魔法少女まどか☆マギカ(犬)   作:ヴィンデール

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もう初投稿も怖くない


魔法少女まどか☆マギカ(犬).mp3

『なんとか心象を回復できたので続きやります』

 

『今回はマミさんとほぼ敵対してたのを雰囲気で誤魔化したところからだね』

 

 あれから一晩が経った。

 教室に入ると、まどかと美樹さやかの2人がこちらを見る。まだ警戒はされているものの、昨日よりかは軟化しているようだ。

 

『昨日の一件はなかなか効果があったようですまだ希望はある!』

 

『とはいえ一番重要なのは鹿目(しかまなこ)まどかの契約阻止だからここからでも即死があり得るね』

 

『わちゃわちゃした雰囲気に満足している隙に契約されたらそれこそ本末転倒(もとすえころだおし)なのだ視聴者(しちょうもの)よ』

 

 もとすえころだおしが何なのか考えて、しばらくして本末転倒の事だと気づく。何故いちいち、そんな変な読み方をするのだろう。

 あくまでも目的はまどかの契約阻止だ。もちろん、それを忘れたわけではない。

 このままだと、まどかは巴さんに━━━魔法少女に憧れを募らせ、契約を選択してしまうだろう。

 それを阻止するなら、巴さんを止めるしかない。

 巴さんに対し、魔女退治にまどかと美樹さやかを巻き込むのをやめるよう説得するなら、警戒の緩んだ今がチャンスかもしれない。

 

 

 昼休みになり、私は3年生の教室に向かう。

 2人で話をするなら、このタイミングしかない。

 

「あら、暁美さん」

 

 丁度、巴さんが教室から出てきたところと鉢合わせる。

 

『孤独を募らせていることをネタにされることがあるけど本当に1人で出てきたね』

 

『よくボッチだなんだと揶揄されていますが一般人の友達は結構います今回は運が良かった!』

 

 いくらなんでも、友達の1人くらいは居るだろう。

 そう思ったが、よく考えると今の私に友達と呼べるほど仲のよい人は居ない。

 これまでの私にしても、ほとんどの時間軸で魔法少女以外の人と仲良くしたことはなかった。

 そう考えると、巴さんは器用な方なのだろう。

 ただ、それで魔法少女の孤独を紛らわすことはできなかったようだ。

 

「……何の用かしら?少し、急いでるのだけど」

 

『あれ昨日の一件で和やかな雰囲気になったはずなのになんだか怒ってるような感じですあれあれ』

 

『こいつは食事の時間を邪魔されると怒る食いしん坊こと巴マミだね』

 

 それはない。

 とはいえ、口調や言葉使いに棘を感じる。

 私の感じた手応え以上に、警戒は緩めなかったのか。

 もしくは時間が経って冷静になったか、あるいは━━━

 

「話があるの。大丈夫、時間は取らせないわ」

 

「わかったわ。それで、何かしら」

 

「2人を、魔女退治に連れ回すのをやめてほしいの」

 

「やっぱり……キュゥべえの言った通りなのかもね」

 

『先手を打たれていました』

 

『恐らくキュゥべえからなにか吹き込まれて警戒心を取り戻したと考えるのが妥当だね』

 

『考えられる言い分はグリーフシード目当ての魔法少女だからマミさんとはスタンスが合わないだとか取り分のために後ろから忍殺されるぞとかでしょうか』

 

 そういうことか。

 キュゥべえからすれば、まどかとの契約を阻止してくる私を排除したいのは当然だ。つまり巴さんと私の関係が悪いままの方が、奴には都合がいい。

 巴さんにとって、キュゥべえは何年も共に過ごした仲だ。何を言われたにしろ、キュゥべえの方を信用したに違いない。

 

「あの子達は、何の関係もない一般人よ。魔法少女の戦いに巻き込むことがどれだけ危険なことなのか、あなたにも分かるはずでしょう?」

 

「けど、キュゥべえがあの子達を選んだのも事実よ。彼女達には選択する権利があるはずだわ」

 

「もし1人で戦うのが寂しいなら、私が一緒に戦う」

 

「……ごめんなさい。あなたをどこまで信用していいのか、分からないの。一昨日キュゥべえを襲ったのも、あなただったわよね?」

 

『インキュベーターを捕獲しなかった弊害がこんなところで出てきました』

 

『マミさん視点だと暁美(あかつきうつくし)ほむらは友達を銃撃した凶悪犯だね』

 

 ……駄目だ。今のままでは巴さんを説得するのは無理だ。

 もっと信用を勝ち取らなくてはいけない。けど、どうやって?

