あと、今回長いです。いつもの倍です、ヤバいです。
私が外に出るようになってから大体一年が経った。
今でも賞金首狩りはさせてくれないが、代わりに1人でも釣りをしに行くことが出来るようになった。外に出る時はレン兄さんも一緒だが。
『……今日はあまり釣れないな』
釣りを始めてから既に二時間は過ぎたが、未だに釣れた魚はゼロ。ポイントを何度か変えても結果は変わらずだった。
これは困った。非常に困った。レン兄さんが山菜以外も集めてきてくれるだろうとは思いつつも、自分も貢献したいという気持ちはある。
しかし釣りでの成果は期待できない。沖の方に出れば変わるかもしれないが、ボートを持っているわけでは無いので断念。
では、どうするか。
『……アサリを集めるか』
私はバケツを持って砂浜に移動した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『サオリー、迎えに来たz………何があった?』
『魚が釣れなかったからアサリを集めてたんだ』
『そうだな、バケツにぎっしり詰まってるからそれは分かるんだが』
レンが私の方に向き直す。正確に言えば、私の腕の中で動いてるモノに視線を向ける。
『そのデッッカイ蟹はどうした?』
『近くにいたから捕まえた』
『……………そっかぁ』
今日は蟹鍋だなぁ……と呟き、レン兄さんが遠い目をしながら空を見上げた。確かレン兄さんもカニが好きだったと思うんだが……いや、そういうことか。
『レン兄さん、カニの処理は任せてくれ』
『違うそうじゃない』
?どういうことなんだ?
『……まぁいいか。じゃ、さっさと帰ろうか』
『ああ』
こんなにデカイカニならみんなも喜ぶだろう。……今から楽しみだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
サオリ達は忘れていた。
レンによって日々安全で平穏な暮らしをしていたことで、それを完全に失念していた。
ここは、アリウスである、と。
───それは、唐突に訪れた。
レンとサオリが不在の家に、砲撃が撃ち込まれた。
およそ人に、ましてや子供に向けるモノではないそれは、キヴォトスで産まれたからこそギリギリで耐えられる程の威力が込められていた。
その結果、家は崩れ落ち、家の中に居た4人は重傷に陥り意識を失っていた。
『作戦、完了しました。このガキ共はどうしますか、マダム?』
『紫色の髪以外は放置………いえ、それらも連れてきなさい』
『イェス、マダム』
砲弾を放った集団の隊長格と思われるアリウス生徒が、トランシーバーでマダムと呼ばれる人物に連絡する。
トランシーバー越しに返ってきた声には、酷く厭らしい悪意が込められていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
帰ってきた2人が目にしたのは、無惨な姿へと変わってしまった家だったモノ。
2人は家に居た家族を血眼で探したが、既に連れ去られているため見つかるわけが無かった。
『くそッ、どこだ!どこにみんなは……っ!!』
『………』
サオリが悔しげな表情で瓦礫に拳を叩きつけている中、レンは黙ったまま地面を見つめていた。
『………なるほど、誘拐か』
『……っ!?な、なんでみんなが……』
『理由は分からないけど、食料目当てなんかじゃなさそうだな。人数が多すぎる』
レンは地面に残っている足跡や破片を見つめながら思考する。
相手は何を考えてここを襲ったのか。何故皆を殺さずに誘拐したのか。
しかし、いくら考えても憶測の域を出ないため思考を中断し、瓦礫の山に近寄る。
『サオリ、迎えに行くぞ』
『……は?相手の場所も分かって無いんだぞ!?』
『足跡で分かる』
『そ、そうか……』
一瞬シリアスの気配が消えそうになっていたが、当人達は至って真面目である。本当である。
『準備が出来次第すぐ出発する』
『ああ、了解だ!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アリウス自治区、バシリカ。
かつては神聖な場所であっただろうそこは、今では悲しいことに生徒会長を勝手に名乗る自称大人に不法占拠どころか私物化され色々と模様替えされてしまった。図太すぎじゃんね。
しかし、そんな事実が霞むほどに、その大人の姿は異様だった。
長身で白いドレスを纏い、身体の線と声から女性だと判断できるが、肌は鮮血のように赤く、目がついた翼が毛玉のように頭部を包み込んでいた。
『………私たちを、どうするつもりなの』
そんな自称大人の傍らには、誘拐された4人が手足を縛られ床に転がされていた。
