コードギアス 君の知らない、その先へ   作:明日を願う旅人

30 / 30
第30話 白兜を止める

 艦内の通路で、ルルーシュは工具箱を持ち替えた。

 

 案内役の責任者が前を歩き、C.C.が後ろにつく。行き合う作業員は少ない。入場制限で半数が外されたという報告どおりだった。

 増えた警備の配置は、藤堂と扇が確認を済ませている。事前の会議では、一般作業員が減り、警備が増えた場合の対応まで話をつけてあった。

 軍に知らせるだけなら、ほかにも手はあった。スザクに直接告げたのは、ルルーシュ自身がそうしたかったからだ。

 

 足元から伝わる振動は一定だ。機関の調整は続いているが、艦はいつでも出られる状態に近い。

 艦橋の前まで来ると、警備兵が三人を止めた。

 

「ここへの作業申請はなかったはずだぞ」

 

「機関の確認結果を直接お伝えするようにと」

 

 責任者が答え、ルルーシュを振り返る。兵士の目もこちらへ動いた。

 赤い光がその視線を捉える。

 

「私の指示に従え」

 

 立っていた二人の警備兵が、姿勢を正した。

 ルルーシュは工具箱を床へ置く。C.C.が蓋を開け、仮面を渡した。

 

「殿下は?」

 

「地上の視察棟におられます。帰艦の連絡はまだありません」

 

「よし。扉を開けろ」

 

 仮面を着けたゼロが、艦橋へ入った。

 作業着の肩へマントを掛ける時間はなかったが、黒い仮面だけで十分だった。正面の席にいた士官が立ち上がり、腰へ手を伸ばす。

 

「動くな」

 

 ゼロの後ろから、警備兵が銃を向けた。C.C.は扉の脇へ立ち、外の通路を見張る。

 士官の顔が上がる。ゼロはその目を見た。

 命令を掛け、操艦を担当する者、通信を扱う者へと向き直る。顔を伏せた男には警備兵が声を掛けた。仮面のこちらを見たところで、同じ命令を告げる。

 数分後、艦橋から機関室へ通常の連絡が入った。

 担当者を呼び集めるためのものだ。機関の責任者と、その引き継ぎ要員にも直接会う。艦を動かす者を確保し終えるまで、地上の仲間は待たせた。

 艦橋の端で、外へ通じる回線が閉じられる。

 

 さすがに二度目ともなれば、この力の使いどころも心得ている。

 

 ゼロは受信機へ触れた。

 

「藤堂。始めろ」

 

 * * *

 

 最初の爆発は、南門の手前で起きた。

 路上へ煙が噴き上がり、警備車両が止まる。その横を抜けて、紅蓮が敷地へ滑り込んだ。

 カレンは岸壁へ向かわず、すぐ左へ曲がった。目的地は西側の広場。警備隊の格納庫から出てくる機体を、艦から遠ざける。

 

『左の二機はこちらで受ける。紅蓮、そのまま進め』

 

 藤堂の月下が後ろを横切り、敵のサザーランドへ斬りかかった。

 千葉と朝比奈が続く。南門の無頼が援護射撃を始める間に、仙波と卜部は資材置き場の端へ回り、東の岸壁へ通じる道路を押さえた。

 輸送車が二台、その内側へ入ってくる。荷台にはゲフィオンディスターバーの装置が積まれていた。

 

『白兜が出た!』

 

 カレンは報告より早く、白い機体を見つけた。

 格納庫脇から飛び出したランスロットが、広場を斜めに走る。その先には資材置き場がある。彼が艦へ戻れば、作戦は面倒になる。

 紅蓮は進路へ割り込み、右腕を突き出した。

 白い刃がその腕を避け、肩へ迫る。カレンは車輪を滑らせてかわし、左手の短刀を振った。刃同士がぶつかり、火花がコクピットの画面を散った。

 

「今日は、そっちへは行かせない!」

 

 ランスロットが退く。紅蓮も詰めた。

 右腕を警戒している。ならば、とカレンは大きく見せた右の動きを途中で止め、左から斬り込んだ。

 相手の剣が受ける。押し合いになる前にランスロットが跳び、紅蓮の肩越しに東へ抜けようとした。

 カレンは追いかけず、機体を反転させた。

 東側から卜部の射撃が来る。着地を変えたランスロットの前へ、紅蓮が再び立った。

 

 スザクは画面の端で、月下の配置を確かめた。

 こちらを囲んで押し潰すのではない。艦への道を塞ぎ、広場に留めようとしている。紅蓮も、追えば届く場面で深く踏み込んでこない。

 何かある。

 ランスロットは銃を構え、紅蓮の足元へ撃った。跳び退いた隙を追わず、南側へ方向を変える。

 正面から艦へ戻れないなら、一度外へ出る。

 

『藤堂さん、白兜が南へ!』

 

『分かっている。カレン、右から寄せろ』

 

 紅蓮が並走する。スザクが速度を上げると、南門から来た月下が剣を横へ構えた。藤堂だった。

 その機体を見た瞬間、スザクの指が操縦桿を強く握る。

 紅蓮を背にして藤堂へ向かうか。止まって二機を受けるか。

 選ぶ前に、警告音が鳴った。

 出力の表示が一斉に下がる。車輪が回転を失い、機体が前へつんのめった。

 

「何だ……!」

 