 

「……あなたが2人を危険な目にあわせていること。それだけは覚えておいて」

 

「嫌な、言い方ね。忠告はありがとう、気をつけるわ」

 

『こいつは言い返せなくなるとすぐに話を切り上げるレスバ弱者こと暁美(あかつきうつくし)ほむらだね』

 

『出てきた言葉が黙りなさい消えなさいじゃなかっただけ褒めてあげましょう』

 

 現状ではもうどうにもならないのだから、仕方がないだろう。

 巴さんと別れ、しばらく思案する。

 キュゥべえがいる以上、口先ではどうしようもない。なら、行動で敵ではないことを示す必要がある。

 

『マミさんと友好的な関係を築くのは若干手遅れ感があるね』

 

『こちらがアクションを起こすたびにインキュベーターからなにか吹き込まれていくのではもうどうしようもありません』

 

『これ以上鹿目(しかまなこ)まどかがマミさんの影響を受けないようにするにはマミさんがマミるのを祈るしかないね』

 

『マミさんがマミればある程度は凌げますがその後が怖いのでできれば起こってほしくありませんが背に腹は代えられません祈祷力が試される!』

 

 マミる?

 どういう意味なのだろうか。

 

 巴さんに関連する言葉なのはなんとなく想像がつくが、その意味はよくわからない。

 巴さんがしそうなこと。お菓子作りかなにかだろうか。でも、それでは意味が通らない。

 

『あっそうだここでいう祈祷力とは祈る方の祈祷力であって決してちんちんの先っぽの力というわけではありません』

 

『ちんちんの先っぽの力でもなんとかなるかもしれませんがその場合R-18になってニコニコとyoutubeの両方からBANを喰らいその後の人生をブタ箱で過ごすことになります』

 

 ……幻聴をあてにするのはやめよう。

 真面目に考えていたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

 

 

 それから数日、何も進展のないまま時間だけが過ぎていった。

 巴さんは相変わらずまどかと美樹さやかを連れて魔女退治を行っており、私は先んじて魔女を倒すことで妨害を試みているが、今のところうまく行っていない。

 

 見滝原は絶好の狩場だと、どこかで聞いた覚えがある。

 魔女が多すぎて数体減らしただけでは、巴さんの魔法少女見学ツアーを止めることは難しかったようだ。

 ただ、流石に毎日という訳にもいかないのか、今日は別行動をしているらしい。

 

『打つ手がなさすぎて遊んでいるように見えますが実際遊んでいるようなものです』

 

『皆大好きあのイベントが起こるまでは実質自由時間だけど万が一があるからマミさん一行の動向を探っている状態だね』

 

 最近の幻聴の内容からはなんとなく不穏な雰囲気を感じる。

 先日の話からすると、巴さんに何かが起こるというのか。

 

 幻聴に耳を傾けても仕方がないことは分かっているのだが、つい考えてしまう。

 とはいえ、巴さんは強い。あの人が苦戦するほどの魔女なんて、それこそワルプルギスの夜か、或いは━━━

 

 もう1体、思い当たる魔女がいた。

 出現のタイミングは毎回異なるが、そろそろ遭遇してもおかしくない時期だ。

 

 私は病院に向かって走り出す。

 あの魔女が現れる可能性が最も高いのは、あそこだ。

 

『ここで何かを察知した暁美(あかつきうつくし)ほむらが急に駆け出しました一体どうしたのでしょうか』

 

『何を察知したのかは分からないけど向かう方角には病院があって時系列的にはアニメ本編の3話あたりに相当するね』

 

 

 病院に近づくにつれ、魔力の反応が強さを増していく。

 思った通り、病院にあの魔女が結界を張っているようだった。

 

 やっとの思いで病院に着き、改めて魔力の反応を探る。 

 やや微弱だが、魔女の魔力とは別に巴さんの魔力も感じる。中の魔女を刺激しないよう、あえて変身していないのだろう。

 

 つまり、戦闘も起こっていない。

 間に合ったという事だ。

 息を整える間も惜しんで結界に侵入する。

 

 

 クッキー、キャンディ、チョコレート。

 結界に入ると、様々なお菓子が乱雑に並び、積み重なり、胸焼けするほどの甘い香が漂ってくる。それなのに、不思議とそれらを食べてみたいと思えないほど不気味な雰囲気が漂っていた。

 

 お菓子の魔女とでも言うべきか。間違いなく巴さんと相性の悪い、あの魔女の結界だった。

 

