前回までのあらすじ!
見滝原中学校に転校してきた暁美ほむらは不幸にも謎の怪物に襲われる。
しかし、たまたま鹿目まどか一行が来てくれたので助かる。
まどかと共にマミさんのお家で説明を受けるとおやビックリ!この世界には呪いの結晶たる魔女と戦う魔法少女がいるということらしい!
なんやかんやあってまどかが死んでしまうも、マスコットのキュゥべえに契約を勧められたのでホイホイついていくことにし、『まどかとの出会いをやり直す』という願いを叶え、魔法少女となる。
その後時間を巻き戻しまどかとの一方的な再開を果たすも、魔女の正体が魔法少女の成れの果てだということが判明!
再度時間を巻き戻し、まどか一行に事情を話すも聞き入れられず、それどころか仲間の一人が魔女になった途端に混乱からまどかとほむらを残して全滅状態に陥る。
そんなこんなで迎えた決戦は惨敗。まどかを魔法少女の運命から救って見せるという約束を交わし、果てしない繰り返しの旅を始める。
いつの日か、まどかを救える日が来ると信じて━━━
いつもの病室で起き上がる。
あまりにも見慣れてしまった、失敗の証。また、まどかを救うことが出来なかった。
今度こそ、必ず……
『世界観が重すぎる魔法少女生活、はーじまーるよー』
不意に、そんな声が聞こえた。音声読み上げソフトのような、抑揚のない声が。
この病室には私の他に誰もいない。だというのに、まるで隣にいる誰が話かけてきたかのようにはっきりと聞こえた。
咄嗟に左を向く。やはり、誰も居ない。
『魔法少女まどか☆マギカは2011年にリリースされた伝説的魔法少女アニメだね』
今度は右から。
声質はやや異なるが、さっきと同様の抑揚のない声が聞こえた。
もちろん、こんな事は今まで起きたことがない。あまりにも唐突で、発言の内容を深く考えることもできなかった。
魔女の仕業だろうか。まどかを救えなかった私に生じた負の感情に反応して魔女がおびき寄せられた可能性は十分にある。しかし、探ってみてもそれらしい反応はない。
『もう動けるらしいので早速魔女サーチだ!』
『今ベッドの上でソウルジェムを構えているのが今作の主人公の
『何も引っかかりませんでした』
『開始直後から魔女がいるわけが無いから今の魔女サーチは完全に無駄行動だったね』
魔女ではない。しかし、声は左右から交互に聞こえてくる。
とうとう幻聴が聞こえるようになったのか。思えば、聞こえてくる内容は私の行動を反芻しているように感じられる。
具体的な症状が出始めるほど精神に負荷がかかっているのなら、もしかしたらもう長くはないのかもしれない。何度も時間を巻き戻してここに戻ってこれるからといって、私の心が折れないことの保証にはならないのだ。
「……だとしても」
だとしても、折れないうちは彼女との約束を果たすために死力を尽くさなければならない。
『というわけで
『今作では
退院までにはまだ時間がある。この間にできるかぎりインキュベーターとまどかの接触を、まどかが魔法少女になる契機を避けなければならない。
『何もしなければこの黒猫が不幸にも車に追突されて
『エイミーは一番最初の
『美国議員の汚職バレを防ぐことで
『言い忘れていましたが
『
『こいつは夜中に女子中学生の居室に侵入して書類もなしに契約を迫ろうとする人間の屑ことインキュベーターだね』
『実質コイツが黒幕でありラスボスですが残機が無限なので絶対に倒すことができませんこのゲームはクリアできないのか?』
エイミーが轢かれるのを防ぎ、美国織莉子の対処をして、まどかに接触を図るキュゥべえを始末する。
最近ではもはやルーティンに近くなった一連の作業においても、声が止むことはなかった。
人の名前を変に間違って読むことと、品のない言葉が頻繁に出てくるのが気になる。これが私の無意識が作り出した幻聴だというのなら、私の深層心理はどうなっているのだろうか。
とはいえ、結局のところこれは幻聴で、やることは何も変わらない。
そうして、転校の日が訪れた。
「……はい。あとそれから、今日は皆さんに転校生を紹介します」
『こいつはHRの時間に破局した彼氏の話を始める人間の屑こと
『転校生を置いておいて破局した彼氏の話をし始めるのは教員として問題無いのでしょうか』
