TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
「守護神様の加護があらんことを」
「あらんことを〜」
すれ違った冒険者に挨拶を投げる。この世界での挨拶はシンプルな「こんにちは」に加え、こういった物もたまに混ざっている。
守護神ってなんだよ。
『私が説明しましょう。守護神はこの世界が壊れるのを防いでいる、とされている神です。また、魔法の使えない人間は詠唱によってかの存在の力を借りることができる……ということになっています』
「含みがあるね、悪魔ちゃん」
もう『ちゃん』で固定しようかな。(見た目は)女の子だし。
しかしどうした、悪魔ってのは神と敵対しているのか?
『魔族です。別に敵対しているという訳でもないですが……魔王様は気に入らないらしいですので、魔族はそういったように教育されているのです。神などいない、と』
「ふーん……でもボクの見た限りだと、少なくとも“詠唱”は何かに演算を代行させているように見えたけど」
『私が説明しよう!』
デフォルメされたゼナがぽん、と軽いSEと共に現れる。魔法の無駄遣いである。
『それについては偶然記憶に残っていたんだ……実は守護神と呼ばれる神は実在している。が、その場所は分からないゼナね』
「へぇ〜〜〜」
『確かに演算の代行はしている……けど、代行してくれるかどうかは本人の心次第ってとこだね』
「信仰してたらいいよ〜ってカンジ?」
『いや、実のところそうではない。ダメなのは“興味が無い”人間だけ……憎しみを持っていようと成功する、はず』
「それはなんとも興味深いね」
『ま、でも代行自体そんなに連発はしてくれないからね。1日に1回か2回が基本的な制限さ』
神様のくせにケチだなぁ……
『あとはそうだね、場所が分からない理由は……ん?』
「おや、さっきの冒険者たちだ。なぜUターンしてこっちに……?」
『走っているように見えるゼナねぇ……』
毎回思うんだけどその語尾どういう気持ちでつけてんの? 元の人格でもそんな語尾使って……る可能性は結構あるか……
「魔物かな? くくく、ここはこのダウナーお姉さんに任せたまえ」
『毎回思うんだが、キミはどういう気持ちでそんな物を自称しているんだい? どこからどう見てもダウナーじゃあないだろ』
「うるへー!」
ボクがダウナーお姉さんだって言ったらダウナーお姉さんなんだよ!
「た、助けてくれー!」
「ドラゴンが出た!」
『おいおい、こりゃあテンプレ展開ってやつじゃないか?』
ばさり、ばさりと羽をばたつかせ……巨大な緑龍がボクたちの目の前に降り立った。
フゥ! 大物だぜ!
「おいちょっと待ちなさい冒険者たち」
「ひょえっ!?」
ボクの隣を通過しようとした2人の冒険者をむんず、と掴む。
キミたちィ……トレインは重罪だぜ?
ボクは彼らにお金を要求した。
「今ですか!?」
「当たり前だろう?」
「えーっと、今ちょっと手持ち無くて……」
「じゃあ何か貴重なモノを『ピギャラァァァァァッ!!!』うるせぇ!!」
空気読めよ!!!!!!!
『見えない物が読めるワケないだろ。しかも竜種だぞ』
「キミほんとにボクみたいなこと言うじゃん」
自他境界ぶっ壊れちゃうなぁ……
「わ、分かった! とりあえず持ってる物渡すから! あんた最近話題の新しいS級だろ!?」
「キミ、分かってんじゃん……」
ボクは竪琴を取り出した。なんか久しぶりな気がするなぁ。
『私も 加わろう』
「いや、別に加勢はしないでいいかな」
『ゲンーッショッショッショノマジョ!! 私に任せるといいゼナねぇ……!』
「エアプ原初の魔女やめてね」
『失礼な、本物だぞ』
エアプ原初の魔女がでっけぇ杖をどこからともなく取り出した。いつの間に作ったんだそれ。
まぁいい、それならタッグバトルといこう。
ボクは呪いの旋律を奏でた。ドラゴンの動きが目に見えて鈍くなる。
「英雄譚がお望みカナ?」
『大魔女サマの圧倒的な力を見せてあげよう』
「ちょうどいい感じに頼むよ」
魔女(偽物)(断定)が杖を掲げれば、その場に半径2kmぐらいの火球が現れた。
デカスギィ!!
こんなん使ったらこの森ごと焼き尽くしちゃうだろうがよぉ〜〜〜ッ!!
弱火でじっくりにしとけ!
『ビギャッ、ピギャァッ!』
爪での攻撃を空間魔法で防ぎつつ、再びゼナの方を見上げる。
半径4kmの火球が浮かび上がっていた。
なんでまたさらに大きくしてんの!? 被害とか考えたことある!?
『やるなら圧倒的に、だよ。エル?』
「限度ってものがあるでしょ!!」
『ピギャラァァァァァッ!!!』
なんでボクが常識人みたいなこと言わなきゃならないんだ……
ブレスが放たれた。燃え盛る炎がボクとゼナを焼き尽くさんとするが……ボクの演奏によるアンチブレス魔法によって、根本から消失していく。
爪による連撃がボクを襲う。あっち襲えや!!
硬化した腕で攻撃をガードし、反撃の拳を喰らわせる。なんでボクはわざわざ手加減してゼナに手柄を譲ろうとしているんだ? よくよく考えたらなんかムカついてきたな……
もうこっちで勝手に潰していいか?
『ダメだ! 私がドラゴンを倒したと、そこの冒険者たちに言いふらしてもらう予定じゃあないか!!』
8kmに広がった。これはいけない……!
あーいけません、お客様! いけませんよぉ……!
そんなんじゃボクの悪名が轟いてしまう。ボクが欲しいのは名声なのである。ドラゴン1匹滅ぼす為に山一個吹き飛ばす気なのかよテメー。
ボクは平和的に世界を手中に収めたいのだ。ラブアンドピース万歳、ってやつだね。
『ヘイト・アンド・ウォー!』
ふざけんな!
このゼナとかいう女はブレーキが無い。初見の印象はふざけた奴ってくらいだったが……どうやらボクが手綱を握らなければならない存在だったらしい。
火球が半径16kmにまで広がる。もうこれ多分めちゃくちゃ目撃されてるだろ。
『ピギャラァァァァァッ!!!』
『私の魔法のお披露目だァ!』
火球がゆっくりと地面へと向かう……が、こんなん着弾したら
ってなワケで無効化だ。ぽろんぽろんと鳴らしてゼナの脳内から火球を相殺、そのままボクはドラゴンの方へ向き直る。
「最初からやればよかった……」
ボクは謎の力を纏わせた拳でドラゴンくんを殴って消し飛ばした。
なんかいつの間にか使えるようになってたけど、この力はいったい……?
『あぁっ、私の英雄譚が……』
「山火事の記録が残るだけだよ……」
こいつマジでマトモじゃねぇな。ボクがちゃんと導かなければ!