TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
「街が……見えない……ッ!」
『あなたバカなのか頭いいのかどっちなんですか』
「ボクは天才に決まっているだろう。ほら、こんなに可愛い」
にこー、と笑顔を作りながらダブルピースをする。
こんなに可愛いんだから天才に決まってる。
『なんの相関関係があるんですか』
「ダウナーお姉さんは天才だって古代から決まってるからね。おっぱいもでっけぇんだから知能もでっかいよ」
『あの、たまに話が通じなくなるのやめてくれないですか?』
「はっはっは、ところで魔族くん」
『なんですか……?』
魔族くんは疑うような目でこちらをジロジロ見てきた。おそらくこの胸が偽物か疑っているのだろう。
「ボクぁね、早く街に着きたい。なぜなら食糧がそろそろ尽きるからだ」
『はぁ』
「実のところ本気を出せばめっちゃ早く走れるし空も飛べる。でもそれだとキミを連れて行くにあたって色々と面倒だったんだ」
『はぁ……?』
「分かるだろう? つまりは……そういうことだ」
『どういうことですか?』
これだから理解力が無い奴は困るね。
『いや分かるわけないでしょうが。なんなんですか本当に』
「あー、えっとだねぇ。失礼だけど多分キミってそんな強くないじゃん?」
『本当に失礼ですね……まぁ、中間よりは上ぐらいだと思いますよ』
「はいダニング・クルーガー効果ぁ。キミは思ってるより強くないよ」
『本当にムカつきますね。ところでそのなんとか効果とやらはどういう意味ですか?』
「どうでもいいでしょそんなこと。つまりはだね、今からキミを抱えて爆速でカッ飛ぶよって話さ」
『なんだ、そんなことですか。それなら問題ないです』
「言ったなぁー?」
それではエル=レイヴィア号、出発しまーす。シートベルトは無いのでちゃんと掴まってくださーい。
ボクは魔族くんを折り曲げて『痛いです!! 無理やりするのはやめて!!』箱の中へと入れる。
そして、そのままクラウチングスタートの構えをとった。やっぱ形から入らないとね?
『ところでシートベルトって何ですか?』
魔族くんが何か言ったような気がするが、ボクは無視して数十の魔法を同時に発動させ、空へと飛び出した。
◇◇◇
『あびびばぼぼぼ』
「ひゃひゅれ、ひゃひゃい」
また噂になって変な二つ名付けられると困るから、あんまり試験はしてなかったけど……流石にちょっとくらいは試しておいた方が良かったかもしれない。
早すぎて何も見えない。
今どこー?(メッセージアプリ)
「ひょ! ひゃひゅんひぃひぇひゃ!!」
『ひゃひいひゅひぇひゅひゃひゃひゃい!?』
箱の中から叫ばれても何言ってんのか分からねぇよ魔族くん!!
まぁいい、多分街らしきものが見えた!!
あそこに降りよう!!!