『どうするも何も、今は何もしませんよ。それより、私に対して敬意を感じられませんね。大人には敬語を使えと教わらなかったのですか?』
『生憎家を爆破させて誘拐するようなやつに対して敬意を払えって言われてないからね』
『生意気なガキですね……』
自称大人は大袈裟に肩をすくめた。しかし、口角が僅かに上がっていることから現状は自称大人の計画が上手く進んでいることを容易に察せられた。
『……目的くらいは教えてくれないかな。必要だから私たちを攫ったんでしょ?』
『何故態々この私が教える必要も無い事を教えるとおm『なんだ、何も考えてないおばかさんなんだね』……………………は?』
『だってそうでしょ?子供の私たちでも話すことができるのに、大人って言ってる貴女ができないなんてさ。本当は何も考えずにこんなことしたんでしょ?それを雰囲気とそれっぽい言葉で誤魔化してるだけだから目的も何も言えないんだ?』
床に寝かされているアツコからの小馬鹿にするような視線と共に放たれる口撃。とても5歳児とは思えないね誰に似たんだろ。
明らかに挑発だと分かる口撃を喰らった自称大人は、意外にも小刻みに震えていた。それはそうだ、大人を自称するほど無駄にプライドが高いが、あくまで”自称”である。態々”大人”を強調するようなやつが子供に馬鹿にされればそりゃあ………………
『そんな訳がないでしょうッ!!私の崇高に至る計画が!!無計画で杜撰なものの訳がッ!!!!』
───爆発する。それとそこまでは言ってなかったぞ。
『ぜぇ……はぁ……い、良いでしょう……、そんなに知りたいのなら教えてあげます……っ!』
自称大人は肩で息をしながら答える。
………それはそうと、ご存知であろうか。
人は怒っている時、視野が狭くなるらしい。息切れ等で疲れている時は尚更だ。
では、今の自称大人はどうなっているのか。
『私は崇高にいt『オラァッ!』グアァァァァァッ!!?』
上から降ってくる少年に気付けないほど、周りが見えていなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
レンとサオリは周囲の目を掻い潜りながら足跡を辿り、バシリカに到着した。
窓から中を覗くと、床に倒れている妹たちと赤い肌の人間?が見えた。
そこからの行動は素早かった。
2人は赤肌を犯人だと判断し、役割を分担した。
サオリは妹たちの救出を、レンは赤肌の注意を引く役を担った。
レンは壁をよじ登り、バシリカ上部の窓を開けて侵入する。そのまま床に降りずに、また壁をよじ登り赤肌の丁度真上の天井に辿り着く。
少しでも油断したら行動を開始しよう……と考えていると、タイミング良く赤肌が取り乱した。
レンは背にある鉄パイプを持ち、自由落下を開始。
勢いが加速していく中、鉄パイプを振り翳し、そのまま……………
『私は崇高にいt『オラァッ!』グアァァァァァッ!!?』
───赤肌の頭に振り下ろした。
落下による勢い+鉄パイプを持った少年の質量による打撃により、赤肌は倒れる。しかしレンはそのまま頭、顔、腹部に打撃と蹴りを叩き込み続ける。
その隙にサオリは行動を開始。持っていたナイフで拘束を切断し、妹たちを救出する。
『兄さん!こっちは終わったぞ!』
『了解、確殺決めたら俺も』
撤退する、そう言い切る前に、乾いた銃声が響いた。
『……………は』
レンが倒れる。
脚を見れば、銃弾が貫いた跡が残っていた。
『フ……フフ………、良くやりました』
『なっ………!?』
『な、なんで起き上がってるんですかぁ!!?』
倒れていた自称大人が、平然とした様子で立ち上がる。側にはレンを撃ち抜いたアリウス生徒が控えていた。
『そう言えば、私に目的は何かと聞いていましたね』
自称大人はレンの頭を掴み、そのまま持ち上げる。レンはその手を振り払おうとしたが、アリウス生徒に右肩を撃ち抜かれた。
『今の私は気分が良いので教えてあげましょう』
ギリギリと音が鳴るほど、頭を掴む力が強くなっていく。
『そこに居る
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
──時が止まったような気がした。
アツコとレンが目的だと?アイツは、何を言ってるんだ?
『私……?』
『えぇそうですよ、貴女は私の目的の一つだった。だから周りも傷付いているんですよ!』
『わ、私のせい……………?』
そんな事はない。そう言える程、今の私たちには余裕が無かった。
レンの処分?処分ってなんだ?捨てることだ。何を?……………………レンを?
