「はーい、うちらKKシスターズによるデスゲームやで!」
「私たちが作ったこの謎たちを解けるかな!」
目が覚めたら謎の白い部屋にいた。寝る前の記憶なんかは少し飛んでいる気がするが、自分が結月ゆかりであることは覚えているし、隣にいる少女が紲星あかりであることもわかる。なんなら今画面に映っていた2人が琴葉姉妹であることもわかる。
(そういえば今度コラボ動画撮るって言ってたなぁ。まぁ自分が写らないなら細かいことはどーでもいいか)
私は顔出しどころか姿すら映されることを許可していないが、向こうもそれは知っている。以前も似たような事をされたが、その際は私の全身をわざわざ編集で隠すという脳筋な方法で解決していた。
「そこのゆかり!今回はコラボメンバー全員顔出しNGやから別撮りしたこの部屋の様子だけでゆかり達は立ち絵にする予定やで!」
「あー助かります。……ならリアルで謎用意しなくてよくないですか?」
「いやほら臨場感は欲しいやろ?」
「ゲームマスターがコレな時点で臨場感もへったくれもなさそうなんですけど」
「……せやな!」
豪快に笑う茜さ……じゃなくてKKシスターズの姉の方だっけ。わざわざ言い直すのめんどくさいし茜さんでいいか。画面はアイコンだけだから声で判断するしかないけど100%茜さんだろう。
「ん、んん」
「起きましたかあかりさん」
隣から声が聞こえたので見てみると、あかりさんが目をこすっていた。寝起きのあかりさんを見るのはなんだか新鮮で少し微笑ましく感じる。あ、よだれのあとついてる。
「フキフキ……よし」
「あの、ゆかりさん?」
「あ、ごめんなさいつい」
無意識にあかりさんのよだれの跡を袖で拭っていた。気持ち悪がられるかもしれない。早く弁明したほうがいいかな。
「いや、大丈夫です。こちらこそごめんなさい」
視線をそらされてしまった。嫌われたかも。最悪だ。
「と、ところでここはどこなんですか?」
「実は……」
落ち込んでいると説明を求められたので、現状を伝える。あかりさんは「めちゃくちゃな人なんですね、コラボ相手さんは」と笑っていた。もしかしてそこまで気にしてない?
「って、あ。もう1人あそこにいませんか?」
「ほんとですね……ってきりたん!?」
私たちがベットへ慌てて駆け寄ると同時に、きりたんは目を覚ました。
「あれ、ゆかりさんじゃないですか、お久しぶりです。それとその人は?」
「ああ、この子は紲星あかりさんです」
「どうも!紲星あかりです!」
自己紹介を聞きながら上体を起こし、うんしょうんしょとベッドから降りる。きりたんはあかりさんを見上げて「私は東北きりたんです」と挨拶を返した。
「それでこれはどういう状況ですか?」
「かくかくしかじかです」
「おお、かくかくしかじかって言ってる人初めて見ました。じゃあ早速謎を解いてしまいましょう」
「かくかくしかじかで伝わったんですね!?」
きりたんを先頭に部屋の中央へ行くと、そこには四角く出っ張ったもの(おそらく机だろう)と、その上にはボードと謎の用紙が何枚かあった。
「これが謎ですか……」
ゴクリとあかりさんが唾を飲んでいたが、正直私レベルになるとこれくらいお茶の子サイサイだ。フッと不敵な笑みを浮かべてカッコよくキメてやるぜ!