『ついにやってきましたお菓子の魔女戦です視聴者(しちょうもの)の皆さんも待ち焦がれていたことでしょう』

 

『アニメ本編を見たことがなくてもこのシーンは知ってるでお馴染みのお菓子の魔女戦は良くも悪くも大きなターニングポイントになることは間違いなしだね』

 

 幻聴が示唆していたのもこの魔女の出現のことだったようだ。

 巴さんの戦い方はお菓子の魔女の性質上、相性が悪い。2人がかりか、私1人で倒してしまうかしなければ、彼女の命が危うい。

 幸い、結界は一本道だ。道なりに進めば追いつけるはずだ。

 

 歩みを進めると、案の定巴さんの後ろ姿が見えた。そして、同行するまどかの姿も。

 今日は別行動をしていたはずだが。まどかが結界を見つけて巴さんを呼びだしたのだろうか。

 

 そんなことを考えていると、巴さんがこちらに振り返り、私の存在に気付いた。遅れて、まどかもこちらを向く。

 

「暁美さん?」

 

「……巴さん」

 

 巴さんに追いついて、どう説得するのかまでを考えていなかった。どうしよう。

 

「今回の相手は、今までの魔女とは話が違うの。一緒に戦わせて欲しい」

 

「どうして、そんなことが分かるのかしら」

 

『数日前に説得に失敗してからまともに話していないので好感度は変わっていないかむしろ下がっています』

 

『まぁまぁ嫌な言い方で忠告してそれっきりだったからか心なしか警戒度が上がっているような気がするね』

 

 説得は難しいからと、距離を取っていたのが仇になったかもしれない。

 しかし、それでもここでやめるわけにはいかなかった。

 

「この魔女とは以前にも戦ったことがあるの。強敵だったわ」

 

「そうなの?この魔女、まだグリーフシードから孵化しかけだって聞いているのだけれど……」

 

『やらかしました』

 

『暁美(あかつきうつくし)ほむらは知る由もないことだけど美樹(うつくしじゅ)さやかと鹿目(しかまなこ)まどかが見舞いの帰りにたまたま孵化しかけのグリーフシードを発見したことでマミさんが召喚されているね』

 

 そうだったのか。

 しかし、使い魔は成長すると元の魔女と全く同じ魔女になる。

 同じ魔女が複数存在することについて破綻はしていないはずだ。

 

「都合よく孵化しかけのグリーフシードがあって、その魔女の情報を都合よくあなたが持っている。偶然にしては、出来過ぎだと思わない?」

 

 反論しようとしたが、そんな猶予はなかった。

 巴さんが手をこちらに翳した瞬間、私の身体はリボンに縛られ、全く身動きが取れなくなっていた。

 

『糸をなんとかしろォ━━━━━━!』

 

『満を持して登場したマミさんの固有魔法はリボンの生成で見て分かる通りアラネアや侵略生物βとは比べ物にならない程凶悪な性能を持っているね』

 

『拘束だけでなくリボンで別の物を作ることもできて普段マミさんがぶっ放している銃もリボン製です』

 

『後々リボンで本物そっくりのデコイを作ったり列車砲を作ったり戦艦を作ったりする正真正銘の化け物こと巴マミだね』

 

 両耳がやたらと騒がしいが、こちらはそれどころではない。

 

「何をっ……こんなことしてる場合じゃ……!」

 

「私たち、先を急いでいるの。大人しくしてくれれば、ちゃんと後で解放してあげるわ」

 

 そう言って、巴さんは先に進んでしまう。

 まどかは心配そうにこちらを見ていたが、結局巴さんに同行していった。

 

 私は、1人取り残された。

 

 

『穏当な切り口で協力を申し出たと思っていましたがそれが逆にマミさんの逆鱗に触れました』

 

『結局何が正解なのかは分からないけどこれが最悪に近い結果なのは明らかだね』

 

 幻聴が反省会を促しているように感じる。

 だが、どうして分かってもらえないのか、どうして信じてもらえないのか。私にはそれが分からない。

 

『このまま順当にいけば鹿目(しかまなこ)まどかが魔法少女になる決心を固めた後にマミさんがマミるね』

 

『マミさんがマミらずにそのまま勝つ可能性もなくは無いですが浮かれに浮かれたマミさんは残心を忘れてそのままDIEします』

 

 お菓子の魔女は人形のような形態と、巨大な蛇のような形態を持つ。

 初めの形態である程度の攻撃を受けると次の形態に変化し、不意打ちを仕掛けてくる性質を持っており、とどめを大技にすることにこだわりを持つ巴さんとは相性が悪い。

 しかも、未来の後輩が見ている中で、見栄え良く決めようとしているなら、間違いなく返り討ちにされてしまうだろう。

 

『しかしここまで来たらそのままDIEしてもらう方が都合が良いですなぜなら勝ってしまうとまどかが契約してしまうから!』

 

『鹿目(しかまなこ)まどかが契約すると即時ゲームオーバーだから最悪マミさんは見捨てても良いという考えだね』

 

 ……何を言っている?

