TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
じつに じつに 分かりやすい。
Ep.10 Send ‘Here’ to El by mail.
◇◇◇
「クソご主人様ぁー? 早く起きて下さ〜い」
クラシカルメイド服を着た少女……
ちなみに『クソご主人様』呼びは主人の命である。メイはちょっとキモいなと常に思っていたが、それは口に出さない。
なぜなら、そんな呼び方させるとかキモくて当たり前だからである。
「チッ……今日はやけにお寝坊さんですね」
がちゃり、と扉を開き、主人の部屋へと無断で入っていく。
いつもならこの辺りで返事の一つでも返すはずだったが……彼は返事を返さない。
不思議に思ったメイは、そのまま彼のベッドの元へと足を運ぶ。
いつも通りなら、そこにふわもこパジャマでぬいぐるみを抱きしめながら寝ている彼がいるはずだ。いや、いない訳がない。
なぜかそんな不安を抱きながら、彼女は布団を剥がした。
「……ご主人様?」
何も、見つからなかった。
◇◇◇
一週間が経った。
「……」
いつものように食事を作る。
誰も来なかった。
「……」
いつものように洗濯をする。
そこに彼の服はなかった。
「……」
いつものように掃除をする。
ありがとう、という声は聞こえなかった。
そしてようやく、彼女はするべき事をした。
「……もしもし。はい、はい、事件の方です。一週間前から同居人が見つからないんです……えぇ、はい。お願いします、住所は……です。関係は……………………恋人です」
そして、そこからさらに一週間が経った。
◇◇◇
「ぅっ、ぐぁ……うあぁぁぁぁぁぁぁ……っ!!!!」
彼女は激しい嗚咽と涙でぐちゃぐちゃになっていた。
敬愛する主人はもう、いない。
警察も彼を見つけられなかった。
彼の知り合いについて、彼女は知らなかった。
まるで、彼がこの世界から突然消えてしまったかのようで……メイは再び、ひどく孤独を感じていた。
「帰ってきてよぉ……私、あなたがいないと……もう……」
◆◆◆
「あの、私は何をすればいいんでしょうか。マニュアルみたいなのあると助かるんですが」
「んー、一般的な家事お願いしたいんだよね。ボクちょっとそういうの苦手……ってワケでもないんだけどさ、その時間他のことに使いたいからね」
「はぁ。では掃除、洗濯、料理みたいなことをやっていればいいんですね?」
「まぁそうだよ。必要なものは勝手に使っていい。あ、あとボクのこと『クソご主人様』って呼んでくれると助かる」
「は?」
◆◆◆
「あの、なんで私のことを雇ったんですか」
「え? いや、それは言ったでしょ。自分の時間増やしたいってだけだよ」
「違いますよね」
「……いやぁね? ボクって金有り余ってるじゃん? だからさ、使えるもんは使いたいと思うワケよ。そんなところにお金に超困ってる子が現れたものだから、こりゃあ運命だとボクは思ったってことよ」
「なんか……いや、すいません。はい」
「今キモいとか罵倒しようとしたけどやめたでしょ。全然してくれて構わないよ」
「キモい……」
◆◆◆
「クソご主人様ー? いっつも自分の部屋で何やってるんですかー?」
「色々だよー? 前はスマホに結構性能のいいLLMぶち込んでた。今は……ちょっと何やってるかは言えないんだけど、完成したらお披露目するよ」
「そうですかぁ。あ、ところでもう晩御飯作りましたよ」
「ん、じゃあ食べようかな。ボクちょうどお腹空いてたから……いつもありがとう、メイ」
「ふふん、どういたしまして」
◆◆◆
「私はですね、結構ちゃんとぼっちだったんですよ」
「んー? 知ってるけど」
「なんで知ってるんですか」
「いや、だって調べさせたし」
「なるほど、クソご主人様はデリカシーというものが欠如しているようですね」
「急にそんな話してどうしたのさ。ボクになんか言いたいこととかあったりぃ?」
