TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします   作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))

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Ep.25 一流のダウナーお姉さんは男だった時代からダウナーお姉さんとしての活動を惜しまない

 

『私の記憶通りなら、魔力を持たない人間の足で2週間程度この方角に進むと……セントリアとかいう王都があるはずだ』

「ちなみにそれっていつぐらいの話?」

『守護歴とかいうのが制定されるよりは遥か昔だ。あぁ、あの時代は厳しかった……何がどう厳しかったかは抜け落ちていて思い出せないが、世界は滅びる寸前だったはずさ。最後の砦、というような場所だった』

「記憶抜け落ちすぎじゃない?」

『仕方ないだろう。おそらく9割くらいは消えている。かろうじて残っているのが魔法に関する知識と、その他が少しづつ……もはや今の私の性格すら、オリジナルとは乖離しているかもしれないゼナね』

 

 思い出したかのように変な語尾つけるのやめてね。

 

 

『不思議なのは、キミの記憶が混ざっていることだ。だからキミの本当の姿も知っている』

「ふーん……ふーん!?」

『本当の姿?』

 

 悪魔くんちゃんは箱にお帰り! ボクは箱から顔を出していた悪魔をぐいぐいと中に押し戻す。

 お肉を串に刺して焼いていたゼナは、それを見届けてから再び話し始めた。

 

 

『キミ……公園で女装してダウナーお姉さんごっこをしていたっていうのは……私でも流石にどうかと思うぞ……?』

「あー聞こえなーい」

『というか、そっちこそこちらの記憶が混じっていたりはしないかい? 知識とも言える。例えば私は、キミの持つ現代知識というモノがある程度分かるのだが……』

「心当たりはないけど……あぁ、もしかしてボクが魔法をある程度使えたっていうのはそれが原因?」

『他にはないかい? なにか……具体的なエピソードの記憶とか。私はその部分がかなり欠けている』

 

 うーん……ん?

 

 

 

◆◆◆

 

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 息を切らし、私はその場でへたり込んだ。

 私の家は崩れ、そして使用人は見つからない。

 周囲の光景は様変わりしていた。

 何もかもが混ざり合っている。

 

 何が起きたのか、私には何一つ理解できなかった。

 ただ分かるのは……

 

 

 

◆◆◆

 

 

「丁度今思い出したよ。これは……いや、いつだったっけ……」

『何か思い出したのかい?』

「なんというか、メチャクチャに壊れた家や自然に囲まれている光景だったかな」

 

 何が起きたらあぁなるのか……物理的に変な印象だった。

 バグったゲームみたいな……

 

 

『ふむ、なるほど……ところで質問なんだが、キミは何か忘れていたりしないのかい?』

「ボクが忘れる? そんなコトあるワケが……いや、あったわ」

 

 ボクは異空間にしまっておいたスマートフォンを取り出した。たまに魔法で充電したりして、一応まだ生きているが……

 

 ボクの記憶に無いメモがあった。

 

 顔認証は死にました。なぜなら生まれ変わったからです。

 ボクはパスワードを入力してスマホの画面を点け、件のメモを彼女へと見せた。

 

 

「日本語読めるよね?」

『あぁ。これは……調査記録? 何のだ?』

「分からない。パスワードも掛かってるけど、そのパスワードにも心当たりが無い」

『待て、今頑張って思い出す……ダメだな。秘密結社を本気で作ろうとしていた記憶しか思い浮かばない』

「え?」

 

 ボクってそんな事してたの?

 

 

『ふむ……キミはどうやら、気付かぬ内に大半を忘れているようだな。おそらく無意識的に少しは残っているんだろう。そのせいで気づくのが遅れた……待て、羽鳴メイという名前に聞き覚えは?』

「メイちゃん? もちろんあるに決まって———」

 

 …………?

 

 メイちゃんって……どんな顔だったっけ……

 

 

「けほっ……思ったよりも深刻かもしれない。何故ボクの記憶がこんなことに……」

『仮定はある。が、正直に言ってあまり根拠も無い』

「一応教えてくれ。ボクにも共有しておいた方が、後でやりやすい」

『単なる“バグ”という可能性だ』

「バグ?」

 

 そんなゲームみたいな……でも、確かにそもそもこの世界は結構ファンタジーだし……おかしくもないのか?

 

 

『なんらかの原因があって、もぐっ……私たちの魂が融合した。むしゃむゃ……結果、記憶の一部がランダムに、んぐっ、互いに上書きされた……ふぅ。はぐっ、もぐ……まぁ可能性に過ぎない。第一そうだとしたら、もぐもぐもぐ……もっと人格や意識が壊れていても、んくっ、おかしくない』

 

 話すか食べるかどっちかにしようね。

 

 

『あぁ、今思い出したぞ。キミも同じことをつい最近やっていた。ブーメランというやつではゼナぁ?』

「ふ、ふふ……言うじゃないか」

 

 バカにしたような笑みを浮かべるゼナ。テメーそれ別に正当化する理由になってねぇからな。覚えとけ!

 

 

『……さて、もう時間も遅くなってきた。私はそろそろ寝ることにする』

「見張りは?」

『そもそも不要だろ?』

 

 ぱちん、とゼナが指を鳴らす。瞬間、周囲に透明なバリアが展開された。

 

 

『キミも元から出来たはずだ。記憶によれば悪魔に見張りはさせて自分は寝ていたらしいが……やはりキミは、少々常識に囚われているような気がするな。飛躍が足りないゼナねぇ』

「常識、ねぇ……」

『常識の無い人間のフリをしていても、私には分かるぞ。キミは狂いきることが出来ない……邪悪な本性と善良な意思、どちらも両立している……実に人間らしくて結構だが、両立したまま迷いは捨てられるはずだ』

「フン、分かってるじゃあないか」

『私はキミで、キミは私だ……少なくとも今は。だから互いに教え合おうじゃないか』

 

 いいね。相互理解も知識の探求も、どっちもボクは好きだぜ。

 

 

『ふふ、それじゃあおやすみ。一緒に寝るかい?』

「ところでさ……」

『うん?』

「いや、なんというか……さっきちょっと変なこと思い出してさ」

『うんうん』

 

 

◆◆◆

 

 

「やぁ少年」

「……?」

「私はゼナステリア=ルーメンエルド……キミの名前は?」

「えっ、いや、あの……」

「名前は、と聞いている」

 

 ずい、と私は彼に顔を近づける。オイオイこの子赤面しちゃってるぞ……可愛いねぇ^^

 

 

 

◆◆◆

 

 

 ◇この記憶は——————!?

 

 

『黙秘する』

「やっぱり同類じゃないか……!」

 

 




※クラウスくんの名前がよく忘れられているのは、この件と全く関係ありません。
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