 確かに、巴さんとまどかを天秤に掛けたのなら、間違いなくまどかに傾くだろう。

 巴さんとまどかのどちらかしか救えないというのなら、間違いなくまどかを選ぶだろう。

 私にとって、あの子は━━━あの子との約束は、私のすべてだ。

 

 でも。

 でも、それは、救えるかもしれなかった巴さんを見殺しにすることを良しとするわけではない。

 

「そんなこと……言わないで……!」

 

 私の頭が、無意識にでも巴さんが死んだ方が都合が良いなんて言葉を発した事実を受け入れられず、気付けば幻聴に向かって怒りの声をあげていた。

 

『あれ今の発言は何でしょうここには暁美(あかつきうつくし)ほむらしかいないはずです』

 

『考えられる可能性があるとすれば何者かがテレパシーで煽ってきたかプレイ中の投稿者の発言が聞こえているかのどちらかだね』

 

『テレパシーだとすればテレパシーで返せばいいだけですあれあれあれ』

 

『こいつはいたいけな女子中学生が聞いているのにずっとうんこちんちん言っていた人間の屑ことプレイ中の投稿者だね』

 

『ちがちが違がが違うんです』

 

 様子がおかしい。

 自分の頭の中にしかいない声に自分で反応したことの、一体何がおかしいのだろう。

 ……十分におかしいか。私はもう、駄目なのかもしれない。

 

『あまりにも精神性がストーム1でした民間人や不死属性NPCにC爆を付けて敵に突っ込ませて爆破したり味方の隊長NPCを謀殺して部下を指揮下に入れるのと大体同じ精神性でプレイしていました』

 

『爆破といえば暁美(あかつきうつくし)ほむらも爆発物を扱えるね』

 

 左側から聞こえてきたのは何のことか分からないが、右側から聞こえてきた内容は分かる。

 私は魔法少女としての武器を持っていないため、銃器の他にも、自分で作成したり自衛隊から拝借した爆弾を盾に収納している。

 

 そうだ、これを使えばもしかしたら━━━

 

『暁美(あかつきうつくし)ほむらが突然盾から爆発物を落とし始めたね』

 

『待て早まるんじゃないそんなことをすれば君の人生もここまでなんだたのむ考え直してくれ』

 

 変身して、辛うじて空いたリボンの隙間からなるべく衝撃に弱そうな爆弾を落としていく。

 うまく行けばこれで━━━

 

 ━━━そう思った瞬間、目の前が真っ白になった。

 

『う わ あ あ あ あ あ あ あ』

 

 左側が何か言っているようだが、激しい耳鳴りに襲われてうまく聞き取れない。

 ソウルジェムを中心に魔力で防御したが、爆音のことを考慮に入れていなかったせいで、頭が割れそうなほど痛い。

 防御の甘かった脚部は魔法少女の頑丈さを持ってしてもズタズタになってしまっているが、今は最低限の治療で済ませて立ち上がる。

 

『自分ごと爆破してしまうことで拘束から脱することができたね』

 

『これはまさしく赤蟻羽蛙に噛みつかれた時に手持ちに爆発物しか無かった時の脱出法です』

 

『こうならないように常に普通の銃を持ち歩ければ良かったのですが一般中学生がそんなことをすると即座に銃刀法で逮捕されてしまいます』

 

 リボンの端切れはまだ消えずに残っている。

 巴さんはまだ生きている。

 

 全身に痛みを覚えながら、それでも私は走り出した。

 

 

 盾を操作し、時間を止める。

 世界から色彩が失われ、巴さんも、観戦していたまどかと美樹さやかも、そして巴さんに今にも噛み付こうとしている魔女も、すべてが停止する。

 

『パート1の冒頭でもちょいちょい使ったけどこれが暁美(あかつきうつくし)ほむらの固有魔法の時間操作だね』

 

『いろんな媒体で時間停止の能力が出てきますが、暁美(あかつきうつくし)ほむらのは自分と自分が触れているものが動けるようになります』

 