 制御を切り替える。反応がない。ランスロットは片膝をつき、腕を路面へ落とした。

 すぐそばで紅蓮が止まる。だが、こちらと違って滑らかだった。月下も動いている。

 スザクは資材置き場の端を見た。輸送車の荷台で開かれた装置が、こちらへ向いている。

 

 * * *

 

『白兜、停止。乗員は機内です』

 

 カレンの声が艦橋へ届く。

 ゼロは外の映像で、赤と白の機体を確認した。ランスロットのコクピットは開いていない。

 

「そのまま監視。不用意に近づくなよ」

 

『了解』

 

 カレンは紅蓮を数歩下げ、艦への道に背を向けて立った。

 あと少しで、あの機体を右腕で捉えられたのに。

 カレンは動かなくなった白兜を睨み、紅蓮の右腕の出力を落とした。

 

『北側から増援。サザーランド四機』

 

 朝比奈の報告が入った。

 藤堂はすぐ二機を北へ向ける。カレンも身体の向きを変え、ランスロットと北の道路を同じ画面に収めた。

 

 艦橋では、地上の管制から通信要求が繰り返されていた。

 出港の許可は下りていない。指揮官の帰艦前に機関の出力が上がったため、異常を察したのだろう。

 ゼロは艦内の画面へ目を移した。格納庫の黒い機体には拘束具が掛かったままだ。ガウェインの搬出は始まっていない。

 

「格納庫の警備を武装解除。下船を望む作業員は南側の通路へ集めろ。艇で岸へ戻す」

 

 機関を担当する者は残す。命令を掛けていない乗員のうち、抵抗した者は艦内警備に拘束させた。下船する者を通す区画と、仲間を迎え入れる搬入口を別々に確保する。

 C.C.が地上の映像へ顔を寄せた。

 

「兄上がお帰りになるぞ」

 

 視察棟から出た車列が、岸壁へ向かおうとしていた。だが、途中の警備兵が止めている。銃撃の中へ皇族の車を通すつもりはないらしい。

 ゼロは通信席へ指を向けた。

 

「あちらへ伝えろ。アヴァロンは黒の騎士団が接収した。降りる乗員の帰還を妨げなければ、こちらからは撃たない」

 

 C.C.が彼の横で、腕を組む。

 

「丁寧な挨拶だな」

 

「持ち主には断っておくべきだろう」

 

 艦底の振動が、ゆっくりと強まった。

 




今作のルルーシュはギアスを使う機会が多く、C.C.と二人で動く場面も多めです。
前の世界で裏切られた経験はありますが、それでも騎士団の仲間にはなるべく傷ついてほしくない。そんな思いもあって、今回のように自分たちで潜入し、ギアスで先に押さえておく作戦が増えています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

~ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの人生上映会~(作者:上映会を愛するもの)(原作:コードギアス)

▼もし、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの人生を、彼に関わったすべての人々が見たとしたら?▼ある日、アッシュフォード学園の生徒会メンバー、ブリタニア皇族、黒の騎士団、そして既に命を落とした者たちが、謎の映画館へと集められた。▼そこにいるはずのないユーフェミア、シャーリー、クロヴィスたち。▼しかし、上映会の主役であるルルーシュと、彼の親友であるスザクの姿だけはなか…


総合評価:637/評価:6.73/短編:3話/更新日時:2026年10月21日(水) 20:14 小説情報

キラ・ヤマトになってしまった… プラント√(作者:星乃 望夢)(原作:機動戦士ガンダムSEED)

旧『やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか』、現『キラ・ヤマトになってしまった…』のIf√。▼もしもあの日、アスランと一緒にプラントへと引っ越す路があったのなら、世界はどんな風に変わっていたのか?▼ユーラシア連邦がティエレン教になったり、アズラエルが腹黒ヤクザビジネスマンになったり、オーブが世界最強武装中立国家になったり、イングリットがNTRさ…


総合評価:4742/評価:8.4/未完:5話/更新日時:2026年06月10日(水) 09:15 小説情報

よく聞け、いいか、ここをローマ帝国とする!(作者:とくめいのネロ)(原作:コードギアス)

Fate/シリーズより、ネロちゃまをブリタニア皇族にINさせてみたお(^ω^)▼っていう、小説。▼


総合評価:5848/評価:8.42/連載:13話/更新日時:2026年09月18日(金) 17:16 小説情報

コードギアス 転生のルルーシュ(作者:よみや)(原作:コードギアス)

気がついたらルルーシュに転生していた男が、ハーレムエンドを目指して頑張る話。


総合評価:16929/評価:8.66/連載:25話/更新日時:2026年08月12日(水) 21:00 小説情報

気づいたら人生2周目だった方々による「最悪」を避ける物語(作者:もみじししゃも)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼「来世に期待してワンちゃんダイb、、、、、、」▼その瞬間、爆豪に雷が落ちた▼当然比喩である▼「、、、、ワンちゃんダイブなんか言わねぇから体鍛えろ、いいな?」▼「、、、え???」▼爆豪勝己、人生2周目が始まった瞬間だった▼____________________▼複数の人間が、人生2周目やってます▼思い出すタイミングは人それぞれ▼全員が全員思い出すわけではな…


総合評価:3979/評価:8.21/連載:47話/更新日時:2026年10月22日(木) 14:49 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>