───何かが切れる音がした。
『貴様ァァァッッ!!!!』
何かを考えた訳ではない。それはただの感情の発露だった。
怒りで握っていたナイフを
『小賢しいですね』
あっさりと、弾かれた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
サオリが放った一撃。まだ7歳の子供が出したとは到底思えない力が込められたソレは、いとも容易く弾かれる。
──しかし、ソレが無駄に終わることだけは決してあり得なかった。
──さぁ、
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
何かを、感じた。
脚と肩を撃ち抜かれ、あのババアに頭を潰されそうになりながら。血が碌に回らない脳が反応した。
なんの気配かは判断できない。
ただ、覚えのある。大切なものと、似ている気がした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
──ある者曰く、例え血が繋がらなくとも、兄と呼ばれたらその人物は兄になるらしい。
──その者曰く、兄とは妹を守るものらしい。
──ある者曰く、イメージするのは常に最強の自分らしい。
弾かれたナイフが、空中で掴まれる。
赤肌が反応する前にナイフは振り下ろされ、腕が切断された。
『グァッ………!!?』
ナイフを握っている者の碧い目は、淡く光っていた。
『う、腕が!この私の腕がぁぁっ!!』
『黙れ』
頭を包む翼のようなものを切り裂く。翼が一枚落ちた。
『お前がアツコを狙う理由は知らないが、大切な妹の1人なんだ』
レンが赤肌に近づき、ナイフを振り上げる。
『容赦は、しない』
頭部に目掛けて、一気に振り下ろされる。
赤肌はそのまま、なんの抵抗もなく………
『クソがぁぁぁぁっっ!!!』
『………は?』
やられる、なんて事は無かった。
赤肌は全力で腕を振り払った。すると黒い靄が現れ、レンに纏わり付く。
黒いもやが手足を拘束し、身動き一つ取れない状態にする。
『一度しか使えないこれを使うハメになるとは……本当に、面倒な事を……ッ!』
『兄さんッ!』
『来るな離れてろ!!』
赤肌は忌々しそうな表情でレンを見る。自分を害する者が居た場合でも基本対処はできるが、万が一の場合を考えての保険として用意していたモノを使ったのである。こんな子供相手に。それだけで、プライドの高い彼女の気持ちを大体察することができるだろう。
『ふぅ……………………まぁ、良いです。予想外のアクシデントはありましたが、目的は達成しましたから』
赤肌はレンを……正確にはレンの後ろを指差す。レンの後ろの空間は渦巻き始め、やがて黒い縦の楕円が完成する。
『貴方が二度と此処へ来られないように、別の世界へ飛ばします』
『………トドメを刺す訳では無いんだな』
『見知らぬ地で何も出来ずに苦しみながら死なせる為ですからね』
『性格下水未満かよ赤肌ババア』
『そんな挑発は効きませんよ。…………………………………………それと私はベアトリーチェと言う名前であって赤肌ババアなんかではありません』
『効いてるじゃねぇか』
喋っている間、レンの身体は少しづつ黒い渦の中に吸い込まれていた。
『──……ベアトリーチェ、お前を絶対に、殺す』
『叶わない願望を抱いれ死になさい』
赤肌……ベアトリーチェはレンの身体を突き飛ばす。
『待ってろ、絶対助けるから』
妹たちに笑って言った
これが、サオリ達から笑顔が消えた日の出来事である。
レン
意識が消えた状態で別世界に到着した。丁度建物の前に出た結果、そこの住民に保護される。建物の名前は『稲麻食堂』
妹×5
ベアトリーチェの監視下で管理される。自分たちの光が消えて毎日虚無顔。口数も少なくなった。でも、バニタスは唱えない。心の何処かに残る光が無意味なものだと思いたくないから。あとベアトリーチェは殺す、絶対に。
○○
クックック、久しぶりに暇ができましたし、彼の様子を見に行きますかねぇ!……ここ確か家があった場所ですよね?なんで瓦礫なんです??抗争に巻き込まれないように自治区の端にしたハズですが???
汚物を下水で煮込みカビが生えるような環境で何年も放置し腐らせたような性格の赤肌
語る事は特に無い。あるとすれば、転移先を野獣が跋扈する密林に指定していたのに何処かから干渉されて人の家の前に変更された、ことに気付かない馬鹿。
レンを撃ったアリウス生徒
サオリがナイフを投げた時に何かを感じその場から逃亡。(もし留まっていたらベアトリーチェと巻き込まれて刻まれていた)その後、ベアトリーチェに捕まり、様々な実験をされそのまま死亡。誘拐時のリーダーである。
レンを拘束した黒い靄
獄門疆みたいなもの。一回しか使えない奥の手。偶然手に入れただけ。
レンを吸い込んだ黒渦
ワープゲート。それ以上でもそれ以下でもない。
デッッカイ蟹
カーニバーガーを作るカニー!……とは言ってない。なんか居た野生のタラバガニ。
鉄パイプ
ソレは鉄パイプと言うにはあまりにも硬く、しなやかで細かな傷はあれど一度も曲がらず、折れなかった。レンの物心がついた時からの相棒。サオリたちが回収してあるが、何処か寂しそうな雰囲気を纏っている。