは難しい。
だがこの勝負の目的は1つ。それはこの勝負を耳郎が受けた時点で確定達成である。
先に家の前へと着いた耳郎の誇らしげな笑顔。少し赤らんだ肌。汗が肌の上をなぞり、珠のように流れていく。
この姿を見ることができる。実質勝利と言えるだろう。
「はぁ、はぁ。私の勝ち!」
「さすがに速いな……」
「そんな重り付けて勝てるわけないじゃん!」
「いやいや、実質俺の勝ちだよ」
「……どういうこと?」
【取得成長系特性一覧】
・身長Lv3 ・骨密度Lv3 ・骨質Lv3 ・筋肉密度Lv3 ・脳機能Lv3
・性器の大きさ、硬さ、長さ、それぞれLv3
・感染力Lv1
・美肌Lv3 ・美顔Lv2 骨格Lv2