TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
◇地下100階
「区切りはいいね。それにこの大きな扉……最下層ってことでいいよね?」
『中間地点という見た目ではない。十中八九最下層だろうね』
『あの、私たち戦力になりませんよね? いつもの部屋に戻っていいですか?』
「ダメでーす」
キミたちにはボクのダウナーお姉さん的活躍を見る義務があります。
これはダウナーお姉さん憲法で定められているんだ。ボクの脳内六法全書にはそう書かれている。
『開けるよ?』
「ばっちこい」
ごごご、と重い音を立てて扉が開かれる。
その先に見えるのは大きな広間。
ゲームだったら100%ボス戦が開始するだろう見た目だ。
「勝ったらお宝いっぱい貰えるよね?」
『いや……どうだろうね』
「無かった場合はこのダンジョン作った奴に抗議のメール送らなきゃ……!」
多分このダンジョンって人工物だよね。いろんな部分に人間っぽい綺麗さが出てるし。
『ふむ? あの線を超えると魔力の波が発生する仕組みが……その先に繋がっているのは……』
「何か分かった?」
『あのラインを超えると魔力波が奥の方へと放たれる。そこからどうなるかは分からないが……十中八九、最後の敵が上から降ってくるか召喚されるか、だろうね』
「ふん、ボクたちなら余裕でしょ? なんてったってダウナーお姉さんが2人だ。負ける道理とか無いよね」
『ダウナーお姉さんなのは私だけだろう』
「あ?」
『ん?』
どうやら『教育』が必要なようだな……
キミはダウナーお姉さんに相応しくない。
『おっと手が滑ったぁ!!!』
ゼナが音速を超えるスピードで石ころを広間へとぶん投げた。
何やってんだてめー!
「地面震えちゃってるけど!? どう考えてもセンサー引っかかったよね!? もうちょい準備してから行こうよ!!」
『事前準備なんか要らないだろう? なんてったって私たちはダウナーお姉さんだからだ』
「あーもう、分かったよ……」
彼女といると会話のリズムが乗っ取られるような感じがするんだよね。
彼女以外じゃあこんな感覚にはならないってのに。
ぎゃおんぎゃおんと咆哮する、キメラのような巨大な魔物……
それが広間の天井から床へと降ってきた。
この魔物マッドなサイエンスから生まれてたりしないよね?
『これを作った奴は悪趣味だね。顔が見てみたいよ』
「同感だね」
『あの、あなた私の身体作り替え『来るぞ!』
キメラくんが突然トリプルアクセルをしたかと思えば、その場に竜巻が発生した。
その竜巻はどう見ても触れたら身体が切れるタイプの風で構成されている。
MMOのボスすぎる気はするがそれは置いておいて、ひとまずボクは障壁で悪魔ちゃんと魔族2くんを守る。
『エル! お相手は綺麗な白い羽を持っているぞ!』
「よっしゃそれじゃあ遺伝子情報パクって魔族2くんを天使系ダウナーお姉さんにするぞ!」
『おー!』
『いや“おー!”じゃなくて』
悪魔ちゃんは黙っていなさい。
「さっきから演奏してるけど効果が無いね」
『少し前の階層から全員そうだった。魔族ですら対策自体はできるんだ、そう難しいものじゃない』
アレ実際には「音」を経由して魔法発動してるってより……なんだろう、説明が難しいな。
そもそもが直接遠距離から脳内に干渉する魔導具なんだよね、あの竪琴。
そっから『演奏を聞かせる』って処理があって……ボクはそこにタダ乗りして、追加で『そこを起点に魔法を発動する』って事をしている……みたいな?
なんで前段階の『脳内に干渉する』って時点で対策されてたら、そもそも対象そのものを起点とした魔法の発動はできない……そういうコトになる。
「ま、でも……」
10コくらい同時ならどうだろうね?
ボクは異空間からここまでに手に入れた竪琴すべてを召喚し、風を使って一斉に演奏を開始した。
こいつらの対策はお粗末だ。なんというか、ネットを切れば解決する問題なのに力技で対処してる、みたいな?
「ボクの演奏を聴くがいいッ!!」
『私も加わろう!』
ゼナもどこからともなく魔導具のギターを取り出した。おいなんだそれ、ボクの知らない物使ってるんじゃないぞ。
それ魔導具? 後でボクにも演奏させてくれよな!