「ひゃひゅひーく!!」
『うぼぁ!?』
◇◇◇
ボクは拳を地につけ、片膝を地面に。また片脚は折り曲げて……つまりはスーパーヒーロー着地をしていた。
強化しているので膝が痛いとかは無い。
「……あっ、大丈夫かな」
少し心配になって箱を開ける。
開けた瞬間に血の匂いがした。
ボクはそのまま箱の蓋を閉めた。
『たす……けて……』
「“ヒール”」
もう一度箱を開ける。治ってはいるけど箱の中が血まみれになっていた。
まぁ浄化魔法使えば問題はない。ボクは箱の中身を綺麗にした。
『殺す気でしたよね?』
「そんなことはないよぉ?」
さてさて。彼も治したことだし、また蓋を閉めて……ボクは周囲を見渡した。
「街じゃないね。どこだよここ」
『別の古代都市でしょう』
勝手に箱から出てきた魔族くんがそう言った。出てきてんじゃねぇ、殺すぞ。
『こんな場所に人は普通来ませんよ、そもそもこういった場所には強力な魔物が跋扈しているのが普通です。オーヴァ近辺の古代都市は例外的に少し弱いだけで、他はほとんどBランクオーバーの魔物しかいません。早く街を見つけてそこに向かいましょう。こんなところに居ては死んでしまいます』
「人が普通来ないってコトは……良いモノがあるかもってことじゃん……!」
『ダメだこの人』
そもそも気になってんだよね、古代都市についてさ。
前の文明は滅亡したってことでしょ? こんなに点在しているってことはさ。
『知らないのですか?“原初の魔女”ゼナが太古の世界を滅ぼした話……御伽話としても有名でしょうに』
「悪いね、ボクは小さい頃から天才だったからそんな子供向け絵本なんか読んだことがないんだよ」
『本当に天才なんですかねぇ……天才なら私の名前も覚えてますよね?』
「誰だよお前」
『嘘でしょう? 何回も自己紹介しましたよね?』
「そうだっけ……?」
自己紹介されたことすら記憶に無いんだけど。キミの記憶違いじゃないかい?
『まず自分を疑いましょうよ』
「……? ボクは絶対的に正しいですけど……?」
『あなたはいつかとんでもない罪を犯しそうですね。良く言えば魔王軍にピッタリです』
「えへへ」
『褒めてませんけど』
「は?」
『いや、間違いです。褒めてました』
「いやぁ……照れるね」
『はぁ……』
こんなことを話しながらも、ボクは古代都市の探索を進めていた。
道中で何回か魔物に襲われたが、それは普通に撃退した。
ボクってば最強だぁね。
「ねぇ魔族くん。これ何?」
『もう名前覚えてくれそうにないので、その呼び方でいいです……』
「うんうん。で、これ何?」
『それは古代の魔導具……確か“シヴァル”という物です。これで拘束された対象は魔力行使が阻害されます』
「完全に止められるワケじゃあないってこと?」
『そうですね。ただ……9割以上の力が封じられると考えてください』
「なるほどね」
使うタイミングがありそうだ、と考えたボクは手錠型の魔導具をリュックの中へと詰め込んだ。
ぎゅうぎゅうで全然入らない。
マジックバッグみたいなのが欲しいよー!
『大金を支払う必要はありますが……“魔導都市”セントリアならば購入できるんじゃないでしょうか』
「それだよ魔族くん。キミもたまには役に立つじゃあないか」
『事実ではありますがムカつきますね』
「人にムカつくなんてあってはならないことだよ魔族くん」
『っく……あなたが言いますか?』
バカにするような笑みを浮かべながら魔族くんがそう言い放つ。
ボクはムカついた。ぶっ殺されてぇのかテメェ。
「けほっ……おや、これは石碑的な何かカナ?」
やたらと大きい石碑だ。文字らしきものが書いてある。
ほとんど掠れて読めないが……ボクならなんとなく読み取れる。
「記憶の……勇者……ゼナ……来たる未来……」
『読めるのですか?』
「なんとなく……ん?」
急に『バグ』って文字列が出てきた。世界観違くね?
他は普通か?
「敵……と……が衝突……ダメだ、ボロボロすぎる。読めたもんじゃない」
『あなたは研究者か何かですか? まるで普通に読めるかのように見えましたが』
「あぁ。実はボク、超天才古代研究者だからね。当たり前に読めるんだよ」
『嘘のつき方教えましょうか?』
ボクは魔族くんを折り畳んで箱にぶち込んだ。
さて、色々面白いもの見れたし旅を再開しますかぁ。
あ、食糧ないの忘れてた。
というか、良く考えたら空から周りを見渡して行けばすぐじゃん。ボクはバカだったのかもしれない……
ボクは反省した。失敗とは成功の糧であり、そして失敗しない人間などいない。
つまりこれは必要な失敗だったのである。いいね?