TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
「でっっっっか」
ボクは改めて自分のプロポーションに驚いていた。いやここだけ膨らみすぎだろ。他の部分めっちゃスレンダーなんだけど。
ポロンポロン、と竪琴を奏でてみる。いい音は鳴るけど曲ではないね。
まぁこれも練習あるのみだ。
今更だけど今いる場所について説明しよう。
ここは『ジマの宿屋』という場所で、部屋代がめっちゃ安い。代わりに食事はない。
現在時刻は……大体元の世界でいう午前4時ってとこだ。
研修1日目は午前10時ぐらいに開始する。てなわけでそこまでは魔法の練習をします。
「独学じゃ限度があるな」
続けていれば色々やれそうな雰囲気はあるんだが、それはそうと一般的な魔法についての知識はあった方がいいだろう。どこかに魔導書みたいなのは無いものか……
「あぁ、そういえばギルドには図書館があるんだっけ」
ウラクスさんがそう言っていたような気がする。この辺りの話はウトウトしながら聞いていたからよく覚えてないっていうね。
「研修前だけど……ギルドに顔出してみようかな?」
一応カードあるし、使えるでしょ。多分。
◇◇◇
朝ごはんはその辺の屋台の串焼きっぽいものを食べた。そこそこイケる、ただし砂利っぽい食感だけは許されない。
『聞いたか……やられた……』
『4人……裏路地……』
なんだか朝早い段階なのにザワザワしているような気がするが、無視してギルド内の図書室へと向かう。
「やぁ。魔法についての本とかって無いかな?」
「魔法か……それなら奥の方の棚だ。レベル別に分かれているから、自分に合ったものを選べよ」
「ありがとう司書さん」
えーっと?
『よくわかる まほう!』『冒険者のための魔法についての解説』『魔法理論』……
まぁ『魔法理論』でいいだろう。ボクは天才なので……(慢心)
「んー……」
ぱらり、とページを捲る。
いやぁ……あの流れからで申し訳ないんだけどさ、普通に理解はできる内容だったからさ……
へぇ、魔力って生物の身体から発生してるんだ。てっきり大地に満ちているとかと思ってた。
マナとオドみたいな分別は無いらしい。
「あ、そういえば詠唱してなかった」
魔法名はたまに口に出していたんだけど、その前の詠唱まではしてなかったなぁ……
どうやら一般的には詠唱もほぼ必須らしい。本格的に冒険者として仕事する前に知っておけてよかったなぁ。
「魔法陣?」
考えたこともなかった。マジでここまではほぼ感覚で使ってたからねぇ……
あぁ、意識してやってみるとハッキリ分かる。
頭の中でめちゃくちゃ細かい模様の陣みたいなのが浮かび上がっていた。
ある程度までは勝手に構成されるけど……さらに進化させるんだったら、自分で拡張するか増やすか書き換えるか、何かしらの操作を意識的にしなければならない。
威力を上げるだけなら感覚でもイケるんだけどねぇ。
「増幅理論……まぁ単純に紋様維持して拡大したと同等の効果を発揮させる……オペアンプに近いか」
ちょっと難しくなってきた。
お、次は単純なオンオフ……いやこれ回路みたいだな?
そういう法則って近くなるものなのかな……?
ま、ボクはこっちの世界に来てまだ2日くらいしか経っていないのでよく分からないけど。
でも前の知識を活かせるってんならありがたいね。
「ん……もう時間か」
頭ん中でガチャガチャやりながら読んでたから結構時間がかかった。
さてさて、今日は120ページまで読んだから……いや覚えるの面倒だな。しおり勝手に挟んでおこ。
◇◇◇
「冒険者にとって一番重要なことは何か分かるか?」
「魔物をぶっ飛ばすことです!」
「生き残ることだろ?」
「お前ら全員不正解だ。答えは単純、“人の役に立つこと”だ」
ありがたいお言葉だ。ボクは感動していた。
感動しすぎて涙が溢れそうだなぁ。
「冒険者というのは人々の依頼を達成することで報酬を得る。魔物の退治などはその一部にすぎん。街の掃除、建設資材の運搬、護衛、草むしり、採取、すべてが冒険者の仕事だ」
「ボクもそう思います」
「いい心がけだ、エル=レイヴィア」
やべー、マジでつまらん。あり得ないぐらい暇だ。ボクは脳内で魔法陣をガチャガチャし始めた。
無属性魔法は可能性感じるんだよなぁ……風が一番微妙かも。
「だがしかし、魔物との対峙も冒険者の仕事である。つまり強さは絶対に必要だ。そこで提案がある」
「やっと本題か」
冒険者志望ってのは私語を慎めない奴が多いみたいだね。まぁ登録めちゃくちゃザルいし当たり前か。
あ、そうだ。魔法の発生地点とか色々いじってみよう。手と杖の違いから考えて、他のものを経由して発動もできるはずで……
「お前ら、俺にかかってこい。一撃でも当てられたらその場で研修終了にしてやるよ」
そんな権限コイツにあるのか? いやまぁ本人が言ってるならいいんかな……
「その言葉に嘘はないんだな?」
「あぁ。このB級冒険者ロッカスの言葉に嘘はない」
B級冒険者って実際どのくらいの強さなんだろうか。ラクエスさんはB級だと自慢げに言っていたが、彼の実際の戦闘は見ていない。
これはB級の強さを知れる丁度いい機会だ。ボクは脳内でガチャガチャしながらそう考えた。
まぁ一旦、他の人が襲いかかるのを見ておこう。
客観的な視点で見るってのは大事だからね。
「一応今のうちに説明しておくぞ。もう知ってるだろうが、冒険者にはランクがある。Fから始まりE、D、C、B、A……そしてS。まぁ基本はAランクが最高到達点だ。俺は来年にはAに昇格する予定なんでな、結構強えぜ?」
「その綺麗な顔ぶっ潰してやるぜ」
一際大きな研修生がロッカスさんに拳を放つ。
が、その拳は空を切った。
目を強化しつつ認識だけ加速させてたけど、こりゃ過剰だな。もうちょい限定するか対象によって加速度を変え……いや、これは面倒だ。
さてさて、奴のやったことは至極単純。めっちゃ早く動いていただけである。
多分身体強化使ってるんだろうけど、それはそれとして素の肉体のスペックが高そうに見える。強化せずとも元の世界の限界は軽く超えているだろう。
「“ウィンド・アロー”!」
「魔法は強いが、隙だらけだ」
魔法使いの女の子がロッカスさんに肩ポンされた。セクハラってやつである。
「う、うおおおおっ!」
「素直すぎる」
「あべっ」
軽く横に避けられ、そのままチョップが頭に入った。
少年くんは悔しそうにロッカスさんを見上げている。
「さて、君は来ないのか? エル=レイヴィア」
「ボクは吟遊詩人だからねぇ……曲を奏でることしかできないのさ」
ぽろん、と竪琴を鳴らす。
「ごぽっ……!?」
「うわ、想像以上に効いた」
ロッカスさんは吐血した。さ、流石に初手で毒を試したのはマズかったか……?
まぁいいや、一撃当てたらいいんだよね?
「えーいっ」
こてん、とロッカスさんの頭をパンチした。すっげぇ眼力でこちらを見つめてきているような気がするが、おそらく見間違いだ。
【メロディ・マジック】
エルが作成したオリジナル魔法。
楽器を媒介して音に魔法を乗せる。
エルの持つ竪琴の場合、耳を塞ごうと脳内に音が響くため確実に効果を発揮する。
ぽろん(死の音色)