TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
◇◇◇
太陽らしきものが昇った。そう、朝である。
……太陽らしきものって何?
ダウナーお姉さんの1日は早い。
他の人たちよりも早い段階で起床し、アデノシンを魔法で削除し眠気を飛ばす。
なんか身体に良くない気はするけど、原理的に問題は……いや、多分これを繰り返していたらどこかしら不調にはなるだろうなぁ。でもまぁその時はその時で。
そして、その空いた時間でボクはまた魔法の検証に乗り出した。
とはいえ、やることは脳内で魔法陣を組み上げ、少し改造し、実行してまた改造……これを繰り返していくだけである。
もっとちゃんとした戦闘訓練とかもした方がいいとは思うんだけど、まずは魔法極めたいよねぇ……
「早いな。何をしている?」
「魔法の検証だよ。ボクはこの時間が結構好きなのさ」
「……隣、座ってもいいかな?」
「身体目的?」
「そんなわけあるか」
依頼主……ラルフさんがボクの隣に腰掛ける。この倒木結構座りやすくてイイよね。
「〝
「だからその二つ名は何? ボク昨日初めて聞いたんだけど」
「はっはっは、B級の時点で二つ名を与えられるのは珍しい。誇ってもいいんだぞ?」
「〝
「くくく、随分と自己評価が高いようだ。だが気に入った、初日はどうなることかと思ったが……アイツが直々に紹介しただけのことはある」
あー、そういえばギルドマスターから直接お願いされたんだっけ、これ。
もしかしてこのおじさんは偉い人なのかな?
「私は元冒険者でな、今は研究をしているのだ」
「研究? なんのさ」
「魔法の研究もしているが……今は古代都市の研究が中心だ。今回の護衛の目的地もそこだ、行ったことはあるか?」
「無いよ。ボクは観光地そんな好きじゃないし」
「はっはっは、観光地……観光地か、そうかそうか!」
「そんなに変?」
「あぁ、古代都市はこのオーヴァ近辺にしては魔物が強い……いや、強すぎると言っていい」
「それは……少し、楽しみだね」
強い敵とか出会ったことないからね。ドラゴンとかいたら嬉しいなぁ。
あー、でも現段階で出会うのはちょっと怖いかもね。流石にまだ手数や戦闘慣れといった部分が不足しているような感覚がある。
それにまず、ボクはもっと少年たちの純情な心に付け入って『初恋のダウナーお姉さん』枠を勝ち取る必要があるのだ。目指せ100人の初恋、ってね。
「そいえばラ……ルフさんはなんでこんなに冒険者の護衛雇ってんの? ボク1人いれば十分なのに」
「大した自信だな。まぁ説明してあげよう。私は古代都市へ行く際にはギルドに頼んで有望な新人を護衛任務に就かせている。理由としては未来ある若者を見たい、というのが強いのだが……」
「どうせコネ作りとかの意図もあるんでしょ?」
「はっはっは、確かにそうだが……そんなに上手くはいかないものだぞ? それこそS級に到達しうる冒険者など、こんな場所で目にすることは無いと言っていい……お前は除いてな」
おうおう、褒めてくれるじゃあねぇの。ボク嬉しくて絶頂しちゃうよぉ。
「ふふふ、キミは見る目があるね」
「S級冒険者は頭のおかしい者が多い。〝百剣天帝〟に〝黄金龍王〟や〝星斬り〟……あぁ、〝
「へぇ?」
「だが……その誰もがお前には敵わないだろうな。少なくともイカれ具合では」
「褒めてるのかなそれ」
「褒めているとも」
ほんとかなぁ。ボクは訝しんだ。
「ああそうだ、一つアドバイスをしてやろう」
「年寄りの言葉は聞け、みたいに言われるよね。ボクはあんまり年寄りだからって良い情報を持っているとは思っていないけど、まぁせっかくだから聞いてあげよう」
「お前友達いるか?」
「いるよ。ほら、クラベルトくんとか、ボブくんとか、メイとか」
「……まぁ真偽は聞かないでおく。さて、お前は魔法を理論で理解しようとしているな?」
「? あぁ、そりゃそうでしょ」
