コードギアス 君の知らない、その先へ   作:明日を願う旅人

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10/4の投稿の六話目です。
AIの補助マシマシとはいえ、こんなに出せるんですね...。また2日に1度に戻します。
週末は予定次第。


第13話 残ったピザ

 翌日の夜、ルルーシュは食卓に箱を三つ並べた。成田へ向けた連絡は扇に引き継ぎ、久しぶりに早く帰れた。なのに店の番号を押す指が、自然と注文を増やしていた。

 

「三枚か」

 

 C.C.が箱の数を数える。

 

「お前の分もある」

 

「見れば分かる。ナナリーはもう食べたんだろう」

 

「ああ」

 

 蓋を開けると、彼女はまず一切れを取った。熱いチーズに息を吹きかけ、端から食べる。その様子を見て、ルルーシュは少しだけ安心した。二切れ目に手が伸びるのを見て、余計な心配だったと思う。

 

 だが三切れ目は取らなかった。C.C.は飲み物の瓶を閉め、椅子にもたれる。

 

「もういいのか」

 

「今はな。残りは明日食べる」

 

「そうか」

 

「そんな顔をするほど意外か?」

 

 前の彼女が、この店の景品を貰えるまで何枚頼んだか覚えていた。ぬいぐるみを腕に抱えて満足げにする姿まで浮かぶ。だが目の前のC.C.にとっては、ただ今夜の夕食だ。

 

「注文しすぎた」

 

「私のせいにするなよ」

 

「していない」

 

 C.C.は少し笑い、残った箱を冷めない場所へ移した。彼の手元にある未来を、彼女はまだ持っていない。食卓に余った一枚が、その事実を妙にはっきり見せた。

 

 ナナリーが廊下から顔を出した。もう休むと言ったあとだったが、ピザの匂いに気づいたらしい。

 

「まだお食事をしていたんですね」

 

「一切れいるか?」

 

「少しだけ。咲世子さんには、内緒にしなくてもいいですよね」

 

「夕食の後に何も食べるなとは言われていない」

 

 C.C.が皿を差し出す。ナナリーは慣れない指先で端を確かめ、一口食べた。

 

「お兄様、いくつ頼んだんですか」

 

「三枚だ」

 

「それは多いと思います」

 

「もう聞いた」

 

 ナナリーが笑う。C.C.も口元だけで笑った。二人が並んでいるのを見ると、ルルーシュは未来の旅先の食卓を思い出す。けれどあそこにナナリーはいなかった。

 

「明日の分は私がいただきます」とナナリーが言った。

 

「冷めたものは俺が食べる」

 

「お兄様はそう言って、朝には忘れるでしょう」

 

 C.C.が「そこは妹の方が知っているな」と言い、蓋を閉めた。

 

 * * *

 

 翌朝、C.C.は冷めた一切れを温め直して食べた。ルルーシュが地図を畳む音に、視線だけを向ける。

 

「成田には行かないと言ったな」

 

「騎士団は出さない。今までに知らせた人が逃げられたかは確認する」

 

「お前自身は?」

 

「別のことを考えていた」

 

 ルルーシュは机の上に、施設と人物の名を書いた紙を置いた。バトレー。かつてC.C.を研究対象として扱った計画に関わる男だ。軍の戦力が成田へ集中する間、彼らの居場所を突き止めて確保できないか。前の世界でジェレミアに備わった、ギアスを打ち消す力を思い出していた。

 

「前の世界で、ジェレミアにはギアスの効果を打ち消す力があった。あれを再現できれば、ギアスを掛けられた人間を取り戻せるかもしれない。父上の命令にも対抗できる」

 

「それを、あいつらに作らせるつもりか」

 

「確保した上で、監視して――」

 

「駄目だ」

 

 返事は短かった。彼女は食べかけのピザを皿に戻す。

 

「私の身体で何をした連中か、お前は知っているんだろう。その連中を集めて、もう一度ギアスを調べさせるのか」

 

「君を渡すつもりはない」

 

「それはお前が決めることじゃない。監視して使えば安全だと、本気で思うのか」

 

 ルルーシュは答えなかった。研究者の手が必要だという計算の中に、彼女がその手をどれほど嫌うかを入れていなかった。未来のC.C.なら理由を聞いてから判断してくれる、と考えた瞬間もあった。目の前の彼女に頼んでいる以上、その期待は関係ない。

 

 そもそも、ジェレミアに備わった力がどの研究を経てできたか、ルルーシュ自身はすべて知っているわけではない。バトレーを押さえれば同じものを作れるという保証はなかった。彼らに研究のための人間を渡さずに済む手順も、まだ示せない。

 

「そうか」

 

 紙を折り、名前が見えないようにしてしまう。

 

「この案はやめる。騎士団にも出さない」

 

「……それでいいのか」

 

「嫌だと言われても進めるなら、最初から相談などしない」

 

 C.C.は何か言い返しかけ、止めた。皿の上の一切れを取り、冷める前に食べ始める。

 

「もう準備を進めていたんじゃないのか」

 

「手順を考えただけだ。実行すると決めたわけじゃない」

 

「ずいぶん扱いにくい相談相手を選んだものだ」

 

 C.C.の声は軽くなったが、折りたたまれた紙には触れなかった。ルルーシュも彼女の返事を翻してほしいとは言わない。

 

「研究者を放っておく話とは違うぞ」

 

「分かっている。誰がどこで何をしているか、別に調べる。捕まえて同じ研究を続けさせるつもりはない」

 

 彼女は頷かなかったが、紙を破れとも言わなかった。

 

 ルルーシュは紙を別の封筒へ入れた。研究者たちの名前は、彼らの足取りを見失わないために残す。

 

「バトレー自身が何を知っているかも、分かっていない」

 

「なら、先に知ることだ。だが、私を餌にするな」

 

「しない」

 

 返事をしたあと、ルルーシュは彼女の表情を見た。C.C.は黙ったままだった。

 

 * * *

 

 夕方、倉庫では玉城が紅蓮の前をうろついていた。カレンは整備士から操縦系統の説明を受けている。扇がルルーシュへ近づき、声を落とした。

 

「成田へ行く部隊を作るなら、今夜が最後だ」

 

「作らない。避難の連絡だけ続けてくれ」

 

「キョウトにはどう説明する?」

 

「私が説明する。紅蓮をもらった礼に、戦場まで決めてもらうつもりはない」

 

 玉城は不服そうだったが、整備士の前では口を挟まなかった。カレンも説明書から顔を上げる。

 

「試したくないって言えば嘘になる。でも明日、あそこへ飛び込むためにもらったわけじゃない」

 

「そうだ」

 

 ルルーシュは成田の方角を見た。今頃、軍も解放戦線も警告を受け取っているだろう。自分が戦わなくても、明日そこにいる人々は動く。

 

 帰ると、ピザの箱は一つだけ残っていた。C.C.が昼にもう何切れか食べたらしい。ルルーシュは箱を開け、冷えた最後の一切れを自分で取った。

 

 

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