「………知らない天井だ」
まさかこの言葉を言える日が来るとは思ってなかったな。いや、来ない方が良いとは思うんだけどさ。
取り敢えず、状況の整理をするか。
俺は今ベッドで寝ている。周りを見ればベッドが複数個あり、机の上に医療品があるからここは恐らく保健室の様な場所なんだろう。窓は開いていて、風と共に明るい陽の光が室内に差し込んでいる。……良かった、リアルクトゥルフ始まったのかって正直焦ってたから安心した。まだ確定してるわけでは無いけど。
次に、ここに至るまでに何があったのか。
え〜と……高校の入学式が終わって、友人と下校してて、デカい声に反応して振り向いたらトラックがあって……。あぁ、轢かれたな俺。………え、俺生きてんの!?マジで!?あのトラックすっげぇ速度出してたのに!?
ま、まぁ生きてんのなら無問題。良かった、本当良かったぁ……!まだやりたい事があったしな!でも事故った後だし暫く入院だよなぁ……。全く痛く無いんだけどな……。
……………………ん?
「痛く……ない……?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
結論から言おう。
身体中に怪我が一つも無かった。
最初は重症すぎて痛覚がイカれたのかと思ったけどそんなことは無く、骨折どころかかすり傷一つも付いていなかった。
……………………おかしい、おかしくない?
いやだって、ねぇ?あれぞ?確実に死ぬであろう速度で大型のトラックが突っ込んで来たんだよ?普通死ぬじゃん。即死レベルじゃん。なんで怪我無いの俺。しかもよく考えたらなんでここ病室じゃないの。完全に保健室だよね。え、どゆこと??
……まぁ、いいか。よくないけどさ。
取り敢えず体は動くし探索してみるか。
ベッドから降りて部屋中を見てみるがこれと言って変わったモノは無かった。俺の私物?勿論ない!!
ちくしょう!クトゥルフか?毒入りスープか何かか!?へいKP今どうなってんの!?
シーーーーン……………
——返事がない、どうやら存在しないようだ。リアルTRPGじゃないな、ヨシ!
とにかく部屋から出るか。事件解決のためには行動あるのみよ。
俺はさっさと扉の前に移動し、ふと気付く。
何も考えずにこの扉を開けて良いのか、と。
スライド式だから扉は薄いだろうと推測し、聞き耳を立てる。
……………なんか、聞こえる。足音っぽいな。人数は……2人……か?うん、2人だ。話し声も聞こえるし。
どうしよう、隠れるか?いや、多分意味ないだろうし奇襲するにも丸腰だから厳しいか?相手によるが今は完全に異常事態、相手が只者と思わない方が良いし何より、人では無い可能性がある。
……………………ワンチャン普通の人って可能性に賭けるか。どうしようもないしな。
俺がベッドに戻ったタイミングで扉が開かれた。ノック無しは心臓に悪いや。
「お邪魔しまー………起きてるぅぅぅ!!?」
「ユメ先輩ノックくらいしましょうよ。それより、気が付いたみたいですね。良かったです」
入ってきたのは2人の女子。制服着てるから年齢は俺とあまり変わらない気がするがそれよりも、なんだ、あの美少女×2は。
1人は膝に届く程の長さがある緑がかった薄い水色の髪の女子生徒で、何がとは言わないがデカい。溢れ出る光属性のオーラも相まって直視できない。俺には眩し過ぎるんだぁ……!!それはそうと貴女絆創膏付けすぎじゃないか?まさかドジっ子属性まであるのか!?なんだその愛されキャラ枠はよぉ!!?
もう1人はピンク髪のショートヘアの女の子で身長は小学生程、でも制服着てるから違うんだろうけど。いやそれよりなんだあのめちゃ綺麗な目は!?右目は黄色で左目は青!?オッドアイか!素晴らしい!!でも雰囲気がなんとなくピリついてると言うか、なんと言うか。多分警戒されてそうなんだよね、寂しいね。それはそうと2人ともアホ毛あんのか可愛いね!!*1
「あの、どちら様で?」
「あ、自己紹介がまだだったね。私は梔子ユメ!アビドス高校2年生だよ!」
「アビドス中学校3年生の小鳥遊ホシノです」
「……………アビドス?」
どこだ、それ。なんとなくエジプト味を感じなくも無い名前だが日本語だしな。え、どこ?