「え、えぇそうですよ、はい。あのですね……なんというか……そんな私を拾ってくれたあなたには感謝してるんですよ、ええ」
「ふふふ、感謝してくれたまえ」
「そっちから言うのは違いません?」
◆◆◆
「……なんで、そんなに助けてくれるんですか」
「んー? これまた何回も言ってるはずだけど、ボクってお金有り余ってるからさ。ぶっちゃけ放置してるだけで増えるワケ。それならせめて為になるようなことに使いたい……というか、目の前で困ってるひとがいたら助けるのに使うってだけだよ」
「……クソご主人様は優しいですね」
「いや、流石に自覚はしてるんだけどボクは優しくないよ。むしろ根っこは悪人に近いと思う。でも、余裕あるんだったら隣人を助けるってだけだよ。幸いお金はあるからさ」
「でも、これ全部返すとなると……もしかして私は、一生クソご主人様に仕えてもこの恩を返せないんじゃないでしょうか」
「いいや、逆だよ。ボクがいっつもキミに助けてもらっているから、それのお返しさ。ふっふー、ボクってば優しい奴だねぇ」
「さっき自分を悪人って言ってませんでした?」
「そういうのは時と場合によって変わるというものだよメイ。絶対的な悪なんか無いのさ」
◇◇◇
「ふっ……ひぐっ……ふぅっ、ぅ……はぁっ、はぁっ……」
数時間は経っただろうか。
彼女は主人のベッドの上でこれまでずっと泣いていた。
もはや涙は枯れ、すすり泣く声だけが部屋に響く。
「う……ぁ」
その時、不可思議な出来事が起きた。
「……?」
主人のパソコンが突然起動する。
前に中身を見た時には特に手がかりを見つけられなくて、それで電源を落としてそれっきり。
そんなパソコンが、誰の手も使わずひとりでに起動した。
彼女はこういった機器に詳しくないため、それが普通のことなのかどうか分からなかった。
もしかすると、アップデートなどで勝手に起動した……ただそれだけなのかもしれない。
だがしかし、これは運命だとメイは思った。
そうして彼女は主人のアカウントへとログインする。
パスワードは知っている。彼が勝手に喋ったからだ。
『Eru0603Mei0604』と打ち込んだ。
表示されたのは六芒星の模様が中心に据えられた壁紙。
はて、こんな壁紙だっただろうか。確かこうではなかった気がする。
しかし彼女はすぐにその疑問を頭の隅へと追いやった。
やるべきことはひとつ。もう一度手がかりを探す。
きっと何かがあるはずだ。クソご主人様が消えた理由の、その真実が。
きっとそれが……今この時、自分の目の前でこの液晶が輝いた理由なのだ。
目を凝らしていると、彼女は怪しげなフォルダを2つ発見した。
しかし、片方は……なにか不気味であった。
名前を口に出すのも、考えることすら危険なような……そうして彼女はそのフォルダを削除した。
これが正しかったのかは分からないが、もしもう片方に何もなかったら復元して見てみよう。
そう考えながら、彼女はもう片方のフォルダを開く。
「りーど、みー」
おそらく読むべきなんだろう。彼女はそれをクリックしたが、そこには意味不明な文字列のみが表示されていた。
まったくもって解読不能だ。
だが、現代にはそういったものを解決するためのサービスなど無数に存在している。
彼女は古いチャット形式のAIサービスにそれを解読させた。
現れた文字列は非常に短い。
だがしかし、彼女はそれがとても大切なものだと思った。理由は分からない。
ただ、それは忘れてはいけない言葉なのだと思ったのだ。主人の言葉を引用するならば、やはり『運命』だろう。
「送、れ……?」
その言葉を復唱した後、彼女はすぐさまその指示に従った。
NEXT——————> Chapter 2:旅道中、魔族、あと冒険者その他大勢
よかったら評価付与してってくれると嬉しいです
前も言いましたが、カクヨムの方だとちょっと先まで投稿しております
が。こっちは色々変なことをやります。
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