きっと、変えてみせるから   作:るべおら

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誤字多いかもしれません。


プロローグ 私は手を繋ぎたい

 

 

お母さん、私を見て

 

 

 

「高町なのは」の死から5年の月日が流れた。

エースオブエースの死は報道を通して瞬く間に世界中に知れ渡り、そこかしこから管理局へ追悼の手紙が届いた。

それ程までに高町なのはは愛されていたということだ。

流行病で倒れた高町なのは。

別に、死に至る病気では無かった。

それが死という結果になってしまったのには、もう一つの知られざる理由があったのだ。

近しい者しか知らない理由…

 

…そう、出産である。

 

高町ヴィヴィオが10の頃、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンは長年の想いを経て結婚し、魔法技術で本来出来ない筈の子宝を授かる事に成功した。

…だが、その技術の成功率はかなり低い。

子宝を授かれたのは正に奇跡と言えただろう。

 

当然、なのはとフェイトは喜んだ。

特にフェイトの喜びようと言ったら無く、周りの人々は仕事中でもニヤニヤしているフェイトにいい加減呆れていたらしい。

もちろん、ヴィヴィオも喜ばない筈はない。

赤子の誕生は多くの人に首を長くして待たれていた。

 

そして、出産予定日の1ヶ月前。

…高町なのはは流行病に苦しめられる事になった。

一転、フェイトとヴィヴィオは猛烈な不安に駆られた。それはそうだ、ただでさえ体力を使う出産時に、流行病で更に体力が奪われてしまったら…

最悪、死に至る。

その可能性を垣間見た瞬間、周りも必死に祈ることになった…

流行病が早く治るようにと。

出産ができるだけ遅れるようにと。

 

だが…だが…

 

結局、周りの祈りも届かず。

1人の可愛い女の子が産まれて。

 

…高町なのはは、亡くなった。

 

 

 

ヴィヴィオは当然深く悲しんだ。大好きなストライクアーツに見向きもせず、母の遺影の前にいる事が多くなった。

そのヴィヴィオは、友人達の必死の励ましに段々と元気を取り戻していく事になるが…

 

フェイトは、ダメだった。

 

塞ぎ込み、誰の目の前にも姿を見せなくなった。

最低限の食事は摂っていた様だが…日に日にやつれ、その嘆きに目も当てられず。

 

深い眠りから目覚めては、最愛の人であるなのはを探した。

そして、また懇々と眠り続けて。

 

…そんな日々が3年程続き、ようやく部屋から出てきたフェイトは、以前と変わらずに優しい笑みを浮かべていて。

管理局にも顔を出すようになった。

それを見た友人、周りの人も「良かった」と大いに安堵したものだ。

 

1番初めに気付いたのは、はやて。

そして直ぐにヴィヴィオも気が付いた。

なのはを吹っ切れたのかと思われていたフェイトが…

実は、全く吹っ切れていないという事を。

あれは、違う。吹っ切れてなどいない。

あの笑みは…自分の心を壊した笑みだ。

狂気に近い笑みだった。

だが親しい者以外、周りはそれに気が付かない…

閃光の帰還として、管理局局員は大いに喜んだ。

 

 

 

…その間、子供は地球の高町桃子に預けられ、元気に育てられていたようだ。

だが、桃子は決してその子供に深く踏み込むような事はしなかった。

ずっとその子に「なのは」そして「フェイト」の2人が両親なのだと教え込み、そしてその子が4歳になった頃、ミッドチルダに送ったのだ。

 

その子供は初めはミッドの文明に大変驚いていたが、それにも直ぐに慣れて姉であるヴィヴィオととても仲良しになった。

 

なのはそっくりの栗色の髪。なのはそっくりの青い瞳。

調べてわかった、破格の魔力量。

間違いなく、2人の子供である証拠。

 

そんな子供と、フェイトの仲は最悪だった。

フェイトは最初こそその子になのはを重ねていたが、それが不毛である事に気付いてからは子供と一切の会話をしなくなった。

 

だが、子供の方は違う。

母であるフェイトに好かれようと必死に会話を試みた。

仕事帰りのフェイトを、桃子直伝のお菓子を作って待っていた。

…だが、それでも。

その子とフェイトの仲が深まることは無かった。

 

産まれる前にフェイトが考えた「高町 瑞葉(たかまち みずは)」。その名前だけが、その子とフェイトの唯一の繋がりだった。

 

 

 

* * * *

 

 

「ヴィヴィお姉ちゃん、聞きたいことがあるの」

 

妹にそう声をかけられ、珈琲を飲みつつテレビを見ていたヴィヴィオはテレビから視線を外す。

ヴィヴィオももう16歳。身長もかつてのなのはを越し、髪の毛も腰以上に長くなった。

だが、その髪をサイドに纏める事は決してせずに、フェイトのように首近くで一つに纏めている。

 

視線を向けた先にいたのは、何より大切な自分の妹。

パッチリとした青い瞳。髪はかつてのヴィヴィオのようにツーサイドアップに纏めてあるが、長さがそれ程でもないせいで幼さがより際立っている。

 

なのは似でありながらフェイトのパーツを持つという反則としか言いようの無い容姿、加えてお姉ちゃん大好きっ子という愛らしさ(ヴィヴィオ目線)。

まあなんというか、そういう子だ。

 

いつも元気な妹が、今は瞳に涙を溜めてこちら見上げている。

一目で尋常ではない状況だと気付いた。

 

「どうしたの?」

 

だから、出来るだけ優しい声音で返す。

 

「…私のせいで、なのはお母さん死んじゃったの?」

 

紡がれた言葉は、刃の様に鋭くて。

 

「…え?」

 

「だから、フェイトお母さんは私を見てくれないの?」

 