「……暁美ほむらです。よろしくおねがいします」
教室に入り、自己紹介を済ませ、まどかを見つめる。
指輪ははめていない。見ていない間に契約を済ませた、ということは発生していないようだ。
『こいつは転校初日に気弱そうな女子生徒にガンを飛ばしてビビらせる人間の屑こと
『ここで
言われてみると、確かに現時点では何の接点もないはずのまどかをじっと見つめるのは不自然かもしれない。
そうえいば、初めて時間を巻き戻した時も、自己紹介の最中に事情を知らないまどかに駆け寄って魔法少女になったことを告白して困らせてしまったことがあった。
視線を外し、自分の席に着く。
HRが終わると、クラスメイトが席に押し寄せ、質問攻めが始まった。これ自体はいつものことだ。
「暁美さんって前はどこの学校だったの?」
「東京のミッション系の学校よ」
『ここでいうミッション系の学校とはキリスト教の教えを教育理念としている学校のことで間違っても蟻蜘蛛蜂を駆除する方のミッションではないね』
『もし蟻蜘蛛蜂を駆除したり糸をなんとかする方のミッションだったら
「前は部活とかやってた?運動系?文化系?」
「……やってなかったわ」
『特にはやってなかったんですけど、トレーニングはやってます』
『よくよく考えるとほぼ入院生活で部活なんてやる余裕はなかったしトレーニングはやってるね』
「凄い綺麗な髪だよね。シャンプーは何使ってるの?」
「……」
頭が痛くなってきた。
今日までは人と接することがあまりなかったので幻聴を無視することもできたが、人と接するとなるととたんに神経を使う。何も考えずに返事をしたら、相手が幻聴だったなんて想像したくもない。
もともと要領の良い方ではなかった私の頭は、今日までの疲弊とあわせて処理能力の限界寸前というところまで来ていた。
「ごめんなさい。なんだか緊張しすぎたみたいで……ちょっと、気分が。保健室にいかせて貰えるかしら」
『これは学校でサボりをする時に使う常套句こと仮病だね』
『転校初日から仮病を使うとはとんだ不良かと思えばもともと心臓病で入院していたのでギリギリセーフでした』
授業には出るつもりなので断じて仮病ではない。
「あ、じゃあ私が案内してあげる」
「私もいくいく」
「いえ、お構いなく。係の人にお願いしますから」
もともとまどかに警告をしようと思っていたところなので、ちょうどいい。
席を立ち、そのまま美樹さやか、志筑仁美と談笑していたまどかのもとへ向かう。
「……鹿目まどかさん。あなたがこのクラスの保健係よね」
「え、えっと。あの」
まどかが私に少し怯えているような気がする。やはりあれはファーストコンタクトとしては悪印象を与えるものだったようだ。
とはいえ、あまり親密になって魔法少女のことに勘付かれても困る。これで良かったのだ。
「連れていってもらえる?保健室」
『こいつはさっきガンを飛ばした女子生徒を連れ出して二人きりになろうとする人間の屑こと
『明らかにカツアゲを仕掛けに行っています見損なったぞ!』
……必要以上に悪評が立つのは避けたほうが良いのかもしれないが。
「あ、あの……その、私が保健係って、どうして」
「……早乙女先生から聞いたの」
まどかを連れ添い、廊下を歩く。
この光景も、幾度となく繰り返し見てきた、何の新鮮味もない景色だ。
『よく見ると教室が全面ガラス張りですヤバすぎ!』
『なにかのはずみで壁にぶつかるとそのまま落下死する恐れがある致命的な欠陥を負っているね』
ガラスは脆いというイメージがあるし、入学したての頃は確かに少し不安だったかもしれない。実際にそんな事故が起こったとは聞かないので大丈夫だと思うけれど。
……幻聴に思考を遮られ始めている。少し気をつけるべきか。
「あ、そうなんだ。えっとさ、保健室は」
「こっちよね」
「え、うん。そうなんだけど……」
「いや、だから、その、もしかして……場所知ってるのかなって」
『自分から案内を要求したのに既に道順を知っているので
「……」
こうして客観的に自分のしていることを聞かされていると、不審な行動をしているのではないかと不安になる。
「あ……暁美さん?」
「ほむらで良いわ」
『急に名前呼びを要求しました距離の詰め方がエグ過ぎます』
