ボイロ荘の百合コメ記録   作:涼川奈緒

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※宮舞モカの意見です


その34 デート中に知り合いカップルとかち合ったらどうするかって?決まってるさ、向こうのラブラブ具合を聞いてトキメキを感じつつ私たちも自慢するのさ!

「「あ」」

 

 私、宮舞モカはマキちゃんとデートをしていた。そんな素晴らしい日の、ちょうど太陽が頂点に達した頃。ファミレスへ向かう途中にマキちゃんが女の子を見て足を止めていた。

 2人ともマキちゃんの知り合いだと思うが、その中でもおそらくだがこの紫髪の少女は結月ゆかりだろう。聞いていた外見と一致する。白いシャツにクリーム色のカーディガンを羽織り、下には黒のワイドパンツ。ふわっとサイドで纏めてる髪と合っていて可愛らしく見えるね。ま、私とマキちゃんほどでは無いけど。

 

「マキさん、その人が宮舞さんですか?」

 

「あー……うん、そだよ。モカちゃん、この子はゆかりん。前に言ったことあるでしょ」

 

「噂はかねがね。宮舞モカだ、よろしく」

 

「よろしくです、宮舞さん。私が結月ゆかりです。お互い色々と聞いてるみたいですね」

 

 ゆかりと名乗る少女は困ったように笑いかける。私がその表情に笑い返していると、小動物のように頬を膨らませる少女が目に入った。白のスウェットにブラウンのサロペットを着ていて、手に持ったソフトクリームも相まって子供らしい可愛らしさが醸し出てる。

 この天才的名探偵オブザ天才美少女たる私の推理では、この2人も私たち同様にデート中だったのだろう。それで私に笑顔を向けた事で嫉妬している……と。

 

「そちらの子は?」

 

「あ、はい。この子は……」

 

「紲星あかりです!」

 

 ゆかりちゃんの言葉を遮り一歩前に出て、その少女は挨拶をした。笑顔がひきつっている。どうやら私の推理は大当たりのようだ。

 

(大丈夫、取ったりしないさ)

 

「えっ!?」

 

 あかりちゃんだけに聞こえるよう小声で耳打ちする。今度はゆかりちゃんがショックを受けていたが、どんだけラブラブなんだか。マキちゃんも少し呆れてるみたいだ。

 しかし紲星あかり、か……。たしかこの子もシェアハウスにいる1人なんだっけか。

 

「ゆかりん達は何してたの?」

 

「あ、これからお昼にしようかと思いまして」

 

「昼時だもんね。そだ、一緒にファミレス行く?」

 

 ちょっと!私に了承を得てから誘わないか!全く、マキちゃんは陽キャが過ぎる。いくら優しくて天才な美少女探偵たる私でもさすがに限度というものが……。

 

「モカちゃんもいいよね?」

 

「もちろんさ」

 

 私はバカか!くそっ、マキちゃんの頼みとなると断れない。まさかこれもマキちゃんの計画の内なのだろうか。いや、いくら私より頭脳明晰とは言え流石にそれはないか。

 

「あかりさんもそれでいいでしょうか?」

 

「はい!人が多いほうが楽しいです!」

 

 あかりちゃんはとても健やかに笑っている。私もあのように明るくなりたいものだね。あ、ただでさえ魅了ズブズブな私がここから明るくなったら皆からの好感度が壊れちゃうか。あはは。

 

 

 そんな事を考えつつ私達4人はファミレスに到着し、各々ドリンクバー付きのセットを注文した。

 

「ところでマキさん達はどこに行ってきたんですか?」

 

「私達は古書店巡りしてたよー」

 

「あれ、マキさんってそんな本読んでましたっけ?」

 

「ああ、私に付き合ってもらってたんだよ。今日のデートプランを何も聞いていなかったから、マキちゃんから伝えられた時はちょっと驚いたさ」

 

「へぇ、デートねぇ」

 

「ちょ、モカちゃん!もー……!」

 

 ニマニマとゆかりちゃんが笑い、マキちゃんは恥ずかしそうに俯く。デートと言っても単なる女の子同士の友情みたいなニュアンスだったんだが……まぁそういう意味でも私はやぶさかでないので否定しないでおいた。

 

「逆にそちらは?」

 

 流石にマキちゃんが不憫に見えたので尋ね返す。コミュ症な割にナイスな立ち回りではないだろうか。

 

「テキトーに街中を散歩して、キッチンカーでソフトクリーム買ったり……?」

 

「あと公園のベンチでお喋りしました!あとおかわり行ってきます」

 

「熟年夫婦かな?」

 

 デートコースが長年付き添って刺激よりもただ貴方と居ることを求める夫婦のソレなんだが……。あ、もしかしてこの2人は幼馴染とかなのかな?

 

「最初の頃はカフェとかショッピングモールとか行ってなかったっけ?」

 

「出会った頃は背伸びしちゃってて、ゆかりさんにオシャレな子って思われたかったんですよ。それはそれで楽しかったんですけど……もっとゆっくりしてたいなって。じゃ、おかわり行ってきます」

 

 言い回しからして出会ったの最近っぽいじゃないか。何なんだこの2人は。いやホントに。……てかさっきからあかりちゃんのドリンクおかわり頻度高いな!ストローで飲みながら帰ってきてるし……待てができない子犬か何かなのかな?