 盾から銃を取り出し、横合いから魔女に向かって撃ち込む。

 発射された弾は空中で停止し、再び時間が動き出すのを待っている。

 もう見慣れてしまったが、我ながら不思議な光景だと思う。

 弾倉に込められた分の弾をすべて撃ち尽くしてから、停止状態を解除する。

 

 停止していた弾丸が再び動き出し、無防備な魔女の側面に叩き込まれた。

 魔女は衝撃で大きく仰け反ると、私の存在を認識して狙いをこちらに変えたようだ。

 

「えっ……あ、暁美さん……?」

 

 巴さんも私の存在に気づく。

 呆然としている。無理もない。

 ただ、これなら協力を申し出るより、1人で片付けてしまったほうが早いだろう。

 

「わ、わたし、死んだん━━━」

 

 巴さんが発した状況確認のための質問は、時間を止めて仕掛けた爆弾の炸裂にかき消されてしまった。

 

 グリーフシードが落ち、結界が晴れていく。

 

『倒しました』

 

『マミさんがマミる伝説のシーンは放映されなかったもののマミさん生存でお菓子の魔女撃破とより良い方向に持っていけたね』

 

「マ、マミさんっ!」

 

 物陰にいたまどかと美樹さやかが巴さんに駆け寄る。

 私も、手に入れたグリーフシードを携えて巴さんに歩み寄る。

 

「巴さん、消耗していないかしら」

 

 そう言いながらソウルジェムを確認すると、普段の巴さんからは考えられないほどひどく濁っている。

 死を確信すると濁りが急速に発生するという話をどこかで聞いた覚えがある。そういう事だろう。

 グリーフシードをあてがい、濁りを浄化する。

 

「私……あなたに助けられたのね。ごめんなさい、暁美さんのこと、勘違いしていたわ……」

 

『これで文句なしに味方判定を勝ち取れたと見ていいでしょうもし縄張り荒らしならそれこそ見殺しにすれば良いのですから』

 

『敵だったら見殺しにするところをあえて助けることでこちらがただの縄張り荒らしでないことも多分分かってもらえたね』

 

「今回は間に合ったから良かった。もし私があのままで、あなたがそのまま死んでいたら……」

 

 まどかと美樹さやかの2人に視線を向ける。

 

「あの2人も、死んでいたかもしれない」

 

『おっとここで追い打ちをかけましたマミさんのメンタルを破壊すれば良いという訳でもありません』

 

『2人を連れ回さないように釘を刺そうとしているけどやりすぎるとマミさんが立ち直れなくなって結局DIEするね』

 

 やりすぎてしまったか。

 額に嫌な汗が滲むのを感じながら、改めて巴さんを向く。

 幸い、表情からするに大きなダメージを受けたわけではないようだ。

 予め、2人を連れて魔女退治に行くのは危険だと言っておいた甲斐もあるだろう。

 

「そう、ね。暁美さんの言う通りだった」

 

 そう言って、巴さんは2人の方を向く。

 

「鹿目さん、美樹さん、ごめんなさい。見学は今日限りにしましょう」

 

「あ、謝ること無いですよ。あたしは今まで付いていきたかったから一緒に……」

 

「違うの、美樹さん。私、本当は誰かと一緒に居たかっただけ━━━」

 

『マミさんの独白が始まったね』

 

『アニメ本編だとここからもう何も怖くないしてマミるという一種の様式美が誕生しました』

 

 望んで正義の味方になったわけじゃない。本当は寂しくて、孤独に耐えかねていた。

 寂しさを紛らわせたくて、もしかしたら一緒に魔法少女をしてくれるかもしれないと期待を抱いて、危険なことを承知で2人を連れ回した。

 とても、2人から憧れを向けられていい人物ではない。

 

 巴さんは、大体そんなことを話した。

 

「全てを投げ出してまで叶えたい願いがあるなら別だけど……そうじゃないなら、あなた達は普通の女の子のまま、平和に生きて」

 

「マミさん……」

 

「鹿目さん。ここに来るまでに話したこと、悪いけど無かったことにさせて頂戴?」

 

『これでしばらくの間鹿目(しかまなこ)まどかは契約する理由がなくなるね』

 

『後でマミさんにフォローも入れれば戦力も増強できますもう何も怖くない!』

 

 

 結局、この日はその場で解散した。

 巴さんには少し悪いことをしたが、その分、これからは私が一緒に戦おう。

 事態は確実に良い方向に向かっている。私は、そのことに希望を抱かずにはいられなかった。

 

 

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