TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
◇◇◇
「この街について知りたい」
『私が説明しましょう。この町の名は“バルグノクス”……古代より存在するダンジョンを有する交流都市であり、多くの冒険者が在中しています』
「ダンジョンってのは……やっぱり稼げる?」
『下層まで行けるのなら』
「なら問題ないね。でもその前にさ、まずこの街のご飯とか食べたいとは思わないかい?」
『主のご意志のままに』
『いい加減治らないものですかねぇ……』
信仰ってのは強固である。彼はもう……
つーかオススメの店知らん?
『そこまで調べている訳がないでしょうが。現地民に聞くことですね』
はーい。
◇◇◇
いい感じの現地民と話すにはどうすればいいか。そうだね路上演奏だね。
ボクはぽろんぽろんと演奏を始めた。心地良い音色が周囲に……周囲の人たちの脳内に直接響き渡る。
ちょっと『ボクへの親しみ』を増幅させる魔法は載せているが、それだけだ。
「いい曲だなぁ」
「心に直接響く感覚がある……これが本物の音楽ってものなのかな」
賞賛の声ってのは最高に気持ちがいいね。ボクは気分が良くなってもう一つの竪琴も取り出した。
二刀流ってやつだ。単純な理屈、これによってボクの演奏の感動も2倍になる。
ボクは二つの竪琴を魔法で浮かせ、演奏を続ける。
観客たちの歓声が広がった。やっぱりこういうことの出来る吟遊詩人は珍しいんだろう。
演奏の終わり、ボクは大袈裟に腰を曲げて挨拶をした。ぱちぱちと拍手の音が聞こえてくる。
ついでにボクは予備の箱を取り直し、自然な動作で蓋を開けてその場へ置いた。
イイ演奏の後にはやることがあるよね?
「……? なんだ、あの箱」
「何かやるのかしら」
ダメだ。どうやらお捻りとかチップとかそういう概念はこの世界じゃ普及していないらしい。
クソが、パフォーマンスして損したぜ。
「ねぇねぇそこの人たち、ボクにこの街のオススメのお店を教えてはくれないかな? あぁ、お店ってのは食事できるとこって意味ね」
「あぁ、それなら……」
ふむふむ。なるほど?
ほうほう。
「ってとこかな」
「なるほど。ありがとう、感謝するよ」
どうやらこの街じゃあ、結構色々な店があるらしい。
面積も広いし、中々良さそうな街だ。まァボクは永住する気ないけど。
「あ、そうだ。多分吟遊詩人のアンタには関係ないとは思うんだが……最近はダンジョン内の魔物が活発になっているらしい。外に溢れ出るまでいくのは稀だが、一応自分の身は守れるようにしとけよ」
「ご忠告ありがとう。肝に銘じておくよ」
スタンピードってやつか? ま、それはその時になったら、だ。
まずは……ダンジョンよりも先にレストラン巡りだ。
ボクは意外と食事が好きなのかもしれない。昔のボクもそうだったのだろうか。真実はもう分からない。
◇◇◇
『ふむ、中々イイ店だ。お値段は少々張るが、ね』
「全額ボクが払ってるんだぞ。敬え」
『亭主関白は時代錯誤だぞ』
少なくとも身体は女×女だから違うぞ。まァそもそもボクは性別とか既に超越した存在だからね、そういう“““人間”””の枠組みには囚われないんだ。
『くくく、長い言い訳だ』
ぐい、とワインみたいな酒を飲む。
正直『苦い』意外の感想は出てこないが、ボクは黙った。
ま、そういう物なんだろう。
『ところで、こういう店って話しながら食べていいのかい……? 私たちは普通に会話しているが』
『S級冒険者だし大丈夫だろう』
「マナーはS級とか関係ないんじゃないかな」
ふざけんな、ボクはS級冒険者だぞ。
S級冒険者ってのは何やっても許されるって聞いたんだけど?????
ガセ情報か?????
もぐもぐ……おぉ、美味しい。なんかこの世界に来て初めて前の世界と同レベルくらいの料理食べた気がする。
これ何? 牛肉?