「確かに理論は重要だ。9割9分の魔法使いはそのレベルまで達しない。そこまで辿り着けている時点でお前は既に一人前を超えている」
「そりゃどうも。レベル低くない?」
「そうではないのだ、エル=レイヴィア。魔法というのは理論だけで完結するものではない。私が言いたいのは……もっと概念的な理解をしてみてもいいのではないか、ということだ」
「ふ〜ん?」
まぁ、確かにボクはこの世界に来て半年も経っていない新参者だ。
元、ではあるが魔法の研究者。彼の言葉はちゃんと覚えておいた方がいいだろう。
「理論を捨てろという訳ではないのだ。理論も、意志も、どちらも重要なのだ。魔法というのはそういうもの、と理解すれば……お前は更なるステージへと進めるだろうな」
「ふーん。ま、頭の片隅にでも置いておくよ」
「いつかお前にも分かるだろう……さて、もうそろそろ時間だ。出発の準備はしておけ」
「ふふん、護衛はボクに任せたまえよ」
ぽろんぽろん、とボクは勇ましげに竪琴を鳴らした。
やっぱいい音色……
◇◇◇
「さて、もうすぐ到着だ。検証中と帰りも護衛してもらうので、そこは皆さんよろしく頼むよ」
「ここの滞在期間は?」
「およそ7日を予定している……おお、見えてきたぞ。アレが古代都市だ」
そうして視界に見えてきたのは苔むして倒れたビル群であった。
あ、ああ。そういう感じね。
いやでも、構造的には見たことないビルばかりだし……地球の未来って線は無さそうだ。
「ほう、ちょうど今日調べようと思っていた場所が魔物に占拠されているようだ。護衛の方々、あいつをいち早く狩ってくれた者にはこの金貨を贈呈しましょう」
「俺がやるぜーッ!」
「馬鹿野郎俺のもんだぁーっ!!」
「ボクのものだねぇ!」
ぽろん。でっかいトカゲみたいな魔物は脳を爆散させて死に絶えた。ミスったらこうなるのか……ますます危険な魔法だなぁ。
「想像以上だ。ほれ、やろう」
「わーい」
10万円、ゲットだぜ。
◇◇◇
「ふむ、つまらん。強い魔物が出てきてくれると嬉しいのだが」
「それ依頼主が言う言葉じゃないでしょ」
「新人冒険者たちの見極めも目的なのでなぁ……あぁ、一応言っておくがここからお前は手を出さないように。他のにも活躍の機会は必要だ」
「へいへい。それじゃあボクは適当にうろついてますよぉ」
お、これもしかして店の看板か?
うーん……日本語じゃあないから読めない……と思いきやなぜか読める。一応この世界の現代において使われている言語とも違うはずなんだが……まぁそこはいわゆるチートみたいなやつだろう。
ちなみに『萌え萌え♡メイドカフェ“アストライア”』って書いてあった。クソが、すでに滅んでて行けない……ボクはメイドコスしたダウナーお姉さんが見たいのに……!
「うーむ、掠れていて復元は厳しいな……これにはなんと書いてあったのだろうか」
『萌え萌え♡メイドカフェ“アストライア”』だよ。
まぁでも、ボクは出来るダウナーお姉さんであるのでそれを言わない。夢を壊す必要なんて無いのだ。
「きっと武器屋だろうな。この形式の看板というのはそういう場所でよく使われている」
メイドカフェだよ。
「かつてはいったいどんな武器が売られていたのだろうか……魔導具のレベルも高かったはずだ」
高いのはメイド文化のレベルだよ。つーかなんでそんな元の世界と近い概念広まってんだよ。いや翻訳の都合っぽさもあるけどさぁ。
「エル=レイヴィア。お前はやはりこういった場所に興味はないのか?」
「あるにはあるけど……ボクは若い少年たちの方が興味あるかな。ほら、特にそこの冒険者とか」
「……お前、そういう趣味だったのか? こりゃあ傑作だ! 冒険者なのに貴族のような趣味だな」
「あぁ待て、そういう意味じゃあないよ。ボクは単にみんなの心に残る大きな痕跡になりたいってだけで、いや、そのね? ほら、誤解だって。ねぇ、聞いてる? おい、返事しろ、おい!!」
よかったらぁ、評価付与してくれるとぉ、嬉しいにゃんっ♡
逆効果か?