TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
◇◇◇
「出るのか?」
「うん。ある程度準備はできたからね」
「そうか……寂しくなるな。短い間だったが、あんたがいるギルドは濃い時間が過ごせて……なんだ、楽しかったぜ」
「クラウシくん……っ!」
「最後くらいちゃんと名前呼んでくれねぇ……? つーか結局その箱なんなんだよ。なんかたまにうめき声聞こえてくんだけど」
『ゥ……』
「ほら今なんか聞こえたって!!」
はっはっは、ダメじゃないか魔族くん。キミを隠して置ける場所なんか無いから、普段はそこで小さくなって入っておく……もちろん喋ったりもしない。そういう約束だろう?
まったく……これは後でお仕置きが必要だな。
「まぁ戻ってくるのはしばらく先さ。世界一周したら反対側から帰ってくるよ」
「世界一周……? よく分からんが、また会える日は楽しみにしてるぞ、エル=レイヴィア。ところであんたってどこ出身なんだ?」
「フカツキ」
「聞いたことない名前だな。どこの国だ?」
「んー、一応島国の中にある街だよ。一般的には東にあるとされているけど」
深月市は……まぁ良いところではあるんじゃない?
ちょっとエキセントリックな奴らが多いけどね。
「今度連れてってくれよ」
「……」
「おい、俺らって友達……だよな?」
「まず“友達”の定義から決めようか」
「あんた友達いないだろ」
「いますぅー」
メイちゃんとかメイちゃんとかメイちゃんとか……
なんか今更になって元の世界が気になってきたな。彼女はボクが居なくて大丈夫なんだろうか。
まぁでも、そういう心配って現代だと逆にアレだったりするからね。多分大丈夫でしょ。
メイちゃん強い子だし。
でも、どこかのタイミングで戻れるなら……一応様子は確認しておいた方がいいかもしれない。
「じゃ、またね」
「おう。あんたに言う必要はないかもしれねぇが、道中気をつけてけ〜」
「ボクはダウナーお姉さんだぞ。そんな危険なんかあるワケないだろう?」
「だからダウナーお姉さんってなんだよ」
さて、それでは出発。
目的地は……なんと確認していないので分かりません!!
食糧はたくさん用意したから死ぬことはないでしょう、おそらく。
一応軽ーく整備された道はあるからね、これに沿っていけばどこかには辿り着くさ。
『ゥ……』
「おいやっぱそれ誰か入ってるだろ」
「んー?」
◇◇◇
「やぁ、クラウス。あの子のことは……どう思う?」
「危険だろ、普通に。だがこっちから手を出していい相手って訳でもねぇ。本気でやり合ったら多分負ける」
「君がそれほどまでに評価するとはね……」
「ラルフさん、俺ぁ結構勘がいい。言っておくが、あいつに関わるとロクなことにならねぇぞ。まだあいつは本質を欠片も見せてねぇ……善悪どっちだろうが手に負えん」
「ふむ」
「つーかいい加減国王がこんなことするのやめねぇか? そろそろ本気で危険だぞ」
「はっはっは、いやいや。私は若者を見るのが趣味なんだぞ? これすら取り上げられたら死んでしまう」
「はぁ……」
◇◇◇
「ふん、ふん、ふふーん♪」
『アガッ……ウグッ……』
ボクはルンルンと鼻歌を歌いながら道を進んでいく。
なんか箱がガンガンいろんな所にぶつかってる気がするけど……頑丈に作ったので問題ない。
「んー? アレは……護衛されてる、のかな?」
向かい側からやってきたのは馬車、そしてそれの左右を歩く数人の冒険者。
護衛依頼はまぁ金払いが良い。ラルフさんのやつも中々儲けることができたからねぇ。
ボクは竪琴をぽろんぽろん鳴らしながら横を通り過ぎる。
吟遊詩人はこういう地道なイメージ付けが大事なのである。
いや、本物の吟遊詩人は知らないけど。でも宣伝ってのは大事なのだ。
「待ってくれないか!」
「んぇ?」
背後からの大きな声に反応し、思わず振り返る。
どうやら馬車の中に居た依頼人がこちらに出てきたらしい。なんだい、ボクに用事か何か?