「カルペッパのチョマリ。アピーソーを添えて、です」
何言ってんのシェフ……ボク全然分からないよ……
『マリーセしたカルペッパの風味が絶妙だね。ツァレットしたアピーソーも良い』
「お褒めいただき光栄です」
ぼ、ボクを置いていかないでくれ……!
◇◇◇
「フーン、闘技場ねェ……」
『おや、想定していたより反応が鈍いね。キミなら興味があると思っていたんだが』
「いやだなぁ、ボクは吟遊詩人だぜ? そんな戦いなんて野蛮な行為とてもとても……」
「おい女、今テメェなんつった」
『あーあ、余計なこと言った』
横の方からガタイのいい大男がやってくる。彼は全身のいたるところに傷跡が残り、眼帯も装着していた。
ふえぇ……怖いめぅ(>_<)
「ここじゃ俺らみてぇな野蛮な奴が主役なんだ、言っていい事と悪いことぐらいは見極めてもらわなきゃ痛い目見るぜ」
「おっと、思ったより優しい人だった」
『それ言う必要あったかい?』
口が滑る、というやつである。あるよね、言った後に気づく失言。
ボクはしょっちゅうやらかしている。
「はぁ……まぁいい、見物ならあっちからやってくれると助かるがな」
「おぉ、ありがとう。お礼にボクの演奏聞いてくかい?」
「要らん」
「そんなぁ」
しかしアレだね。やっぱり冒険者の多い街だからなのかな、こういう闘技場がある理由って。
冒険者のガス抜き的な?
『どちらかというと街の意向が強い。ダンジョンは利益をもたらすが、それだけでは足りないと考えたのだろう。そのせいか分からないが、調べた限りだと……この街には面白い物が多い』
「なるほどねぇ」
やっぱ世の中金ってことかな。
ボクは10万ゴルをさっきすれ違ったゴツい人に賭けながらそう呟いた。
ちょっとくらい……バレへんバレへん。緩い精神干渉は魔法だと気づかれないのである。
ボクはちょーっと戦意や興奮を増幅させただけ。それにより副次的に痛みを感じにくくなったり恐怖が軽減されたりするのはまぁ、あり得るかもしれないが……ボクとは関係ないのである。
いいね?
『ほう、なら私も』
「おいちょっと待て」
その金ってボクが渡したお小遣いじゃね?
『チッ、バレたか』
「油断も隙もないね」
『絶対勝てる戦いだ。やらない意味もないだろう』
「じゃあ利益はボクのモノってことで」
『いや、そんな道理もない。お小遣いというのは既に貰った側の物だ。これはキミが小さい頃に使っていた理論だと記憶しているが……?』
クソが。ボクにはそんな記憶ないぞ。本当に言ったのか……?
いやでもボクは言いそうだな。くそっ、このままだとレスバに負ける……しかも、過去を掘り返されて負けるのは一番最悪なやつだ。
何か逆転の一手は……
とか考えているうちにゼナが勝手に申請を終わらせていた。ふ、ふふ……良い度胸してるじゃあないか……
『買ったら貰う。負けたら何もナシだ』
「いやそれボクに何もメリット無いじゃん」
『“価値”だけを見ていると世界は悪い方向に進む……名言だとは思わないか。これはなんとキミの言葉だ』
「引用でしか喋れない奴って逆に頭悪いとボクは思うんだ」
もっと広く解釈しようぜ?
たまには“価値”を求めても良いと読み取れる内容だろう、その言葉は。
『チッ……ならば『おぉーっとぉ!!! これは大番狂せだァーッ!!! ツヨム選手、なんと格上相手に一方的な勝利!!!』よーし祝杯を挙げようじゃあないか』
「賛成ーッ!!!」
こっそり肉体改造しといてよかった……魔法によるバフだとバレちゃうからねェ。あ、もしかしてゼナは気づいてた? まぁいいさ、高倍率万歳! 6.7倍ありがとう!!!