起きたら所長がラスボスで上司だった件 作:村人その1
「「で、どういうことなんですか!」」
「お、落ち着いてください!ジャンヌ・オルタさんにアルトリア・キャスターさんッ!」
たき火の周りが、更に騒がしくなった。
具体的に言えば人影が6つ増えた。
藤丸に迫る二人をなんとか抑えるマシュの姿に、オルガマリーは思わず目元を抑える。
「流石は俺のマスターだ。ホントに面倒ごとには事欠かないみたいだね」
「いやいやこれからもっと大変になるから、オベロンの為にも君のことはとことんこき使うね!」
「あはは、どうもありがとうクソヤロウ」
最後の召喚。藤丸のため息交じりの呼びかけで応じたオベロンとの会話と言うにはあまりにもダイレクトな言葉の応酬を見て、所長はこめかみに手を当てる。
「いやはや、世界征服の一つや二つと言ったが本当にそれに等しいことを計画するとは。まさしく今の我がマスターはウラボスとでも言うべき存在だネ。そうは思わないかねダンテス君ッ!」
「.........」
「.....おーい、返事をしてくれー」
たき火の輪から少し離れた場所でいかにも不審者と言える二人、エドモン・ダンテスとジェームズ・モリアーティーの会話にラスボス代理なアニムスフィアは頭を抱える。
「....で、ここからどうするつもりだ。マスター」
「やめてその声で喋らないで理解してるけど受け止め切れてないの黙って口を閉じてシャラップ」
「.....」
「いやほんとなんで来たのよ!そのソロモンの
「.....」
「それよりレフ!貴方、人理焼却真っ最中でしょうが!」
「.....」
「もしかしてこの感じ……呼ばれたのは藤丸だけじゃなくて、私の縁まで引っ張っちゃったってこと!?」
「.....」
「ちょっとこれどうするのよ!」
そんでもって、爆発した。
その間、暫定ソロモン王は律儀にマスターの言うことに従っていた。
「藤丸いったいどういうことよ!あなた本当にどんな縁を結んだのよ!確かに制限は多かったけどもっとこう.....あったでしょ!なんでこんな一癖も二癖もある連中ばっかなのよ!」
「「「ちょっとそれどういう意味ですか/カネ/かなぁ!!!」」」
「同人作家、アラフィフ、魔猪の氏族全員シャラッァプッ!ちょっと黙ってなさいッ!」
抗議の声をガン無視して大統領になりかけなオルガマリー所長に、「すっごい履修してたんですね」と死んでも声に出さない藤丸は感じていた。
ー多分、後何か切っ掛けがあれば彼女は文字通りに「ヤル気」になるだろう。
「大丈夫ですよ、所長!」
全員が最高の、胸を張って凄いと言える彼らだからこそ。
これだけは確信を持って言えることだった。
なにせー
「全員、俺が信じた仲間達です」
「....だから不安なのだけど」
けれどそれほどまでに、真面目な彼女をここまで追い詰めるメンバーではあることに何も否定はできないから藤丸はあはは、と笑いながら思いっきり目を反らした。
「ーこれで本当にッ!全部救えるのぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
「....ああ、このぐだぐだな感じ懐かしいな」
ホラ貝をお持ちしますねと言う後輩に、どこか懐かしさを感じながら今だけ現実逃避することを、藤丸立香は決断した。
ちなみにこの場所はカルデアスの地球と汎人類史の地球を結ぶ間の空間らしい。そんな大事な事を聞けるのは30分後、計画を立て始めるのに1時間かかるとは、本当に誰も思わなかった。
ー地球白紙化現象まで、後28ヶ月と30日
□ □ □
「ん?どうしたの、立香」
「いや、そういえば俺ってこうやって大々的に”とんでもないこと画策してます”ってはじめてだなぁって」
「あ~確かにそうでしたね。立香って基本何でも対応に追われてたって感じでしたね」
あはは、と笑う藤丸を尻目に少女はせっせと杖を動かして準備をする。あっちこっちに動いたと思ったら唐突に止まって数十分その場にとどまり続けたり。とにかくせわしなく動き回るのを、特にやることがないと言うか、やれることがない藤丸はその様子を不用心に眺めている。
「それにしても驚きました」
「驚いたって、何に?」
「全部です!そもそもよくあんな作戦を思いつきましたね」
「作戦を考えてくれたのは所長とモリアーティーのおかげだよ」
「....すいません言い方を間違えました。よく”全部を救う”なんて迷わず決められましたね」
「あはは....」
「あと、名前はしっかり今のうちから言い換えるようにしておくべきですよ。どこから情報が漏れるかわからないですから」
「ああ、そっか」
ー所長が”神”でモリアーティーがそのまま”教授”だったよね、と思い出しながら口に出す。
「それに、いくらなんでも私自身がこうやって召喚されるなんてびっくりしました」
「それはオレもそうかも。自分と所長の縁だけが頼りだったから誰が来るかドキドキだったけど、君が来てくれて良かったよ」
「.....そういう所ですよ、マスター」
藤丸のあんまりにあんまりな不意打ちの一撃に、少女は抗議の声を上げる。しかし、その間も腕と足を止めることはしない。ひたすら目的のための準備をする。
「それにしても、本当に、何もなかったんだね」
「.....うん、そうですね」
藤丸がそう、ぽつりとつぶやいた。彼が改めて周りを見回せば、そこに広がるのは、黄昏の空。
ただひたすらに広がる地平線にポツンと一本だけ残る”空想樹”がやけに目立つ....いや、それしか目立つものがない。
何もない、無くなった”妖精國”の姿。
話でしか聞いたことの無い、1回目のブリテン異聞帯の姿。
「.....そういえば、聞いておきたいことがあったんです」
「ん?どうしたの、キャスター」
手は止めないままに、空に目を奪われていた立香にキャスターは問いかける。
とはいえ、彼女は細心の注意を払っていた。
「....