悪いことは絶対にしていないはずだ。
「君は……もしや最近話題の〝
「そうだけど、その呼び方キライだからやめてくれない?」
「おぉ、これは失礼。私はアルテルト、商人をやっているのだが……」
ちらり、とふくよかな彼はこちらの引っ張っている箱を視界に入れた。が、すぐにそこから目を離す。
「君の噂はよく聞いている。私の見立てでは、君は今後A級冒険者、もしかすればS級冒険者になるだろうね。ということで今、私と色々話していかないか? 自慢ではないが、これでも私は王国内で結構な力を持っているからね……良い話はできるはずだ。どうだろうか?」
話し方はマトモだし、特に不審な点は見当たらない……が、欲望で濁り切った人間特有の目をしている。
関わりを持つならほどほどにするべきだね。
「話だけなら聞いてあげようか」
「ふむふむ、流石は有望株だ。話を聞くべき相手を分かっている……」
「前置きはいいから、本題に入ろうか」
「えぇ、はい。分かりましたよぉ」
そう言ってアルテルトは馬車から何かを取り出し、こちらにまで持ってきた。
これは……古代都市の遺物に似ているような気がする。
「えぇ、あなたは古代都市の遺物に興味があるという噂も耳にしました。これは気に入ってもらえましたかね?」
「んー」
破損……は、ほぼ無し。ただし綺麗に部品が消えているってだけで、不足しているパーツはありそうだ。
「値段次第。ボクが新参者だからって吹っかけてきたらぶっ殺すからね」
「おぉ、なかなか過激な事を言いますねぇ……?」
「ウソウソ。ボクは生まれてこの方一度も人を殺したことなんかないよ」
「えぇ、はい。信じますよぉ」
信じてない奴の目をしている。ボクは人の悪意には敏感だぞ〜?
まったく、なんでボクは信用されないんだろうか。こんなに純粋なのに……
「この遺物の値段は……そうですねぇ、特別に少しお安く……48000ゴルでどうでしょう?」
「はっ、そんな遺物要らないよ」
「でしたら20000ゴルで……」
どうせそんな値打ちの遺物なんか国レベルの商人にとっては端金でしょ。タダで寄越せ、ボクはそう詰め寄った。
「いやぁ、〝
「分かってんじゃん。あとその呼び方やめて」
「分かりましたよ、エル=レイヴィア様。それでは次に……『なぁ、まだか? 俺らもさっさと進みてぇんだが。時間ぐらい考えてくれねぇか、依頼主さんよ』
途中で護衛からの静止が入る。
一瞬、アルテルトがとんでもない形相をしたような気がしたが……見間違いだっただろうか。
「仕方ありませんねぇ……では、これを」
「これは……何?」
「魔導具“タドルス”でございます。これがあれば、登録した互いのタドルスの位置が分かる……という優れものでしてね? これもタダで差し上げます!」
「ふーん……ま、貰えるものは貰おうかな」
「えぇ、ありがとうございます。ではまたいつか」
そんなこんなでアルテルトくんは馬車に再び乗り込んでいった。
ま、旅をしてるとまた会うこともあるだろう。
しかしこの“タドルス”とかいう魔導具だ。外見はほぼ赤い石って感じだけど……なんとなーく中身に小さな魔力の波みたいなものが見える。これの向いてる方にもう1セットがあるよ、的な?
仕組みは気になるけど……バラすのはちょっとやめておこう。直せるかどうか怪しいし。
◇◇◇
「けほっ……さて、今日はもう寝ようか」
『待ってください。なんですかその服は』
「何って……パジャマだけど」
『寝巻き? あなたはそんなものを着て寝ているのですか? その……ふわふわしてる、それを? とんでもない値打ちものでしょう、それ。よくこんな外で着れますね』
「20000ゴルくらいの値段だよ、うちの故郷では」
『20000ゴル!? それはかなり……発展しているようだ。あなたの故郷について聞いても? お恥ずかしながら諜報では得られませんでしたので』
「教えませーん」
『そうですか。なら、寝ますか』
「おやしゅみー」
ボクはその辺に敷いた布の上で寝転がった。むにゃむにゃ……うへへ、もう食べられないよぉ……
『……もしかして今なら襲えるのでは? いや、しかし……性格からして確実に対策している……もし失敗しても死にはしないでしょうが、箱をさらに小さくしたり身体を折り曲げて遊ばれたりする可能性も……』
「聞こえてるからね!?」
クラなんとかくん<楽しかったぜ。あんたとの友情ごっこ……!(マジで楽しかった)
魔族くんは手足を折り畳まれた状態で箱に入れられています。
まぁ丈夫だし問題ないよね!とエルは思っています
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