相手側との確認、承認を得てから、運行いたします。
『.............確認されたため、運行いたします。』
...
私はいつの間にか"電車"に揺られていた。
ガタンゴトン。電車の揺れのリズムに合わせて、つり革は振り子のように揺れる。
突然の事に驚いて周囲に目を配る。
他に乗っている人は誰もおらず、乗客は私だけのようだ。
どうして電車の中にいるのだろう?
どうやってここに来たか、思い出せない。
ふと、手に何かがあたる。
フワフワしていて、とても気持ちがいい感触だった。
当たった方に目を向ける。
そこには、狼がいた。
白くて小さい。子供だろうか。
いやいや、どうしてこんな所に?
興味深く見ている私をよそに、狼は気持ちよさそうにスヤスヤと寝ている。その姿はとても可愛らしかった。
思わず、手を出して頭を撫でてみる。上品な絹の糸で作られた毛布みたいにさわり心地がよかった。頭の手に違和感があったのか、狼が目を覚まし私の事を凝視する。
そのまま、もっと撫でてほしそう頭を私に近づけてくる。
それに応えて優しく頭を撫でながら、窓の外を見る。
.......窓の外の景色は建物も、草も、木もなかった。
あるのは、果てしなく広がる巨大な海と太陽だけ。反対側の窓を見ると、向こうも海が広がっている。
.....しかし、帰りたいとはなぜか思わなかった。そして、帰れない、と感じた。
『次は、芲橋、芲橋。お出口は、左側です。』
窓の外の景色をぼーっとして見ていると、電車のアナウンスが流れた。
芲橋駅。私のいた所では聞いた事のない駅名だ。
そもそもこんな所に駅なんてあるのだろうか、そう疑問を抱いた。
電車が徐々に失速していき、やがて止まる。
ぴーと甲高い音を出しながら左側の扉が開けられる。
身勝手だが、狼を抱き抱えて電車を出た。
駅としてはこじんまりとしていて、中央の天井に名前が吊り下げられており、右側に自動販売機二台とベンチがあるといった田舎によくありそうな駅だ。
また、この駅は私が見てきた他の駅と違って橋のようなものがかかっていた。橋、というより木でできた道の方が正しいだろう。
しかも、先が見えないほど長い。
他に道もないため、とりあえず渡ってみる事にした。
道をわたる途中、道の回りの水面にたくさんの白い花が咲いていた。
百合だろうか。まばらに咲いていてとても幻想的に写る。百合が海に咲いている、という問題についてはもう気にしない事にした。
にしても、雲ひとつない青空に澄んだ海に、白い百合。これほど美しい風景はあまり目にはかかれないだろう。カメラがあったら一歩歩く毎にカメラに収めてしまいそうだった。
道を渡り始めてから暫く立つと、小さな陸地が一つ、見えてきた。
そこには公園があり、ブランコやジャングルジム、滑り台などの遊具が設置されている。
私は目を見開いた。
この公園、知っている。
近所にあった公園だ。
家から出て右に曲がり、少し進むと橋でアクセスできる公園がある。
この公園はその公園と酷似している。小学生の頃はそこでよく遊んだ覚えがある。
ブランコのカラフルな色合いも、滑り台のキリンなどのさまざまな動物の柄も。あの時見たものと一緒だった。
高校生になった今ではぱたりと行くことはなくなったが、それでも覚えている。
無意識に足が動き、狼が腕から落ちないように慎重に走った。
道が終わり、草むらに足がつく。
結構な距離を走り、しかも暑い日差しを受けながらなので、肌から汗が出て、頬をつたいながらポタポタと蛇口の水滴みたく落ちる。
さすがに疲れたので狼を地面におろして、水飲み場に行き、わき出る水を飲む。
飲み終わった後、木の根元で尻餅をつき、一休みする。狼がそばまで来て、そのままちょこんと私の隣に座る。
そのまま、涼しい海風を堪能する。
ああ、とても極楽だ。離れたくない。
目を閉じて、休息に専念する。
木陰の葉の間に糸を通すように木漏れ日が肌に当たる感覚。
そして、木にゆっくりと背中を預ける。
....
続きが出来次第、連載に切り替えます。作者は諸事情によりものすごく更新が遅いです。ご了承くださいm(__)m