TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
嫌な予感がしたので、ボクは魔力消費も考えずに転移を行った。
まぁ……この選択は正解だったと言わざるを得ない。
「“星斬り”」
狂夜の一振りによって放たれた斬撃は空を斬り、雲を突き抜け、空間を引き裂いた。
斬撃自体は何にも当たらなかったが、それに付随した衝撃波が周囲の地形を抉り、そして見物しようとしていた雑魚冒険者たちがアニメのように吹き飛ぶ。
やがて斬撃は“何か”に当たったような様子を見せたかと思えば、ガラスが割れるような音と共に真っ黒な斬痕を空へと残した。
斬痕の大きさは大体10kmぐらいだろうか。
え、えぇ……?
S級冒険者ってこんなヤバいの……?
ま、まぁ? それならボクも負けてらんないよね。
さっきの攻撃を魔法で解析……
……?
……!?
純粋なる物理現象だ。超パワーで強い刀を振るだけであんなことが起きている。
うせやろ?
常識の範囲外にまで逸脱しているタイプの強さだ。これは……ボクもちょーっとこの戦いを通じて強くなる必要があるかもしれない。
「ふーん……? これを避けられるだなんて……いいね、きみ」
「ダウナーお姉さんからのお褒めの言葉だ、ありがたいねぇ」
「いえいえ」
狂夜は照れたような顔を見せる。情緒どうなってんだよ。
が、まぁ……話し合いで少しだけ時間を稼げた。
おかげでさっきの原理もちょっとは理解できたぞ。
ボクは拳を握り、そこに魔力を集中させる。
どうやらこれまでのボクの魔法は理論に集中し過ぎていたようだ。これを機にもうちょっと『意思』的な理解も深めなければならない。
『よくわかる まほう!』に書かれていたとある言葉がある。
「まほう は こころ!」
——————ゼナステリア『よくわかる まほう!』(守護歴2401年)より
つまり自分を信じろってことである。なんてこった、大事な事は意外にも単純だった。
拳への魔力集めと同時、ボクは風魔法を用いて側で竪琴を浮遊させた。別に手を使わなくとも演奏はできるのだー!
「うん? 何か聞こえ———なるほど、きみが何かしてるのかな?」
「大正解! 100ダウナーお姉さんポイントを贈呈しよう」
「あ、ありがとう?」
うーん、めっちゃ色々(魔力暴走、脱力、視界不良その他諸々)デバフ掛かってるはずなんだが……どう見ても効き目が薄い。
なんでだ?
「さっきはこっちから攻撃したからね。今度はきみが攻撃していいよ」
「それじゃあお言葉に甘えて……」
この技の名前は———“ダウナーお姉さん・インパクト”にしようと思ったが、最近シュンくんにネーミングセンスを疑われているのでもう少し考えてみる。
いやしかし、これはシンプルな方がいい。
「“ギャラクティック・インパクト”!」
「む」
単純な破壊を目指して繰り出された拳は、狂夜の刀によって受け止められる。
雲が割れ、衝撃が周囲の草木を揺らし、大地を震わせた。
……が、刀には傷一つ付かない。
んー、マジ?