 

「あの……宮舞さん」

 

「ひゃっ。……な、なんだい?」

 

 少し見過ぎたのだろうか、あかりちゃんから話しかけられてしまった。助けを求めるべくマキちゃんをちらっと見やるが、ゆかりちゃんと楽しそうに話していた。助けてくれなくてはいいけど少し妬けるぞ。

 

「宮舞さんって、マキさんのどこが好きなんですか?」

 

「……えっ?」

 

 真剣な眼差しで尋ねられてしまった。思っていたものとは違う言葉をかけられたので戸惑ったが、私はすかさずいつもの余裕を取り繕い、頬を赤くしたあかりちゃんに返事する。

 

「ひと言では言い表せないんたけど……強いていうのであれば八面玲瓏なところかな」

 

 改めてマキちゃんを見たがニヤニヤ笑っていた。どうやら聞こえてしまっていたらしい。が、別に今更隠すことでもないし事実だから気にしないことにした。

 

「はちめ……なんですかそれ?」

 

「意味は色々あるけど、まぁ心も見た目もどこから見ても透き通った美しさがあるって意味さ」

 

「難しい言葉知ってるんですね、すごい!」

 

 私は褒められていい気になっていた。成績こそ悪いが、こういった褒め言葉のレパートリーは人並み以上と自負している。……あ、普通に天才的な美少女なんだけどね?本気を出せばオール満点だけど目立ちたくないだけだからね。

 

「でもどうしてそんな事を?」

 

「え、単なる好奇心です」

 

 キョトンとした顔であかりちゃんはそう言った。なんだか拍子抜けな顔を見せる。

 

「ところで君はゆかりちゃんのどこが好きなんだい?」

 

「んぇーっとですね……ちょっと性格が悪いところもありますけど、でも素直で優しくて包容感があって……あといい匂いもしますよ!」

 

「え、君たちまさかそんなところまで……?」

 

「たぶん違うと思うよー」

 

 マキちゃんが苦笑いしながら横槍を入れてくる。まぁ同居人のマキちゃんが言うならそうなんだろう。ところでこれも本人に聞かれているんじゃなかろうか……と思ったのだが、ゆかりちゃんは「どうしました?」と拍子抜けなことを言っていた。隣にいて聞こえないってゆかりちゃんはどうなってるのかね。

 

「ゆかりちゃん。あかりちゃんの好きなところを教えて欲しいんだが」

 

「ええっ!?」

 

 巻き込んだほうが面白くなりそうだ。予想通りゆかりちゃんもあかりちゃんも顔を真っ赤にしている。マキちゃんもにんまりしている。もちろん私もニマニマだ。

 

「えっと、まぁ……優しいですし、私の趣味にも付き合ってくれますし、食べてる時の顔がすっごく良いんですよね」

 

「あ、わかる!めっちゃ美味しそうに食べてるよね」

 

「そ、そうなんですか!?今から食べるところだっていうのにそんなこと言われたら恥ずかしいじゃないですか!」

 

 恥ずかしがるあかりちゃんの様子に一同は吹き出す。あかりちゃん自身もつられて笑っていた。

 一段落するとタイミング良く料理が届いた。私が頼んだのはチーズインハンバーグ。マキちゃんはラザニア、ゆかりちゃんとあかりちゃんは2人ともナポリタンだ。と思っていたら第二弾が届いた。……第二弾?

 

「え、あの、これ全部……」

 

「うん、あかりちゃんの分。あの子めちゃくちゃ食べるんだよね」

 

 カルボナーラ、グラタン、ピザにポテト……この可憐な少女のどこに収納袋があるのだろうか。いや、それもだがボイロ荘の食費事情はどうなっているんだ……?紲星あかり、末恐ろしい子だ。

 

 

 

 その後満面の笑みで見事に平らげていくあかりちゃんに呆気にとられつつ昼食を満喫し、私達は店を出た。

 

「じゃあ私達はまた散歩します。晩御飯は今日は私が作りますよ」

 

「モカさんもまた遊びましょうねー!」

 

「もちろんさ。また会おう、あかりちゃん」

 

 その場で解散し、元の2人きりのデートに戻る。あの2人と一緒にいるのもそれはそれで楽しかったが、やっぱり私はマキちゃんだけとの空間が好きなようだ。今の方が落ち着ける。

 

「ちょ、近いってー」

 

「ごめんね、マキちゃんが魅力的過ぎてつい引き寄せられてしまったよ」

 

「人のせいにしないの!全く……これから映画だけど起きてられる?」 

 

「んー……起きるのはできるが、スクリーンよりマキちゃんに釘付けになりそうだね」

 

「バカは休み休み言いなさい」

 

「いてっ」

 

 げんこつを食らった頭をなでつつ、私はマキちゃんにトテトテとついて行くのだった。




「そういえば聞いていなかったね、マキちゃんは私のどこが好きなんだい?」

「え、うーん……可愛いところとか?」

「……それだけかい?」

「えっ。あー、自己肯定感が高いところとか、紅茶の趣味が合うところとか……」

「それで?」

「まだいるの!?えぇー……普通に好きだよって言葉じゃだめ?」

「それは致死量に値するからダメだね」

「長々と並べた褒め言葉も好きには敵わないかぁ」
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