「弦巻先輩、あかりちゃんと結月先輩の関係についてどう思われますか?」
次のプログラムは借り物競争。現在行われている部活対抗リレーが盛り上がる中、私とりりせちゃんは別の話題で盛り上がっていた。
「ゆかりんとあかりちゃんか……仲いい姉妹みたいな側面が大きいかなぁ」
「ふむ、なるほど」
りりせちゃんなにか考え事をしているようだ。何か企んでるのかなと思いじーっと見つめていると、私たちの間にひょっこりと女の子が現れた。
「ち、な、み、にぃ〜。2人は互いに特別な感情を抱いてる様子は見受けられるわよぉ」
「うわぁ!そらさんいたんだ」
現れたのはそらさんだった。笑顔で優しいお姉さんみたいな風貌なのにこうしていたずらっぽい事を頻繁にするところにギャップを感じる。にしてもちょっと気になること言ってたね。
「えっと……
「あら、そら先輩でいいわよぉ?」
「ではそら先輩、先程の話は」
「あらあら、そらちゃんでいいわよぉ」
「なるほど、ではそらちゃんの話を……」
「年上を急に呼び捨てにする子には教えられないわぁ!」
「自分で振っておいて!?」
ガビーンとショックを受けるりりせちゃん。所作とか話し方から真面目さが伝わってくるし、そこに目をつけてイジってみたんだろう。そらさんめっちゃ楽しそうな顔で微笑んでるじゃん、こわ〜。さすがに助け舟出すか。
「で、そらさん。話戻してもらっていいかな」
「ごめんなさいね。あの2人、抱いてる感情が何なのかは分からないなりに特別に思っているってのには気付いているみたいなのよねぇ」
「なんと、結月先輩もでしたか」
「ええ。2人とも好きな子と目が合っただけでドギマギする小学生男子みたいな反応ばかり見せてるわよ」
「そこまで酷くないんじゃ……そうとも言い切れないか」
思い当たる節が多すぎる。ゆかりんが人を好きになるところとか見たことないし、恋愛初心者なんだろうな。いや恋と決めつけるのはよくないか。
そんなことを考えているとアナウンスがグラウンド中に響いた。どうやら部活対抗リレーは決着がついたみたいだ。
「さて。この話はまた後でしようか」
「そうねぇ〜」「ですね」
後に私たち3人の集まりの名前を「ゆづきず見守り隊」と命名したのだが、それはまた別のお話。
◆
やぁみんな。私は宮舞モカ。天才的美少女名探偵(美少女)な私は体育祭に勤しんでいるのさ。ま、私のような実力者がその力を発揮し過ぎるとワンサイドゲームになりかねないからね。出る競技は団体競技の綱引きと玉入れにしておいたよ。大縄跳びは重圧が……っと違う違う。私の力が有り余って縄が追いつかないのさ。やれやれ、困ったクラスメイト達だ。
そうそう、クラスメイトと言えば。今日も今日とて私の美貌に恐れ慄き誰も近寄って来ないのだ。私としてはこうしてゆっくりティータイム(水筒に紅茶を入れておいた)が出来るから願ったり叶ったりだ。……ま、まぁ?その辺の男子は私と同じクラスになれた記念で私に話しかけたりしてもいいと思うんだがね?私に話しかけたという事実だけで数十年は語れる武勇伝なのだから。
『次は借り物競争です』
ふむ、借り物競争か。可愛い子なんてお題が出たら真っ先に群がられて困るだろうな。やれやれ、不本意だがその時は覚悟を決めて走るしかないか。
おっと、第一走者が走り始めたようだ。露骨に待っていては格好がつかないから平然を装おうとするか。
……。
………。
……第三走者まで終わったな。まぁ私に合うお題がなかったんだろうね。おや、もう第四走者のスタートか。体育祭の予定押しているのかな?