「ほむらちゃん」
『コイツはどう考えても不審な奴の言うことを素直に受け入れて名前呼びしてくれる人間の鑑こと
「……何かしら?」
「あぁ、えっと、その、変わった名前だよね……」
『こっちはこっちで初対面の人間相手に変わった名前だと言っています距離の詰め方がエグ過ぎます』
「……」
「いや、だから、あのね。へ、変な意味じゃなくてね。その、カッコイイな、な、なんて……」
━━━なんかさ、燃え上がれって感じでかっこいいと思うな。
私が繰り返しの中でどれだけ変わってしまっても、どの時間軸でもまどかはまどかだ。変わらないからこそ、その優しさが、いつか彼女自身の身を滅ぼすことになってしまう。
居ても立ってもいられず、まどかに振り返る。
『こいつは推定カツアゲを仕掛けにきている奴の名前を格好いいと評する人間の鑑こと
『平仮名表記にこそなっていますがほむらとは即ち"焔"のことなので格好いい炎属性の魔法少女に違いありませんもし違ったら投稿者の珍歩を晒します』
「ん"っ」
「ほむらちゃん!?だ、大丈夫……?」
思わずむせこんでしまう。
完全な不意打ちだった。
真面目な話をしようとしているのだから、急に変なことを言わないでほしい。いや、変なことはずっと言っていたのだが。
しかし、その発言の主は私の頭のなかにしかいないのだ。まどかからすると急に苦しみだしたように見えるだろう。案の定、私の体を支えて不安げな顔を向けている。
『コイツは不審な動きを見せていた相手であっても心配してくれる人間の鑑こと
『
「平気よ……少し、むせてしまっただけ……それより」
体勢を立て直し、改めて彼女に向き直る。今のうちに釘を刺しておかなければならないのだ。
「鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」
『コイツは心配してくれた相手に意味深な問いを仕掛けて困惑させる人間の屑こと
『さっきから人間の屑評が
「え、えっと、わ、わたしは、大切、だよ。家族も、友達のみんなも、大好きで、とっても大事な人達だよ」
「本当に?」
「ほんとだよ!嘘のわけ、ないよ」
改めて確かめるまでもなく、それは私自身が一番良く分かっている。
彼女は家族も、友達も、皆大切にしている。だからこそ、自分を差し出してしまえる。
「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね」
それでも、釘を刺す。
「さもなければ、すべてを失うことになる」
「え……」
今はわからなくてもいい。何も知らないままでいい。
「あなたは、鹿目まどかのままでいればいい」
魔法少女になんかならずに、普通の人生を過ごしてくれさえすればいい。
「今まで通り、これからも」
一方にまくし立てたせいなのか、私の言葉を噛み砕いているのか、困ったような表情のまま、まどかは立ち尽くしていた。
そんな彼女を尻目に、私は保健室へと歩みを進める。
『説明が圧倒的に足りていないせいで今のところの総合評価は不審者だね』
『しかしこれは無理もありませんなぜなら
「……」
本当に頭が痛い。保健室へは治療後の薬を受け取りに行く用事があるのだが、頭痛薬は置いてあるだろうか。
魔法で治すこともできるが、あくまで一時的な処置にしかならず、しかも頭痛の原因は明らかにストレスだ。毎回魔法を使うのは魔力の消費も馬鹿にならない。
幻聴を魔法で消せないか試してみたが、失敗に終わっている以上、うまく付き合っていくしかない。
結局、もらう筈の薬に追加で頭痛薬も貰って教室に戻ることにした。
『コイツは少し前まで保健室の厄介になっていたのに県内記録レベルの身体能力を叩き出すタフガイこと
『一応心臓病で入院していたという設定があるのですが恐らくセクシーティラノサウルスやパルクールなどの運動面で優秀なパークを優先的に取っています』
『画面の前の
『
『あらゆるゲームで千一卜を使っていることで知られている投稿者ですが
ことあるごとに幻聴が騒ぎ立ててくる事を除けば、授業はつつがなく終わった。
強いて言うなら、退院直後で何もかも出来すぎているのはやや不自然かもしれない。
━━━ほむらちゃんもカッコよくなっちゃえば良いんだよ!
