TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
道端を歩いていると、少年を発見した。
▷話しかける
▷無視する
▶︎「やぁ少年」と、ダウナーお姉さんらしく話しかける
▷スリを行う
▷突然「今こいつがボクの財布盗もうとしましたー!」と叫ぶ
これやな。論外な選択肢を無視し、ボクは少年に話しかけることとした。バカゲーじゃないんだぞ。
「やぁ少年」
「えっ……誰……?」
ぽろん、ぽろろん。ボクは竪琴を取り出して演奏を開始する。
ほら、やっぱり運命的(主観)な出会いには音楽が必要だろ?
「迷子かな?」
「買い物途中ですけど」
「なるほど。じゃあボクもその買い物に付き合ってあげよう」
「えっ……」
ボクがちょーっとにっこりしながらそう声をかけてやれば、少年くんは顔を赤らめて迷いだした。
クククッ、ボクにかかればこんなもんだよ。一緒に買い物しようぜ〜?
今なら全額奢ってもあげよう。
「お母さんから、知らない人に着いていっちゃダメって言われてるから……ごめんなさいっ」
「まぁまぁ待つんだ、少年よ。こういう考え方もできる。実はこのお姉さんは本当は優しい人で、親切にもキミの買い物の護衛をしてくれるかもしれない、と。ね?」
「うーん……」
「何をやってんだお前」
チッ……何でこんなとこをギルマスが歩いてんだよ、あぁ!?
ボクの趣味を邪魔しないでくれるかなぁ!?
「いや子供に手を出すのは流石に……S級はほぼ無法と言っていいが、それにしたってやっちゃダメなことってのが」
「待ってくれ、何か誤解があるようだね。ボクはただ少年を誘惑していただけだ」
「何も誤解無いじゃねぇか!」
「ぼ、ぼく帰るね……」
「あー待って待って少年くん。ほら、ちょっとだけ話してこ? ね? あっ待て帰らないで! ねぇ、ちょっと!」
「ギルドで弁明を聞こう」
「く、クソッ! は、離せーっ! ボクはS級冒険者だぞ!」
◇◇◇
趣味の時間は潰されてしまった。宿に支払っていた分も泊まりきったことだし、そろそろこの街を離れる時だ。
あぁそうだ、そういえば前に商人から変な魔導具貰ったよね。
正直どこ目指せばいいのか、とか全然決まってなかったし……ひとまずはアレが指す先に行ってみようかな?
「お前はもうS級冒険者だ。正直に言ってギルド本部からの『なるべく配慮はするからお願いします暴れないでください』という通達に等しいが……一応責任というものを持ってくれ。いいな?」
「ボクはいつでも、自分の行動の責任は自分で取るよ」
「ならいい。お前にしては真面目な返答だな」
「ボクが真面目じゃない時なんかあったかい?」
「ほぼずっとだな」
「ククク、言うじゃあないか」
あぁ、そういえば……ここのギルドマスター、よく話してはいるけど名前を知らないね。
「キミの名は?」
「は? 最初に自己紹介したろ」
「えっ……!?」
「はぁ……クラウスだ。クラウス・ガルベルト」
嘘だろ名前被り? あり得ないだろ普通。小説や物語において名前被りは禁じ手だ。そんなことする奴はリアリティとリアルを履き違えているアホ作者だけだぞ。
まさか最初の仮定から間違っているのか……?
「どうした、急に黙り込んで」
「あ、あぁ大丈夫。覚えたからね」
「本当か?」
「ほんとほんと」
「お前は名前を覚えられないと資料に書いてあった。俺の名前を言ってみてくれ」
「クラウスくん、だろ?」
「なんだ、ちゃんと覚えてるじゃねぇか」
「当たり前だろう?」
さて、それでは行こう……と思っていたその時、お客さんがやってきた。シュンくんとコモンちゃんである。
「ヤベェのが来た」
「……マジ?」
シュンくんは手で口を作るジェスチャーをしてきた。それ何を表してるの?
◇◇◇
「あ、あれは……S級冒険者〝星斬り〟の狂夜……!?」
ほう、なんとなーくのニュアンスで感じ取ったぞ。どうやらこの世界には日本的な場所があるらしい。
名前に漢字っぽいニュアンスが含まれている……今更だけどこの翻訳能力は一体なんなんだ。かなり柔軟性が高いぞ。
「どう考えても目的はボクだよね、どれ……ボクが話をしてこよう」
「自意識過剰……!」
人混みをごみごみと掻き分けて前へと出る。あっちょっとお前今どさくさに紛れて胸触ろうとしただろ、後でぶっ殺すからな。
「やぁやぁ、ボクが目的だよね?」
「えっ、誰?」
「えっ……」
自意識過剰だったわ。ボクは反省した。
でもまぁこういうのはいい機会である。そこのダウナーお姉さん、ボクとお茶しない?
お相手さんはヤバそうなオーラを纏った刀を携えた茶髪の女性……つまりはダウナーお姉さんであった。
やったぜ、ダウナーお姉さん(本物)だ。初めて見た!
「いやぁ……この辺りで強い魔物が出たって聞いてやってきたんだけど……」
「残念だったねダウナーお姉さんさん、そいつらはボクが全部倒しちゃったよ」
「へぇ……?」
にゅ、と自然な動きでこちらへと近づいてきたダウナーお姉さん。は、はわわ……恥ずかしいめぅ>_<
ボクの超絶最カワフェイスがじろじろ観察されちゃってるよぉ〜〜〜〜>_<
自分でもちょっとキモいなって感じだが、ダウナーお姉さんに見つめられているのだから仕方ないのである。
「私はね、
凄い名前のダウナーお姉さんだ……と思いながら、ボクも自己紹介を返す。
「ボクはエル=レイヴィア。新参のダウナーお姉さんさ」
「……? よく分からないけど、よろしくね?」
ぎゅっと握手するボクと狂夜。は、はわわ……ダウナーお姉さんと握手しちゃった……!
ボクはもう二度と手を洗わない……と決心するまでにはいかないが、しばらくは洗わないことを決めた。
「ところでさ、きみ……強いんでしょ?」
「もちろん」
「じゃあ、さ……」
あっ待ってなんか嫌な予感する。
ボクはその辺にいたギルマスを掴んで盾にした。
「じゃあ、なんだい?」
「手合わせしようよ」
「お前たち俺を無視して会話進めんじゃねぇよ。あとエル=レイヴィア、勝手に人は盾にするな」
「ボクはこれでも平和主義者でね、あんまり戦うのは良くないと思っているんだ。特にボクとキミみたいなダウナーお姉さん同士ってなると特に、ね?」
「……? よく分からないけど、やろうよ」
「うーん、話が通じない系ダウナーお姉さん……それもまたイイっ」
「話を無視されてるおじさんもいるぞ」
ふふふ、まぁいいだろう。ボクはその辺にギルマスを投げ捨てて狂夜と向き合った。
「痛いのはやめてね」
「おや、あまり戦い慣れていないのかな。なら私も手加減はしてあげてもいいよ?」
「ふっ……大丈夫さ」
「そう? なら遠慮なく———」