何が足りてないのやら、そういう事なら仕方がない。禁じ手でも使……
「うん、いいね。じゃあバイバイ」
「えっ」
そう言い残して彼女は消えた。転移……じゃねえわこれ単純にクソ早く走ってるだけだわ。
この速度で動いても、周囲に風圧とかの影響が無いのは……魔力のおかげということだろう(投げやり)
「なんだったんだ……」
◇◇◇
「S級冒険者って大体あんな変な奴なのかい?」
「お前が言うのか? まぁ……そうだな。〝星斬り〟は比較的マトモだが」
「あー、まぁ確かに一般人には被害とか……」
ボクは衝撃波で吹き飛んでいた冒険者のことを思い出したが、多分こんな記憶はなかったと認識している。ハルシネーションってやつだね。
「基本的に強い敵を斬る、それだけが行動指針だからな……〝
「そいつはどんな奴なんだい?」
「あー……なんだ、大体イメージ通りだ」
「なるほど」
「ところでお前の二つ名はどうするんだ? 今ならギルドで好きな名前に変えられるぞ」
「えっマジ?」
「ああ。〝
「殺すよぉ」
「おお、やはりぴったりじゃないか」
殺しまーす。
◇◇◇
殺した(事後報告)。
もちろん冗談である。
「おっ、噂のエル=レイヴィアさんだ。気に入らない事言った奴は即座に殺してるって噂は本当なのか?」
「殺すぞ」
「なるほど、噂は本当だったか……」
勝手に納得するんじゃない。そもそもキミは誰だよ。なんでみんな初対面なのにボクにそんな話しかけてくるんだ。しかもこういうノリで。
「なんか話しかけやすいんだよ。分かるだろ?」
冒険者くんはちらっとボクの胸を見る。一瞬だったが、ボクには見えていた。
噂を真実にする時が来たようだな……
「そういやもうこの街出るんだろ? ウェルタード自慢、湖で獲れた新鮮な魚料理はもう食べたか?」
「ボク魚そんな好きじゃないんだよね」
鮭、シャケ、サケ、あるいはサーモン、あと鯖。
ボクは基本この5種類の魚しか食べない。
アジフライ? あれはなんというか別カテゴリだ。
マグロ? よく考えたらたまに食べるな……
「おいおい、ここの魚料理食わねぇとかマジ損してるぜ」
「そんなに言うなら食べてやろうじゃあないか」
「オススメの店紹介してやるよ」
◇冒険者の食事処『オススメの店』
あぁ……ムニエルかぁ……(失礼)
いやでもこういう場合はやっぱりおすすめを食べるべき……ボクはミズウミウオのムニエルを注文した。食べ物の名前で遊ぶな。
「はむ……むっちゃむっちゃ」
普通に美味しかった為、ボクは数分で完食してしまった。
意外とイケるもんだな、やっぱり好き嫌いは良くないね。
そろそろピーマンとかも……いや、あれは多分まだ無理だな。ボクの舌は敏感なのである。まだ子供舌を卒業していない。
ワサビとかもなぁ……ちょっとなぁ……(ガキ)
つーか誰かこの店の名前ツッコめよ。なんだよこの街、ネーミングセンスイカれてんのか?
ボクは店を出て周囲を見渡す。
武器屋『最強!無敵ショップ』が目に入る。どうやらこの街全体が変らしい。
「お、魔導具屋だ。ちょっとここだけ見ていこうかな」
『あの、早くしてくださいね。予定時刻から結構経ってます。早く行かないと夜になりますよ』
『悪魔よ、俺は主が魔導具を見たいんだったらいつまでも待つべきだと思う。具体的には100年だろうが構わない』
『いくらなんでも暇すぎるでしょう』
うるせぇなこいつら、ボクの脳内で会話を繰り広げるんじゃない。頭が変になっちゃうだろ。
やっぱテレパシーってクソだな!
「おや、これは……」
ボクの持っている竪琴と瓜二つの竪琴がそこにはあった。
値段は銀貨5枚、つまり50000ゴル……なるほど。ボクは前の店で結構なぼったくりに遭っていたらしい。あの店はゴミだな。
ボクは脳内のダウナーお姉さん専用評価サイトにて『☆1 ぼったくられました』とレビューを書いた。これで店に来る人間も減るだろう……いや、冷静に考えたら減らないか? 冷静に考えなくても減らねぇわ。
「店主さん、これください」
「あいよ。使い方は……」
「大丈夫大丈夫、知ってるから」
「そうかい。ところで他には何か買っていかないか?」
「あー……じゃあ……」
ボクはちらちらと商品棚を確認する。
おっ、これ良さそう。
「こいつの説明も不要か?」
「いや、こっちは聞いておこうかな」
「そうかい。これの使い方は簡単だ、魔力を込めるだけで色が変わる」
「ほう。虹色にできたりとかってのは……」
「出来るぜ」
「買おう。いくらだい?」
「んー、まぁ70000ゴルってとこだな」
「買った」
ボクは買ったばかりのゲーミングサングラスを掛け、ニコリと笑みを浮かべる。
眼鏡かけてるダウナーお姉さんってのもいいもんだよね。
『なんとなくですが、何もかも間違っているような気がします』
素人悪魔は黙っていろ!