バレないように、気づかれないように、頭をそっと伏せておいて。でも、伏せているのがバレないよう、最早準備の済んだ魔方陣を弄る振りをして,そっと彼女は問いかけた。
「あのときは最後に聞けなかったので、こんな機会があるならやっぱり聞いておきたいと思ったのです」
「....そうだね」
声は、震えていないだろうか。彼、こういう所ですっごい勘が鋭いからなぁ、なんて彼女は投げやりになりながらも、そっと、
でもそれは、彼女にとって恐怖でもあった。どんな答えが返って来るのか分からないから。
素敵な國でしたか?楽しい國でしたか?あなたの旅を彩るものになりましたか?
私の國を見てくれたお客様に、聞きたくて。
「ーーーーーーーーーーー」
「.......やっぱり、あなたは優しい人ですね」
ーだから、こうしてもう一度。今度は全部を救うなんて無茶をするんですね。
言葉には出さない思い。少女しかしらない、彼の答え。
だからこそ、私はサーヴァントとして彼のために戦うと胸を張って言える。
「準備できました。いつでも行けますよ」
そんな晴れ晴れとした彼女の表情とは一転、藤丸の表情は堅く、少し暗い。
「ありがとう。でも、本当に大丈夫?”前回”の記憶と今からオレたちがブリテンでやろうとしていることを考えたら.....さ。カルデアにつくなら今この瞬間しか無いと思う。少なくともそうすれば、”前回”できなかった妖精國の住人を汎人類史に移住させてあげることができるかも知れない。その後のことは.....少し大変だけどオレと皆でどうにかする。どうにかーーー」
「そんなところまで考えていたのですか」
彼女にとって意味の無い確認。言葉を一つ一つ選びながら、ただ相手のことばかり考えるその姿に思わず笑みがこぼれる。
「私は、そんなあなただからあなたのサーヴァントになったのです」
「私の國を見てくれた、私の國も含めてまるごと救おうとする、あなただからこそ」
「だから、胸を張って。どうか下を向かぬよう」
ーそのための、私というサーヴァントですよ
その言葉に、一瞬呆けた藤丸の表情が晴れ渡る。
そしてこの時この瞬間、藤丸に味方する全てのサーヴァントの意思が同じ目的へ向いたことを意味していた。
「サーヴァント、キャスター!真名を救世主トネリコ!さぁ行きましょう、マスター!」
ー今度こそ、全てを救いに!
ー地球白紙化現象まで、後24ヶ月と18日
□ □ □
............Log Date
ー各異聞帯の王より協力関係の樹立を確認
ー疑似■■モデル ■■■・カルデアスの■■完了
ー作戦名「Cosmos in the Lost Fantasma」を始動
ー聖騎士、極星に通達:「異星のマスター」と共に異聞帯の■■■■を実行せよ。
ー詐称者に通達:カルデアの監視準備を実行せよ
ー伯爵に通達:南米異聞帯で■■■の調査を実行せよ
ー魔女に通達:特異点の生成を実行せよ
ー魔術師に通達:引き続きカルデア内の情報を共有せよ
ー教授に通達:■■特異点にてカルデアと接触。”魔術師”と接触し■■■■■の調査を実行せよ
ー地球白紙化現象まで、後12ヶ月と0日