TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
Ep.31 双子、海底、融和
◇地下20階
「おっ、“宝箱”じゃん。ボク好きなんだよね“宝箱”」
『これは……なんだ、どういう仕組みなんだ?』
このダンジョンで敵を倒すと、まれにこういった宝箱が出てくる。
なんかリアリティラインが変な気もするんだが、中にはいい感じの魔導具が入っているので無視はできない。
「竪琴だ!!!」
『同じのは3個も要らないだろう』
「これだから素人は……」
『3個もどうやって同時に使うんだ?』
「こう」
ボクは風魔法によって浮かせた竪琴を風魔法によって演奏した。
風魔法って便利だね。
『頭の中がうるさい。やめてくれ……しかし前から思っていたんだが、キミは少し魔法の使い方がなっていないね』
「エ〜?」
ボクは天才のはずだが……?
『なんというかな……自らの力を押さえつけているように見える。本当はもっと……』
「おっと、話の途中だけど敵が来たよ」
『……そういえば、キミはどうやってこの世界に来た? その辺りの記憶は私の方にも残っていないが』
「分からないんだよねぇ。多分転移だとは思うんだけど……てか今聞く?」
ボクは適当に魔物を蹴り飛ばしながらそう答える。パーティプレイしようよ〜〜〜
『分からない?』
「うん。ダウナーお姉さんが出てくる小説呼んでたとは思うんだけど……そこからこっちに来るまでの記憶がちょっと欠けてるのかな?」
ここは本当に謎だが……まァ過去を考えても仕方ない。ダウナーお姉さんとは過去に囚われず前に進む、誰よりも自由な存在なのだ。
ボクはダウナーお姉さんなので過去には囚われない。
『一般的な定義というものを調べた方がいいね。それはそうと階段だ、降りるかい?』
「もちろん。こういうのは早く下に降りて良いお宝を手に入れた方が結果的に効率がいいのさ」
『ゲームじゃないんだぞ』
「ていうか全然人いなくなーい? ボクの演奏聞いてくれる人たちはー?」
『一般的には20階の時点でかなり下層だ。ここより下に人はまぁ居ないだろう……というワケでお前たち、出てきても大丈夫だよ』
ぬっ、と箱から悪魔と魔族2が現れる。ボクの許可出てないんですけお!
『最近暴れ足りてないですからね……少し憂さ晴らしといきましょう』
「キミそんなキャラだったっけ?」
『俺はあなたの指示に従います。戻れと言われれば戻りますが……』
「キミはもうちょい自我出して」
悪魔ちゃんはボクの話も聞かずに勝手に魔物を狩り始めた。
……実に悪魔っぽいやり方だ。魔族2くんはあんなのになっちゃあいけないよ。キミは天使系ダウナーお姉さんになる予定なんだからね。
『天使系ダウナーお姉さんって何?』
「これだから偽物の魔女は……本物だったら理解してただろうね」
『99%の確率で本物なのに……』
「そこは言い切ろうよ」
◇地下40階
そういえば、まだボクがS級冒険者になったことはあんまり広まっていないらしい。なんか正式公表はまだなんだと。
遅くねー? まぁこのダンジョンから戻ったら公表されてたりするのかな。
「広すぎるから攻略までどのくらい掛かるのか分からないけど、ねっ!」
ぐしゃり。
うへぇ……嫌な感触だ。スライムなんか蹴り飛ばすんじゃなかった。
『食糧に関しては問題ないよ。何故なら私が買い込んで例の魔王部屋にしまい込んでいるからね』
「反省が活きてるね」
『反省すべきはキミだろ。朧げに覚えてるぞ、あの間抜けな行動は……』
「失敗は成功の元って言うじゃん?」
天才の理論ってやつだ。それを利用しているということはつまりボクも天才ってことである。
◇地下60階
「ダウナーお姉さんズ・ミュージカルだぜ」
ボクたちは全員で竪琴を持ち、敵の前で演奏を開始する。
魔族2くんの分の楽器は無いので、適当にそれっぽい棒を持たせておいた。
『これ意外と楽しいねぇ!!』
ぽろんぽろんぽろんっ!!
ゼナがめっっっちゃ下手な演奏を繰り出す。正直に言って、別に演奏の上手い上手くないは相手に与える魔法の効果となんの相関もない。
むしろ、うるさいから気分を害する能力は高い。
『キェェェェーーーッ!?!?』
この階層のボスであるメデューサっぽい魔物がどたんばたんと暴れ散らかし床が揺れる。
やがて、数秒と経たずに敵の動きは止まった。
『……中々楽しいですね』
悪魔くんもそう思うかい?
ならばキミも吟遊詩人系ダウナーお姉さんへの一歩を踏み出したってことだ。
千里の道も一歩からという。少しづつダウナーお姉さんへの道を進んでいけばいいのだ。
ほら、ソシャゲでも初心者ミッションからスタートするだろ? ってことはある程度進んだらいい報酬を渡さなければならない。
それは面倒かもしれん……
◇地下80階
「しかし暗いなぁ」
ボクたちは手元に火種を浮かばせながらダンジョンを進んでいた。
ここら辺になってくると敵も結構強い。どれくらい強いかというと悪魔ちゃんや魔族2くんがまぁまぁ苦戦する程度である。全然分かんないかも。
『あの魔物はどうやら次元的に上に存在している。物理的にどうにかするなら適応した攻撃でなければならない。いけるかい?』
「ちょっと待ってね……あー、オッケー」
ここまでの攻略によって魔法についての理解も深まってきた。
分かったことはひとつ。思ったよりなんでも出来る。あと理論なんか考えるよりやりたい事をイメージする方がいい。
魔力弾が衝突したスライム状の魔物がねっちょりと弾け飛ぶ。なんだこの音?
「テンプレファンタジーダンジョンっていうには……少々敵のレベルデザインが挑戦的だね」
なんだよ位相の違う敵って。まともな手段じゃ勝てねーってこれ。転生(ゲーム的な意味)システムある前提だろこんなん。
『足切り、と見た方がいいだろう。最下層にはとんでもない物が眠っているかもね』
「これより強いってなるとどうなるのやら……」
『それこそ、キミが言っていた概念系の存在じゃないのかな?』
「おー、こわ」
◇地下99階
「……ここまで何日かかったっけ?」
『ふむ……えーっと……大体2週間といったところかな』
「結構長かったねぇ」
『最後の方は寄り道も多かった。時間もかかるさ』
ゼナがどこからか取り出した椅子に座りながらそう呟く。その椅子ボクにもください。
『しかし、この寝る前の時間というのは非常にヒマだ。エル、何か演奏してみてくれないか? そうだな……“湖の双子”をお願いしたい』
「なにそれ」
『そうだった、キミは吟遊詩人なのにメジャーな曲を知らないんだった……仕方ない。私が教えてあげよう』
ボクの持つ竪琴をひったくり、ゼナがびびんばろんと演奏を開始する。どうやってその音出したの?
◇◇◇
『……最後に、双子の兄は決断しました。自らの命を片割れへと受け渡し……湖の底から地上へと戻るだけの力を与えたのです』
「……」
『片割れは泣き、そして悲しみました。ですが時間はありませんでした。1人となった双子は地上へ出る事を決断し……っと、ここからは大体演奏者によって結末が変わる』
「えー」
『えーじゃなくて、そういうものだよ』
ボクが考えて喋らなきゃいけないワケ? 吟遊詩人って大変な職業だなぁ……いや、まぁボクはベテランの吟遊詩人ダウナーお姉さんだけどさ。