見栄を張っているつもりはないが、まどかの言葉に影響を受けてしまっているのかもしれない。
それならそれで、悪いとも思わないが。
注目を集め過ぎたこともあるのだろう、放課後になるとクラスメイト達から遊びに誘われたが、全て断ってキュゥべえを探しに出かける。
『さぁ放課後になったので好き放題動けます』
『今のところ
『インキュベーターは
『コイツは愛ゆえに二次創作で散々変態行為を強要されてしまった哀しきヒロインこと
何もなければ、まどかはこの後美樹さやかの付き添いでショッピングモールへ行くはずだ。もちろん、キュゥべえもまどかとの接触を狙って付近で機会を狙うだろう。
そう踏んで、モールの駐車場を探してみる。
「いた……!」
「おや、君は……」
『早速見つけました貴様を排除する!』
白い独特なシルエットの生物を見つける。思った通り、まどかと接触する機会をうかがっていたらしい。
数日前にも何度か攻撃したが、向こうからは認知されないようにしていたので、これがこの時間軸での初対面ということになる。
「不思議なこともあるものだ。君とは契約していな……」
こいつの話に付き合っているつもりはない。
素早く拳銃を取り出し、発砲する。乾いた音が響き、インキュベーターは動かなくなった。
「これで……」
「なるほどね。これまでの不可解な襲撃も、君の仕業というわけか」
咄嗟に後ろを振り返ると、殺したはずのキュゥべえがそこにいた。
『インキュベーターは死亡すると新しいインキュベーターが送られてくるという大体ストーム1と同じシステムを採用しています』
『完全に絶命させてしまうと本部から新しいインキュベーターが送り込まれてくるので生かさず殺さずのところで捕獲する必要があるから実質ポケモンだね』
『言われてみればインキュベーターは喋らなければ愛嬌のある姿形をしていてチンチンムシの次にポケモンから声をかけられる可能性が高い生き物です』
「不必要に殺されるのは勿体ないからやめて欲しいところだけど……」
「お前の企みは分かっている。まどかを魔法少女になんてさせない」
「なるほど、それが君の目的か」
そう言うやいなや、キュゥべえは駆け出した。
『モンスターボールに入れておかなかったからインキュベーターが逃げ出したね』
「させない……!」
何度か発砲するも、インキュベーターの足を完全に止めるには至らなかったようだ。どうやら人間では入れない通気口のような場所に逃げ込まれたらしい。
『逃げられました』
『再走しろ』
『ここ最近はエイムラボを欠かしていないはずなのですがインキュベーターは身体が小さく素早いので普通の銃だとまぁ当たりませんどうして範囲攻撃をしなかったんだろうな?』
これ以上追えないなら、先に出口で待ち構えるか?何度も同じ時間を繰り返してきたとはいえ、流石に通気口がどこに繋がっているかまではわからない。
それなら、先にまどかの元へ向かうしかない。
そう考え、モールへの入り口を目指して駆け出した。封鎖された区域を無理矢理突破し、最短経路を突き進み━━━
「あなたなの?」
まどかの声が聞こえた。
嫌な汗が額をつたう。
そうして曲がった角の先で、キュゥべえを抱きかかえたまどかが目に映った。
遅かった。
『考えられるなかで一番最悪の状況でインキュベーターと
『再走しろ』
後方で、鎖かなにかが落ちる音がした。私がぶつかってしまったのだろう。
当然まどかも音に反応して顔を上げ、そして、私と目が合った。
「っ! ほむらちゃん……」
『考えられるなかで一番最悪の状況で
『再走しろ』
最悪の状況。正しく、現状に相応しい言葉だ。
キュゥべえの本性を知らないまどかにとっては、私は小動物を攻撃する悪党に見えているのかもしれない。
それでも良い。
まどかを契約させないためなら、まどかを守るためなら、私がどう見られても構わない。
「そいつから離れて」
「だ、だって。この子、怪我してる……だ、だめだよ。ひどいことしないで……」
『もう完全にアウトな時の反応です』
『不審者を通り越して危険人物認定を受けているけどやることはやらないと