「きりたん、任せましたよ」
「えっ、今めちゃくちゃわかりそうな雰囲気出してませんでしたか?なんでわからないのにそんな堂々としてられるんですか?」
「ゆかりさん……すごい……かっこいい……!」
「紲星さんは盲目にも程がありませんか!?」
きりたんはその後も「頼りにならない大人たちですね」とボヤいていたが、分からないものは分からないのだから仕方がない。それにひらめき力はきりたんの方があるし、知識で詰まったときに手を貸す程度で良いだろう、うん。
「ゆかりさん、これの名前なんですか?」
「それはバランですね」
きりたんが指を差したのはお寿司とかについてくるギザギザの草だった。ああいう正式名称分からない系の物ってそのネタ擦られ過ぎてもはや正式名称分かり過ぎる系だよね。
「じゃあ答えはそれぞれ1問目が『種』、2問目が『ドローン』、3問目が『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』ですね」
「3問目知識問題ですよね……私達の力要らずって……」
「ゆかりさん、私達いりますか?これ」
要らない子になった私達が苦笑いで見守っていると、悔しがる声がモニターから聞こえてきた。
「いくらなんでも早すぎるやろ……!動画の尺どないしてくれんのや……!」
「後で別撮りで解説パート送るんで許してください」
「あ、ほんま?ならええわ」
「デスゲームにしてはノリ軽いですね」
あかりさんのツッコミはゲームマスターには届かず、何事もなかったかのように画面が切り替わった。私はそんな中、反応がなくてしょげているあかりさんの頭をポンポンしていた。
「ほなSTAGE1はクリアや!そのまま次の部屋へ進め!」
こうして第2、第3の部屋をどんどん突破していくきりたん。途中途中でただの謎解きではなく部屋そのものも謎の一部になっていた。その時は身長の足りないきりたんの代わりに、元気いっぱいなあかりさんが動き回っていた。
きりたんが謎を解き、あかりさんが動き、私が応援する。完璧な布陣だ。
「1人何もしてない人いますね」
「うるさいですよきりたん」
「どうしようお姉ちゃん!もう最終問題だよ!」
「安心せえ葵!最終問題は超難問を用意してもらっとる!」
もう葵って言っちゃってるし。にしても超難問か。きりたんでも無理だとヒントをもらうしか無さそうなのだが、どうなることやら。
「最後はこれや!」
茜さんの言葉と共にモニターの画面が切り替わる。長々と文章が書かれていたりクロスワード?みたいなのがあったりと、私には到底理解できるものではなかった。
「今回茜さんと葵さんが用意した謎、クオリティものすごく高いんですよね」
「……?そうですね、よくわからない私でも見てて感嘆の声漏れちゃってますね」
「はいはい、私もです!」
「ということはやることは1つです!」
そう言ってきりたんは床にこれまでの問題をぶちまける。ツルツルとした床を紙たちが滑っていく。突然の奇行に私は戸惑ったものの、きりたんのことだから狙いがあるのだろうと判断した。
「きりたん、何か思いついたんですね」
「いえ。思いついてはいません。ただ、ここまでレベルが高い謎解きなのであれば、最終問題はこれまでの答えや問題用紙、部屋なんかを使って解くんだろうなと。メタ推理ってやつです」
「あー、九九の9の段のボスラッシュ感的なやつですか?」
「まぁだいたいそんな感じです」
「どんな感じなんだ……?」
あかりさんの例えがあまりピンと来ておらず、私は困惑した。その様子をあかりさんは見たのか、懇切丁寧にどういう意味かを教えてくれた。
「なるほど!確かにそれっぽいですね」
「分かってくれてよかったです」
解説してもらってから気付いたが、例えの解説って相当な羞恥プレイなんじゃないか?あ、あかりさん耳赤くなってる。酷なことさせちゃったなぁ。
「解けました。答えは『HOPE』……つまり『希望』ですね」
私が説明されている間……ものの数分できりたんは答えを言ってしまった。これ本当に動画の尺大丈夫なのだろうか。
「………正解や!」「おめでとう、きりたんちゃん!」
茜さんの悔しがる声と葵さんの楽しそうな声が同時に聞こえてくる。双子と言っても反応がこうも分かれるものなんだな。
最後の扉を開けるとそこには生身の琴葉姉妹が待っていた。
「こんな早く解かれるとは思ってなかったわ」
「すみませんねぇうちのきりたんが優秀で」
「なんでゆかりさんが得意げなんですか。まぁ悪い気はしませんね」
「ふふっ。あ、ところでここってどこなんですか?」
あかりさんが琴葉姉妹に尋ねる。そういえば私も気になっていた。ここまで大きな舞台を揃えるとなるとどこかのスタジオかな?とは思ったが、空にしても部屋は殺風景すぎたし。今いる部屋にも窓ないし。
「ああ、ここがどこかやな。ここはな……」
茜さんがパチンと指を鳴らすと、ギギギと大きな音をたてて壁が四方に倒れていき、木漏れ日が私たちを照らす。
思わず目を閉じてしまったが、ズシンと音が鳴り完全に周囲を見渡せるようになる頃には、目も慣れていた。
絶句した。周囲は荒野だった。馴染みのない景色だが、ある意味では想像上の荒野として馴染みはあるかもしれない。
「てことでうちら異世界転移したわけやから、さっさと世界救って帰るで!」
「なんつーオチですか!?」
「あ、もしもしセイカさん?なんか異世界に転移しちゃったみたいで……はい、はい。なので今日の晩御飯は……はい、そうです」
「異世界って電波届くんですね」