ん?女の子がひとりこちらの方へ向かって来るぞ?まさか私が───。
「あかりちゃん!来てください!」
「えっ私!?りりせちゃん、お題何なの?」
「親友!」
……。す、素晴らしい友情を観れた気がするよ。あかりと呼ばれた子が連れて行かれた時、紫と緑の髪の2人が目頭を抑えていたし、どうやら隣のクラスは友情を重んじているようだね。やれやれ、こちらの目頭も熱くなるよ。……熱くなってるのは目頭だけだから、顔は熱くないから。
さて第五走者か。先程の親友コンビは1位を取れたようで良かった。はっ、また1人こちらへ向かってくる少女が……!今度こそ私の出番か───。
「ゆかりちゃん、来てくれるかしらぁ」
「えぇ……走りたくないんですけど」
「『頼れる後輩』ってお題なのよぉ」
「しょーがないですねぇ!今回だけですよ!」
…………。そのー、あれだね。ある意味着飾らない良い関係性みたいじゃないか。きっと隣のクラスは上っ面だけの関係を持たずに心の底から打ち解け合っているんだろう。そうに違いない。でないとこんな優しそうな子達がそう集まるわけが……。
いや待て、あかりと呼ばれた子とゆかりと呼ばれた子のはちまきの色違ったよな?というか体操着の色違う……あかりという子は1年生じゃないか!なんでいるんだよ!やれやれ、私のような天才美少女名探偵様でなければ気付けなかったトリックだね。あ、ゆかりって人はドベっだったのか。そんな日もあるさ。
さていよいよ最後、第六走者。ここまで来ると1つの結論が出るな。そう、全校生徒が私のこの美貌を前にして話しかけられないのだろう。参ったな、私が美人すぎるせいで周りに迷惑をかけてしまうとは。私の可愛さが恐ろしいよ。
今回もこちらに向かってくる少女が1人いるな。ま、私には話しかけれまい。競い合う姿を紅茶を嗜みながら見物させてもらうとするよ。
「モカちゃん!来て!」
「……へ?え、わ、私?」
こちらに向かってきていたのはマキちゃんだった。周囲のクラスメイトがどよめく。私とマキちゃんの世界三大美女の2人が揃ったのだから仕方あるまい。……じゃなくて!
「え、えー……こ、困るなぁ」
「困ってていいから来て!」
マキちゃんは腕を伸ばし私の手をぎゅっと引っ張る。油断していた私はそのまま立ち上がり、走り出したマキちゃんに引きずられまいと足を動かすのみだった。
「はぁ……はぁ……あ、あの、マキちゃん、おだ、お題は何だったのかな……?」
ぜーはーと肩で呼吸をしながら私は尋ねる。流石マキちゃん、私より速く走りきったというのに全く息を切らしていない。完璧美少女にもほどがあるぞ君は。……中々教えてくれないな。
聞こえていなかったのかと思いもう一度同じことを言ってみたが反応がない。いや、確かにこちらは向いていないが、身体はビクッと反応していた。聞こえているが無視していたりするのだろうか。こうなると書かれていた内容がめっぽう気になる。
「すきありっ!」
「ああっ!」
隙を突いてお題の紙を奪う。取り返そうと躍起になるマキちゃんの腕を華麗に躱し、私は書かれた内容を目にした。
『趣味が合う大切な友達』
「……へぇ、マキちゃんはこう思ってくれていたんだね」
「う、うるさいなぁ……紅茶とかスイーツとか、好みが合う子って考えたら真っ先に思い浮かんだのがモカちゃんだったの!」
「ふふっ、そうか。だが私はとても嬉しかったよ」
「……私も、そう言ってくれるなら嬉しいよ。あーあ、面と向かって友達っていうのは恥ずかしいんだけどなー!」
わざとらしく腕を頭の後ろで組んで言葉にするマキちゃん。私もああは言ったものの、結構恥ずかしい。そうか、友達か。なんだか嬉しいようで、先程親友の2人を観たせいか、もっと欲しいとも思ってしまった。もちろん、それは口に出すことなく体育祭は終わりを告げた。
「あらぁ〜」
「へぇ、弦巻先輩も中々良いですね……」
「そらさんなにやってるんですか?」
「りりせちゃん早く戻ろ?ずんだシェイク飲みたいんだけど」