違うよ。

そんな訳無い。

 

そう言いたいのに、声が出なくて。

なのはママの事は気持ちの整理をとっくにつけた。

…と言っても、今でもふとした瞬間に寂しくて堪らなくなることがある。

寂しくて悲しくて。

どうして居なくなっちゃったの?なんて。

 

なのはママが居なくなったのは、瑞葉のせいなんかでは決してない。それだけは胸を張って言える。…のに。

 

どうしてか、この時だけは言葉が出なくて。

 

「……っ…ぇ…」

 

目の前で涙を流してしまった妹を、抱きしめる事しか出来なくて。

 

…その時、私がこの子にちゃんと返事をしてあげられてたら…

 

あんな事にはならなかったのに。

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

それから、更に3年後。

 

瑞葉は8歳となった。

親譲りの魔法の才能は開花し、8歳にしてエースと呼ばれる程に成長…フェイトの電気の変換資質、そして珍しい氷結の変換資質のハイブリッドというその才能は留まる所を知らず、局で知らぬ者はいない程で。

人形のように整った容姿は、誰もが羨む程だった。

 

強く、明るく、元気な少女。

 

そんな心優しき少女…瑞葉には夢があった。

望みがあった。

決意があった。

 

「これ…が…」

 

ある日、少女はその悲願をとうとう手にしたのだ。

そう…それこそが、彼女の夢。

彼女の望み。

彼女の…決意。

 

青い、結晶体。

 

「ねぇ、V(ヴィー)

 

いつも側に居てくれる使い魔に尋ねる。

 

「『ジュエルシード』…見つけたよ」

 

「そうだね」

 

瑞葉の使い魔…Vと呼ばれた大きな黒い鳥が優しい声音で同意する。

 

男の、低い声。安心する声。

 

「…Vだけでも引き返して。今ならまだ…」

 

「ミズハ」

 

厳しい声。まるで、瑞葉にそれ以上言わせないとでもいうような、決意の声。

 

「V…」

 

「ミズハが決めた事。ミズハが望んだ事。それなら、僕は君について行くだけ」

 

何時でも、そうなのだ。この使い魔は。

自分に命を救われたからって、いつも身体を張って自分を守って。それが使い魔だ、ってみんな言うけれど…

すごく、それが嬉しくて。申し訳なくて。

 

「…もしかしなくても、これをやったら私達は犯罪者になっちゃうんだよ?管理局に追いかけられちゃうかも…」

 

「…そしたら」

 

言い切る。

黒い翼を広げ、Vは瑞葉に視線を向けて。

 

「そしたら、僕はミズハを守る。僕が、君を追う災厄から守る。(あるじ)、我が主」

 

「…何も、残らないよ?」

 

「うん」

 

「死んじゃうかも」

 

「2人なら。怖くない」

 

「…うん」

 

2人の絆。2人の決意。

 

今から瑞葉がしようとしている事は、立派な犯罪だ。それも、重大な。

 

でも、2人は止まらない。

 

なのはお母さんが生き返らせれないなら、もう、やれる事は一つだけ。

 

待っててね…フェイトお母さん。

 

5歳の時になのはお母さんが死んだ真実を知ったんだ。

ごめんなさい、お母さん。なのはお母さんが死んじゃったのは、私のせいだったんだね。

 

その時から考えてたんだ。

私のせいで…私が産まれたせいでなのはお母さんが死んじゃったのなら。

 

私は…変える。

こんな未来を、変える。

フェイトお母さんが

ヴィヴィお姉ちゃんが

…なのはお母さんが。

 

みんな笑っていられる未来に変える!

 

 

 

 

私が、私なんかが…産まれないように。

 

「…V、行こう」

 

ヴィヴィお姉ちゃんが、もう泣かないように。

 

「僕の命。どこまで君と共に」

 

フェイトお母さんに、あんな悲しそうな顔させないように。

 

「ジュエルシード…」

 

それだけじゃない。

そうすれば、未来を変えれば、桃子さんだって士郎さんだって笑える様になる。

恭也お兄さんも、美由希お姉さんも。

はやてさんやティアさん、スバルさん。

それに、エリオお兄ちゃんやキャロお姉ちゃんも。

 

 

輝く、青き結晶。

 

望みを叶える、願望機。

いや…望みなど叶える筈のないエネルギー体。

 

輝く。

輝く。

輝く。

 

失敗する可能性の方が高い。

第一に、これは名ばかりで望みを叶える事は無い。

 

だが…だが…

 

奇跡か。

 

神のイタズラか。

 

青き結晶は神々しく輝き、その役割を確実に果たした。

 

すなわち、飛ばしたのだ。

時を超えて。

ミズハとVを…過去の世界へ。

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

 

 

 

 

 

 

 

 

…バイバイ、みんな

 

何も言わずに居なくなってごめんなさい。

でも、どうしてもやらなきゃいけない事があるんです。

 

ヴィヴィお姉ちゃん。

エリオお兄ちゃん。

キャロお姉ちゃん。

 

フェイトお母さんに、よろしくね。

 

…一回くらい、フェイトお母さんと手、繋ぎたかったな。

 

もう、会えないと思います。

けれど、きっと…きっと…頑張るから。

 

…行ってきます』

 

 

…送ろうとして、どうしても送れなかったお別れの言葉。

思い出と共に別れも持って行き、瑞葉は…世界を、時間を渡る。

 

きっと…きっとこの悲しい未来を変えてみせると心に誓いながら。

 




始まりました、『きっと、変えてみせるから』
まぁ、王道というか…ありきたりな話ですが、今後ともよろしくお願いします!
おそらく、此方の更新は遅くなると思います。

では、また次話で。
質問、疑問、感想なども受け付けるのでよろしくお願いします。
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