起きたら所長がラスボスで上司だった件 作:村人その1
ーーー深い眠りから、辛うじて這い出るような目覚めだった。
徐々に感覚を取り戻していく体は、未だに鈍い痛覚を貫通するように微弱な痛みを伝えてくる。
「ーーー痛ッ!」
おそらく仰向けで寝ているのだろうと上体を起こそうとして、呆気なく壁のような何かに阻まれ、頭部を思いっきり強打する。
瞼を持ち上げていないから暗かったのではなく、暗闇の中にいたから暗かったのだとその痛みが痛いくらいに教えてくれる。
痛みを和らげようとぶつけた場所をさすりながらもう片方の手で探るように動かした手は割とすぐに壁に阻まれることになった。
「.....この形って、レイシフト用のコフィン?」
触れる壁の描く曲線と、今までの”慣れ”から来るその感覚は疑いが残りながらも確固たる確信があるものだった。
もしそれが正しいのであればと、次はゆっくり顔を上げて、手探りで耳を壁に押しつける。
聞こえてくるのはやはりというか、聞き慣れた人々の声。
中には聞いたことの無い人の声もあるが、機械のアナウンスやレイシフト前の引き締まる緊張感がここがカルデアであることを伝えてくる。
「......どういうこと?」
そんなことがあるわけがないと、徐々に思い出してきた記憶が否定する。
だって、特異点Xでレイシフトしてついにカルデアに辿り着いて。
俺は....俺たちは他ならないカルデアスと戦っていたわけでーーーーー
もう、レイシフトする必要は無いはずで。
『これより、ファースト・オーダーを開始しますッ!』
本当についさっき聞いた声をアナウンスで聞いて、久々の単語も聞いて、もしかして......もしかしてッ!?
「タイムスリップしちゃったッ!?」
瞬間、熱と光りが全ての感覚を全て吹き飛ばし、再び俺の意識を冷徹に落とした。
けれど、その前に辛うじて覚えている光景があった。
コフィンの扉を吹き飛ばした白銀の騎士。
頼れる最高の後輩と、”先輩”と呼ぶ聞き慣れた彼女の声だった。
□ □ □
「で、威厳たっぷりに登場したのにやっぱりどう見ても破廉恥な格好だから恥ずかしくなって動揺した上に格好でバレバレなオルガマリー所長。いったい何でオレたち三人、過去にタイムスリップした上に立場が入れ替わっているんですか」
「人の黒歴史をわかりやすく解説した上で紹介文にしないでちょうだいッ!!」
黒い空間に、何故かあるたき火を囲うように三人の人影がゆらゆらと揺れる。
その中の一人である藤丸立香は、人理焼却から始まった様々な旅を乗り越え、数々の困難を経験した。
「いや、格好が地球の大統領な時点でそう言われても仕方ないと思います」
「仕方ないでしょう!私だって本当はしたくないわよこんな格好!」
「しかも威厳たっぷり神様みたいに『栄光の蘇生か、怠惰な永久の眠りか』なんて、死んでもないのに聞いてきたじゃないですか」
「やりたくなかったわよこんなこと!でもやらなきゃいけなかったのよ!」
「.....所長。これ、確実に立場入れ替わってますよね」
それ故に魔術というものが、もとい世界の理のようなものが一般人ながら魔術師よりも感覚でつかみ取りやすくなっていた。
理屈じゃない、経験から来る勘で。
だから、分かる。
なんなら、所長が
「私も先輩の考えに賛成です!そうでなければ私の契約先が先輩ではなく所長になっている筈がありませんッ!」
「.....マシュ?私との契約に不服でもあるのかしら?」
「い、いえッ!そういうわけではありません!ですがッ、私は先輩のファースとサーヴァントなのでッ!」
少し前のめりなマシュが必死に肯定とも否定とも取れない回答をする。
本人的には100%悪気のないものではあるのだが、それはそれとして色々棘のある発言になってしまっているのは否定できない。
「でもマシュのおかげで助かったよ。ありがとう」
「い、いえ!先輩のサーヴァントとして当然です!ただ、すいません。私も気づいたら先輩のコフィンの隣にいて、しかも
「仕方ないよ。気づいたら爆破10秒前な場所に何も知らずに放り出されたようなものだからね......って、もう一人のマシュ?」
「さらにその状況下で無闇に身をさらすことなく観察に徹したことも、さらに咄嗟に藤丸を守れたその行動も賞賛に値するわ」
「というか、よくオレがいるってわかったよね」
「それは先輩の”タイムスリップ”なる声を聞いたからですね。おかげで先輩の場所を知ることができました」
苦笑、笑顔、呆れ。穏やかな空気が流れるが、それを断ち切るようにしてオルガマリーの顔が引き締まる。
そして、二人がそれを感じ取れないはずがない。
「もう一度確認だけど、あなた達が覚えているのはあの次元孔に吸い込まれた所までね?」
「はい。重い所長を引き上げようと手を握っていたのが最後ですね」
「私も、先輩と異常な質量の所長を引き上げようとして一緒に落下してしまったところまで覚えています」
「.....言いたいことがあるけど一回流すわ。つまり、私たちはおそらくあの孔に落ちて、今ここにいる」
「それも、所長が
「アナタは、Aチームと入れ替わるように爆発四散されそうになってて」
「私は所長のサーヴァントになっている上に、さらに所長と私が別にいるという.....」
「......さっき聞きそびれたけど、やっぱりマシュがもう一人いるの?所長だけじゃなくて?」
ここまで整理すれば、理由、理屈抜きにして分かる。
「つまり、マシュが
「所長が
「先輩が
「「「全員、入れ替わってるッ!!!」」」
何処かおかしい、地球白紙化現象が起こるのだった。
Fate/GrandOrder :Cosmos in the Lost Fantasma