「あなたには関係ない」
「だってこの子、私を呼んでた……聞こえたんだもん!助けてって!」
こうなると、キュゥべえを引き渡してもらうのは無理だろう。
なら、力ずくで奪い取るのかといわれると、まどかが自分の身を盾にしてまで阻止することは明白だ。仮に銃器で脅しても結果は変わらないだろう。
時間停止の魔法は触れた相手も動けてしまう。この場合、有効な選択肢とは言えなかった。
『何もかもに対応できるように見えて実のところこういうピンポイントなところで応用が効かないのが
なにか手はないか。
こうしてにらみ合っていまるうちはキュゥべえも動くわけにはいかないはずだ。考える時間はまだある。
そう思っていた矢先、突如視界が白く染められた。
「まどか!こっち!」
美樹さやかだ。
『こいつは親友の危機に颯爽と駆けつけるスパダリこと美樹さやかだね』
『逃げられました』
『再走しろ』
近くで鈍い音が鳴る。
魔法で煙を払うと、既にまどかの姿はなく、足元には消火器が落ちていた。
さっきの煙はこれを使ったのか。してやられた。魔法少女でもない一般人に邪魔されるなんて、思ってもいなかった。
すぐに追いかけようとして、視界が━━━いや、空間が歪んでいることに気づいた。
「こんな時に……!」
一帯に現実離れした光景が広がる。
魔女の結界。
魔女の狩場に足を踏み入れてしまったということだ。
2人も巻き込まれていると思って間違いないだろう。
このままではまどかか美樹さやかのどちらかが契約してしまうか、そうでなくとも死んでしまう。
『魔女が出ました』
『さっきから2011年最悪の瞬間を更新し続けているね』
『こんなに運が悪いのは
全くだ。この数分間は何もかもが上手く行っていない。
いつか誰かが、希望と絶望は差し引きゼロだという話をしていたのを思い出す。
今回のこれも、差し引きゼロになれば良いのだが。
使い魔を始末しながら、二人のおおよその位置を突き止めようと魔力の反応を探る。すると、使い魔が集結しつつあるのともう1つ、良く知った魔力の反応を検出した。
「……巴マミ」
『逃げられた二人がマミさんに救助されました』
『間一髪と言いたいところだけど状況は何も変わっていないしむしろマミさんと敵対する可能性が濃厚になってきたね』
巴さんはあっという間に使い魔を薙ぎ払ったらしく、魔女は退散したようだった。
結界が晴れると、想像していた通りの光景が広がっていた。
キュゥべえを抱えたまどかと、美樹さやか。そして、魔法少女姿の巴さん。
「魔女は逃げたわ。仕留めたいなら直ぐに追いかけなさい」
「今回はあなたに譲ってあげる」
『コイツは使い魔に絡まれていた下級生を助けだして不審者も穏便に追い出そうとする人間の鑑こと巴マミだね』
「私が用があるのは」
「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの」
言葉を遮られる。
……できるかぎり、巴さんとは事を構えたくない。かつての恩もあるが、そうでなかったとしてもこの人は強すぎる。
「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
これ以上居座れば、本当に巴さんと戦わなければならないかもしれない。いやなものが背筋を走る感覚がした。
『コイツは圧倒的な強者の風格で戦わずして勝つ伝説の豪傑こと巴マミだね』
『こちらは千一卜を使っているも同然ですが向こうは実力で対抗してくるだけのポテンシャルがあります強すぎ!』
『更に言うと後のワルプルギスの夜戦でマミさんが抜けているとほとんど負けが確定するので勝てる見込みがあったとしても最強魔法少女マミさんと戦ってはいけない』
『外伝作品が出るたびにどんどん強さを盛られていって現代魔法少女最強格と言ってもあながち間違いではないのがマミさんだね』
……最後の方はよく分からないが、幻聴という形で巴マミという魔法少女の能力の高さを再認識する。
今は、手の出しようがない。
私は大人しくその場を去るしかなかった。