「『ダウナーお姉さんセッションだッ!!』」
『2人とも何言ってるんですか?』
セトリ? そんなものウチにはないよ。
音量増幅……不協和音の
『キュギギガガァーーーッ!?!?』
「効いてる効いてる!」
『あまり強い魔法は打ち込めないぞ……精神を錯乱させる魔法を使うんだ!』
即死効かないとか面倒な敵だぁ……まぁ終盤のボスってそんなもんか? いやでも現実にまで適応されるのはどうなんだ?
『トドメは私がやろう』
「いーやボクがやる」
もしかしたらラストアタック報酬を貰えるかもしれない!!
「“コズミック・ショット”!」
のたうち回ってマトモに回避もできないキメラを相手に、ボクは超圧縮したエネルギー弾を放った。
本当は“ダウナーお姉さん・コズミック・ショット”っていう正式名称があるんだが、今回は時間が無いので省略形だ。
『くっ、一撃死か……最下層にしては脆いな』
「まま倒せたしえやろ」
『今私のこと“ママ”って言った?』
「言ってないよ」
◇◇◇
『ふむ……ラスボスを倒したら普通鍵が開くか、鍵を落とすか……どちらかにはなると思ったんだが。エル、どう思……何やってるの?』
「エ? そりゃあもちろん天使系ダウナーお姉さん改造手術だけど……」
『あぁ、ついに魔族2くんともお別れか。寂しくなるね』
『いや中身は変わらないですから。何別れみたいな言い方してるんですか……』
今日この日をもって、魔族2くんは天使系ダウナーお姉さんへと生まれ変わるのだ。
整形に必要な免許とかはよく知らないが、まぁ多分大丈夫だ。ボクには
『闇医者というやつじゃないかい?』
「ゼナは黙ってて。さて、そろそろ完成だ」
キメラの翼からもぎ取って解析した遺伝子情報をぶち込みつつ、髪とか胸とか《自主規制》とかをいい感じに魔法で情報を編集して……オーケー!
「キミは生まれ変わった……天使ちゃんだ」
『ありがたき幸せ……っ!』
『どこが?』
「ていうかさ、ちょっとそろそろキミたちの呼び方をちゃんとした物に変えようと思うんだけど……」
『なるほど。ついに私たちの本名を聞く気になった、と?』
……?
何言ってんだコイツ……?
「今日からキミは“ワン”だよ。天使ちゃんは“ツー”ね」
『ははっ』
『あの、私には本みょ『おーいエル! この扉どうする!?』
おっと、ゼナがボクを呼んでいる。助けに行かなきゃ……(使命感)
「なにか用カナ?」
『いやね、この扉が開かなくて……どうしようかと迷っていたところでね。勝手に開くとかも無かったし、無理やり進んだら不法侵入に当たるんじゃないかと思って』
ゼナにしては遵法意識に塗れた台詞だ。なにか裏があるに違いない。
ボクはちらりとその辺を観察した。石の破片しか見当たらない。
「おいおいゼナちゃぁん……確かにボクたちは勝手にここにやってきたさ。でもね? これはどう見ても攻略される前提の場所だよ。鍵をぶっ壊しても罰は当たらないさ。これはダウナーお姉さんの圧倒的頭脳から計算された事実だよ」
『キミ、文頭に“ダウナーお姉さん”って付ければなんでもより良くなるとか思ってないかい?』
「……? そりゃそうでしょ」
『……はぁ。まぁいい。ともかく、だ。一応それでも建前ってものは必要だと思わないかい?』
「あっ手が滑ったァ!」
ボクは
きゃあ!!!
『よーしそれじゃあ進もうか。お宝が眠っているとしたらこの先だろう』
「もしかして今責任押し付けてた?」
『ああ』
「よーし表出ろ」
『それをするにはまず“表”と“裏”の定義からしてくれないと……表っていうのはどこのことだい?』
「なんだお前」
『いやキミの真似しただけなんだけど』
ダウナーお姉さんはそんな屁理屈みたいなこと言わない!!!
きっと解釈の問題だ。ボクが完璧なダウナーお姉さんすぎて複数の読み取り方がされてしまっているのである。
『キミ自分でも何言ってるのか分かってないだろ……確率統計で次の言葉を予測してるんじゃないか?』
「人工知能系ダウナーお姉さん……!?」