TS異世界転移したので最強無双ダウナーお姉さんごっこをします 作:ゆきゆき(ダウナーお姉さん(本物))
「さて、見えてきたぞ」
「へー、アレがネクシアって街? 意外と大きいね」
「ネクシアを知らない冒険者がいるとは思わなかったが、確かにあそこは広いぞ」
地理全然分からないんだよね。興味無かったし。
ま、これからは最低限ぐらいのお勉強でもしておこう。
「あー、楽な依頼だったぜ」
「そうかぁ? 魔物は結構強かったと思うんだが……」
平均ランクDぐらいだからねぇ。むしろボクの方が場違いに近い。レベル的にはDぐりいに合わせているように見える。
なんでこれをボクが無理やり受けさせられたのかっていえば、まぁギルドマスターがこの依頼主と仲がいいとかそんなんだろうけど。
◇◇◇
「……もう行くのか?」
「え、だってもう依頼終わったし。ボクはもうちょっとダウナーお姉さんとしての研鑽を積まなければならないんだ」
「そうか……ん? よく考えれば何を言っているのか分からないが、まぁお前がそう思うのなら無理に止めはしない」
「あ、そうだ。ボクはそろそろ
「ここだろう」
「いや、ここ以外で。ボクはキミとそんなに会いたくないからね」
「正直すぎるだろう。だがまぁ、そうだな……オーヴァの南には面白い場所がある。そこを目指してみるといい」
「おー、なるほど。ありがとう、恩に着るよ」
そう言ってボクはネクシアの街を出た。ここ
◇◇◇
「んー、やっぱボクは一人旅の方が好きだなぁ」
ぱちぱちと燃える炎で暖をとりながら、ボクはそう呟いた。
ボクは独り言は多いタイプだ。
メイドにも『ブツブツうるさいですね』と言われていたが、それは仕方のないことである。
これはボクにとって考えをまとめるのに丁度いいツールなのだ。
ちなみに炎は燃えているが、焚き火ではない。宙に炎が浮かんでいるだけだ。
魔法使うんだったら焚き火要らんよねっていう。
ボクは焼き上がった肉をモグモグと口に運ぶ。
さて、オーヴァに帰ったらどうしようか。
南に行くにしても、その前に色々とやりたい事はある。
新しい魔導具が無いか確認したり、最後にカモから搾り取ったり……
あぁ、あとクレッシェンドくんたちにお別れの挨拶もしておくべきだろう。でもやっぱり面倒だから挨拶はいいや。
クラウソラスくんはあれでも寂しがり屋なのだ(断定)
きっとボクが居なくなると聞いたら泣いちゃうだろう(断定)
少年たちもそうだ。きっとボクのようなダウナーお姉さんが旅に出るって言えば心配で心配で泣き出してしまう(断定)
「……で、キミは誰だい?」
ボクは虚空に向けて話しかける。
簡単な仕組みだ。魔力波をぶつけ続けて、帰ってくるまでの時間と反射角から動いている対象を暴く。
現代のレーダーとやっていることは変わらない。ただし1人で、設備もなく実行できる。
『おやおや、バレてしまうとは予想外ですね』
「そんなにボクの歌が聴きたいのかな?」
『歌……? 噂だとあなたはその楽器をぽろんぽろんと鳴らしているだけで、演奏なんかした事がないはず……いや、まさか……聞き間違いか……? いえ、もしかすれば人違いという可能性も……それに件の人物は1人の時によく音痴な声で歌っているという話も……しかし吟遊詩人が音痴だなんてあり得ないですし……』
ぽろん。
ボクは竪琴を鳴らした。
が、何も起こらない。
『あぁ、無駄ですよ。その楽器は魔導具……それも頭の中へと直接音を届けるもの、でしょう? そういった音を打ち消す魔族を使っておりますので、直接聞かせようとしても無駄です』
「へぇ、ちゃんと下調べしてて偉いねキミ」
『いえいえ、光栄です。さて、それでは私から提案が……』
そう言って、コウモリをそのまま人にしたような姿の男……いや、魔族の男がボクに提案を持ちかけた。
『単刀直入に言います。魔王軍に入りませんか?』
「へぇ、そりゃなんでだい? 魔王っていうのは人間に敵対してるんじゃなかったっけ?」
『ええ、そうです。ですから、この提案を持ちかける相手はとても少ないのです』
「なんでボクが?」
『自覚が無いようですので説明しますと———利益があれば何でもやるような方、だからでしょうか』
心外だなぁ。ボクが利益だけを追求するだって?
