「んーっ!早い時間から飲むのは格別だねぇ!」
とある大衆居酒屋のカウンター席にセイカの姿があった。幸せそうに1杯飲み干したセイカは店員に次の1杯を頼んだ。
「いい飲みっぷりですわね。お酒につきあえるようになったらあたしもセイカさんみたいに飲めるようになりたいですわ」
「褒めるのがうまいね、イタコちゃんは」
セイカの右隣には東北イタコの姿があった。手元にはグラスが置かれているが、注がれているのはお酒ではなく烏龍茶だ。
「というか、まだ19歳なのね」
「ええ、そうですわ。まぁ年齢の話をするならゆかちゃんが高校2年生なのにそらちゃんは高校3年生なのもおかしいですし、年齢周りはあまり気にしないほうがいいと思いますわ」
「言われてみれば確かに。原作尊重してますみたいなツラしといてそういうところで自我出すタイプか、単に間違えてたかなんだろうねぇ……ま、年変わったとて私と飲めないのには変わんないからねぇ」
「ふふっ、ですわねぇ」
セイカは酔っ払っていたらしく、イタコの意味不明な言葉を意味不明な例えで返す。その時ちょうど次のジョッキが運ばれてきた。
「ありがとうございます。んっ……ぷはぁ!そういえば最近うちにまた新しい娘が増えたんだよね」
「ああ、ずんちゃんから聞きましたわ。たしか……紲星さんでしたっけ?」
「そうそう、紲星あかりちゃん。めっちゃ明るくていい子なんだよねー。なんというかこう……明るい女の子の可愛らしい中にも優しさあふれるっていうか…… 」
「同じこと2回言ってますわね」
2人が駄弁っていると、唐揚げや刺し身が到着した。セイカは唐揚げを1つ頬張り、最後にビールをごくごくと流し込む。幸せそうな顔で蕩けるセイカを見て、イタコは目を細めた。
「久しぶりのお酒なんでしょう?そんなペースで飲んでいると潰れちゃいますわよ」
「それもそうだね。イタコちゃんと話すためにここに来たんだもんねぇ」
「ええ。これ以上酷g.dmqpいとお酒に妬いちゃいますわ」
セイカはフフッと微笑み、刺身を一切れ口にする。
「そういえばイタコちゃんの方は最近どうなの?お仕事は」
「最近変わったことといえば、浮遊霊と知り合ったことくらいですかね」
「浮遊霊?除霊とかしちゃうの?」
「除霊はできなくはないですけど、あたしはあくまでイタコですし、悪い子ではなさそうなのでひまちゃ……知り合いの死神に預けておきましたわ」
「死神の知り合い!?イタコちゃんそっち方面でも顔広いんだね……。私が死んだ時は任せようかな」
「その時は私もお婆さんですし、もう引退してますわよ」
「おお、意外と長生きすると思われてるみたいだ」
イタコのグラスがカランと鳴る。飲み始めてすでに30分が経過していた。セイカは店員に次のお酒を注文した。
「あら、次はビールじゃありませんのね」
「最初はビール、そこからは気分なのよ」
「次の日頭を痛めても知りませんわよ〜?」
「ちゃんぽんにならない程度には気をつけてますよ〜」
軽口を叩きあっていると、店の奥から1人の少女が出て来た。
「あれ、ナナちゃん今日いましたのね」
「ナナちゃんだ、こんな時間からお邪魔しちゃってまーす」
「来るなら来ると言ってくだされば良かったのに。そしたらもっと色々と準備させていただきましたし」
少女――No.7は機械的に、しかし愛想よく返事をする。この居酒屋を経営しているのはNo.7だった(と言っても居酒屋だけでなく寮の管理人や塾の経営もしているためお店は別の者に任せっきりだが)。
「普段こっちにいないでしょ、敏腕経営者さん」
「確かに私は普段留守にしてますけど……あとその呼び方やめてください」
「よっ凄腕!経営の神!」
「イタコさんまで……恥ずかしいので辞めてください。言ってもここと塾くらいしか経営してませんし」
「十分では?」
何故かお酒の入っていないイタコもハイテンションでイジリに混ざっていた。No.7は口ではそう言っているが、頬や耳が赤くなっている訳でもなかった。
「そういえば私はボイボ寮にあんまり顔出さないんだけど、普段ナナちゃんそこにいるの?」
「あたし達は東北家として一緒に住んでますので……あたしもあんまり知りませんわね。気になりますわ」
「私の私生活の話ということでしたら、ナイショです」
「「えー」」
「乙女というのは秘密が多いと言いますでしょう?なので私も秘密を作ろうと思いまして」
「理由しょっぼ!」
思わぬ理由に吹き出しむせるセイカ。イタコが水を手渡し介抱する。
「笑いすぎですよセイカさん。じゃあミステリスな私はそろそら御暇させていただきます」
「あ、うん、ありがとうね……っ!ふふっ、あはは」
「ツボに入っちゃってますわね……」
その後もセイカは笑い転げて、次のお酒が来る頃になんとか落ち着きを取り戻し、イタコとサシ飲みを続けた。
「あのーセイカさん?大丈夫ですの?」
「あーうん、たぶんだいじょぶ〜」
飲み始めて数時間。外の景色も暗くなり、客も増えてきた。セイカはアルコールの匂いを漂わせながらイタコに寄りかかっていた。
「そろそろお開きにしませんか?帰りのタクシー呼びますから」
「そだねー、ちょっとのみすぎちゃった。タクシーはいいよ、コウ呼んでるし。あ、コウ最近元気なのかな」
「きりたんからはまたナンパして振られたと聞いてますわ」
「小学生になんつー話してんだあいつは。まあらしいと言えばらしいか。……あ、そろそろ着くらしい」
スマホの通知には『会計済ませとけ』と乱暴なメッセージが表示されていた。セイカはなんとか体を起こし、カバンから財布を取り出す。
「店員さーん、お会計お願いしますー。イタコちゃんの分も出しとくね」
「ちゅわっ、奢ってくださらなくてもいいんですわよ」
「ここは年上としてかっこいいところを見せたいからねぇ」
「酔っている姿を見せてる時点で手遅れですわよ。……じゃあありがたく奢られますわね。今度美味しいスイーツ屋さんを案内させていただきますわ」
「ほんと?やったぁ」
そう言いながらクレジットカードで支払いを済ませる。かっこいいところを見せたいと言っていたが、結局1人で立てなかったのでイタコに苦笑されるのだった。
「……やばい、吐くかも」
「えっ今ですの!?!?」