「ところで、貴方は誰で何処から来たんですか?」
「ん、あぁ、俺は
「○○高校……?ユメ先輩聞いたことあります?」
「う〜ん……、聞いたことないかなぁ……」
「そうですか……。まぁ、そうだよなぁ……」
……いや、まだだ。まだ確定じゃない。
「因みに何で俺はここに?」
「?砂漠の真ん中で倒れてたからだけど……覚えてない?」
「砂漠……」
これは、もう確定か。まだワンチャン気のせいと思いたかったんだけどなぁ……。鳥取砂丘な訳ないしなぁ……。
これは確実に、また異世界に迷い込んだか。
……………………つか、なんで
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あの男……稲麻レンと名乗る人が目を覚ましてから一週間が経った。
あの後男が言っていた高校を調べてもキヴォトスに存在しない高校だと判明した。頭の上にヘイローも無いから恐らく『外』から来たのだろう。送り帰すにしても『外』の何処から来たのかが正確に分からないと類似した別の場所に行くことになってしまう。
そんな男に何を思ったのか……どうせいつもの親切心でしょうがユメ先輩はアビドスで保護することにしました。
今は連邦生徒会に男が何処から来たのか調べてもらっていますが……私はユメ先輩の分まで警戒を続けています。どう考えたって怪し過ぎますからね!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
あれから一ヶ月以上経ちました。
彼の調査結果は不明、何処から来たのか分からない。それが調べてもらった結果でした。連邦生徒会って本当に使えないですね。
まぁつまり、彼を送り帰すという手段は実質消えた様なものです。そんな彼に対してユメ先輩が何をするのか。……はい、もう分かりますよね。彼をアビドス高校1年生として迎えました。
連邦生徒会に保護してもらえば良いのではとか思いましたが、別に反対はしませんでした。この一ヶ月の間で彼が悪意を持って
ただ、まだ信用はできません。キヴォトスには居ない人の男性ですから何を考えているのか分かりませんからね。それに、『外』で住んでいた場所は銃社会じゃないとか言っていた癖に、やけに銃を持つ姿が様になっていると言うか、手慣れているというか……。
ともかく、これからも監視は続けます。あと、ユメ先輩はもう少し警戒というものをですねぇ!?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
なんだかんだで数ヶ月も経ちました。
もう……はい、警戒するのも馬鹿らしくなってきました。というか、なりました。
毎日校舎の掃除をしていたり借金の話をしても寧ろ積極的に借金返済の案を出したり手伝ったり、自治区の住民の人達と親しげに話していたり頼られていたり……。
そんな姿を見続けてなお疑い続けるとか無理です。私にはできませんでした。ユメ先輩?あの人は最初から警戒どころか距離感縮めにいってたので今では随分仲が良いです。側から見ればユメ先輩が先輩に頼っているように見え……ん?が逆になってません!?
まぁつまり、何が言いたいのかと言うと。
これからよろしくお願いしますね、レン先輩?
稲麻レン
高校1年生。入学早々転校するハメになった哀れな主人公。持ち物も何もない状態で砂漠で倒れていたのでユメ先輩が来なければ詰んでた。
苗字の読みが別作品の主人公の名前と同じだが、ただの偶然で全くの別人である。正直作者が一番驚いてる。
梔子ユメ
高校2年生。先輩方が卒業し1人(ホシノ除く)になっても頑張ってる健気な子。新しい後輩ができてめちゃくちゃ嬉しく、連邦生徒会に転入申請出した後にお祝いで柴関ラーメンでラーメンをめちゃくちゃ奢った。勿論ホシノにも奢った。財布は寂しくなった。
小鳥遊ホシノ
中学3年生。人は皆良い人!を地で行く先輩の代わりに警戒やらなんやらを頑張ってる健気な子。貴方からレン先輩と呼び方を変えるのに少し勇気が必要だった。呼んだ後は柴関ラーメンでレンにラーメンを奢られた。ホシノは困惑してたがレンは嬉しそうだった。ユメ先輩?ずっとニコニコしてたし勿論奢られた。
レンの友人
恐らくもう出ないだろうが一応補足。彼の名前は友人(ゆうと)である。