そんな情報どこから手に入れたんだい? きっと、その情報源は裏切り者か無能の2択だ。
「で? もしボクが協力したのなら……そちらは何を提供してくれるのカナ?」
『我々はあなたに高待遇を約束します。地位も、名誉も、少年も、あるいはお姉さんも与えられる事でしょう』
「よく調べてんじゃねぇか……」
『どうでしょう、私たちの提案を受け入れてはくれますか?』
「具体的に……どのくらい?」
『そうですね、あなたは候補の中でも特に突出している……すべてが終われば、世界の10分の1程度までは受け渡す準備ができています』
世界の……10%?
それは……
「受け入れ難い条件だね」
『交渉決裂、と。差し支えなければ理由をお聞きしても?』
「ボクを仲間に引き入れるんだったら、世界のすべてぐらい渡せないと話にならない。ボクは全部欲しいんだよ……分かるかい?」
『それは世間知らずというものです。さて、決裂したのであれば生かしておく理由はありませんね』
ここで死んでもらいましょう。そう蝙蝠男は口に出した。
『
「確かにボクは吟遊詩人だからね、それが無いと仕事はできない」
『では、死んでください』
蝙蝠男が襲いかかってくる。
ボクはゆっくりと目を閉じて———
『ごふぅっ!?』
「———でも、戦えないとは言ってない」
そのまま奴の顎を蹴り上げる。
どうやら身体強化に防護障壁、硬化その他諸々を使っていたらしいけど……そんなの既に想定済みである。ボクをぶっ殺したいならせめて概念系攻撃を使ってこい。
打ち上がった蝙蝠男。
ボクはそのまま急加速し上空へと飛び出す。
そして、その拳に魔力を束ね強化、硬化、反作用衝撃ベクトル反転、アンチマジック、その他諸々を加えたスーパーパンチ(正式名称)を放った。
『グギィっ!?』
顔に拳がめり込み、奴の顔面を物理的に凹ませる。
まだ生きてんの? 魔族って意外にしぶといね。
『ぐっ……かはっ、き、貴様ァ……殺してやる……殺してやるぅぅぅぅ……ッ!』
「おいおい、そんな顔してどうしたんだい? ボクにそんな怖い顔見せないでくれたまえ。意外と怖がりなんだよ」
『グ、ギィガァァァッ!!』
先程とは比べ物にならないほどの加速……だが、その分強化に用いられていた魔法が減っている。
視界強化、認知強化、硬度強化、身体強化……ボクは奴の動きを捉え、突進中にその腕をガッチリと掴む。
『ぎっ、ギィィィィ!!! 離せッ! 離せェーーーッ!!!』
「おいおい、さっきまでの知的な喋り方はどこに消えたんだい?」
『ウッ、ギィッ!? グギィャァァァッ!?!?』
めきめきめき、と音を立てて魔族の腕がもげる。
わぁ、大変。
「今治してあげるね?」
ボクは治癒魔法で再び腕をくっつけた。危ない危ない、力加減間違えた。
『ギィッ!? な、なぜ……』
「利用価値があるからね」
『も、目的は何だ!? なんでもやる! 手伝う! 離せ、だから離せェ!!』
口の利き方がなってないやつだ。ボクは不機嫌になった。
「ボクぁね、とある噂を聞いたんだ」
『ギィ……ッ!』
「一部の……本当に一部の貴族の話なんだけどね? 彼らは魔族の皮が欲しいらしいんだ」
『ギ……ギィ!?』
「でもボクはそんな非人道的な事はできなきんだ。だって倫理的におかしいじゃん? 魔族だって意思疎通ができるし、きっといつか分かり合える」
『ギィ……』
だから、キミにはボクの役に立ってもらう。
◇◇◇
「おー、あんたも帰ってきたか」
「久しぶりだねクラシオンさん」
「おお、もう何も言わねぇ。ところで……その、なんだ……その……箱? は……なんだ? 動いてるが」
「なんでもないよぉ」
『ギ……ギ』
「……本当に?」
「うんうん、そうだね」
「そ、そうか。まぁ頑張れよ」
「じゃ、また」
彼女は……何やらたまに動く大きな四角い箱を紐で引っ張りながら歩いてきた。
中に何が入っているのかについて、クラウスは考えないことにしたのであった。
Chapter 1終了……?
よかったら評価付与してってくれると助かります。コメントとか共有とかもいいぞ!
ほんとにしてくれるだけで嬉しいので、ぜひ。いやごめんやっぱ嘘、高評価ほしい(強欲)