第57回壁外調査からの帰還途中、ディエゴ・ブランドーはひどく上機嫌だった。
理由は言うまでもない。
女型巨人の正体がアニ・レオンハートであることを確認し、その身体へスケアリー・モンスターズの力まで直接流し込むことに成功した。エレン、ベルトルトに続き、これで知性巨人三人へ自分の力を仕込んだことになる。
壁外調査そのものは多数の犠牲者を出し、調査兵団にとって到底成功と呼べるものではなかったが、ディエゴ個人に限れば事情はまるで違う。以前より欲しかった札が一枚、ほとんど理想に近い形で手元へ転がり込んできたのだから、機嫌が悪くなる理由の方がなかった。
ただし、そんなディエゴの気分とは反対に、遊撃班の面々は彼の姿を見るなり本気で心配していた。
特にサシャの反応は大きかった。
「ディエゴ! 本当に大丈夫なんですか!?」
「さっきから大丈夫だと言ってるだろ」
「でも腕が赤くなってますし、そこも火傷してますよ! 血だってこんなに付いてますし!」
「これはほとんど女型の血だ」
「ほとんどってことは、ディエゴの血も混じってるじゃないですか!」
言い返され、ディエゴは一瞬だけ黙った。
サシャの目には涙が溜まっていた。訓練兵時代から三年間、ディエゴが負傷するところをほとんど見たことがない。対人格闘で吹き飛ばされたこともなく、巨人相手にも当然のように生還し、リヴァイと殴り合った時ですら目立った傷を負わなかった。
そんな男の腕に火傷が残り、服が血まみれになっている。それだけでサシャには十分だった。
トロスト区で自分自身が巨人に食われかけた時より、今の方がよほど泣きそうな顔をしている。
「本当に、痛くないんですか?」
「痛くないとは言ってない。問題ないと言ってるんだ」
「それ同じじゃないです!」
「全然違う」
ディエゴはため息をついたものの、いつものように鬱陶しそうに追い払うことはしなかった。
その様子を少し前から見ていたリヴァイは、帰還したら聞かなければならないことが山ほどあると考えていた。持ち場を離れて単独で森へ突入したこともそうだし、女型巨人の下敷きになってから生還するまでの経緯も詳しく確認する必要がある。
ただし、今この場で問い詰める気にはならなかった。
ディエゴの遊撃班には死者が一人もいない。班員たちの証言によれば、巨人の接近を事前に察知して進路を変え、戦闘になれば役割を即座に振り分け、危険な個体を自分で処理していたという。
挙げ句の果てには、女型巨人と異形化したエレンが戦っている森へ単身突入し、それでも生還した。
褒めるつもりはないが、結果だけを見れば文句をつけにくい。
「ブランドー」
前を進んでいたリヴァイが、振り返らずに声を掛けた。
「はい?」
「聞きてえことは腐るほどあるが、帰ってからにする」
「それは助かります」
「逃げられると思うなよ」
「思ってませんよ」
いつもの調子で返事をしたディエゴに、リヴァイは鼻を鳴らした。
ディエゴはそれ以上気にする様子もなく、まだ隣から傷を覗き込んでいるサシャへ目を向ける。
「全く問題ない。むしろオレは今、かなり気分がいいんだ」
「へ?」
サシャが間の抜けた声を出した。
そこでディエゴは、何を思ったのか妙に上機嫌な口調で話し始めた。
「オレが幼い頃の話なんだが、日が暮れた後に猛獣に囲まれたことがあったんだ。数匹のガラガラヘビと、数匹のクーガーにな」
「……はい」
いきなり何の話が始まったのか分からなかったが、サシャはとりあえず相槌を打った。
「そいつらがオレの行く手を塞いでたんだが、何とそのうち片方が親切にも道を譲ってくれたんだ。動物がだぜ? さて問題だ、クーガーとガラガラヘビ、どっちだと思う?」
「ええ……?」
普段なら絶対にしないような話を始めたディエゴを、サシャは困惑しながら見た。
それでも少し考える。
「く、クーガーですか?」
「ほう。理由は?」
「道を……どくーがー、みたいな?」
一瞬だけ沈黙が落ちた。
ディエゴは人差し指を立て、その指を左右へ振った。
「チッチッチッ。惜しいな、サシャ」
「違うんですか?」
「答えはガラガラヘビだ。『毒』――どくぅー。道をどくぅーヘビィィーってな」
周囲の班員たちがぽかんとした。
数秒遅れて、サシャだけが口元を押さえる。
「ふふっ……」
「どうだ?」
「ちょっとだけ面白いです」
「なかなかセンスあるな、サシャ。ウォール・シーナ辺りなら大受け間違いなしだな」
本気なのか冗談なのか分からない顔でディエゴが言い、サシャはさらにクスクスと笑った。
周囲の兵士たちは苦笑いしていた。
そして、少し前を進んでいたリヴァイだけは振り返らなかった。途中の「クーガーかガラガラヘビか」という辺りで答えが駄洒落なのだろうとは察していたが、実際に聞かされた答えが想像以上にしょうもなかった。
女型巨人の下敷きになり、血塗れになって戻ってきた男を僅かでも心配した自分が馬鹿だったような気がしてくる。
リヴァイは無言のまま前を向いていたが、その苛立ちは旧本部へ戻ってから別の形でディエゴへ向けられることになった。
◆
帰還後、治療と最低限の報告が終わると、エレン、アルミン、ミカサ、ディエゴの四人はエルヴィンの部屋へ呼び出された。
部屋に入るなり、空気が重いことに気づく。
エルヴィンは机の向こうへ座り、リヴァイは壁際に立っていた。二人とも余計な世間話をする様子はない。
「座ってくれ」
四人が席につく。
最初に口を開いたのはリヴァイだった。
「まずブランドー、お前の件だ」
ディエゴが視線だけを向ける。
「遊撃班を置いて単独行動した件なら、事情は説明できますよ」
「その必要は半分なくなった」
「半分?」
エルヴィンが机上の報告書へ手を置いた。
「君が治療を受けている間、遊撃班の隊員が全員ここへ来た」
ディエゴの眉が僅かに上がる。
「確認できた討伐数だけで十五体以上。指示にも大きな問題はなく、君の班からは一人の死者も出ていない。森へ向かった時点で周辺の巨人が内部へ移動していたことも、複数人の証言が一致している」
エルヴィンは報告書を閉じた。
「したがって、単独行動について今回は不問とする」
「そうですか」
「芋女に感謝しとけ」
リヴァイが横から言う。
「サシャに?」
「一番必死にお前を庇ってたぞ。こいつの判断が正しかったから全員生きて帰れた、また同じ班で働かせろってな」
ミカサが淡々と付け加えた。
「私が落ち着くように言ったくらい」
ディエゴは一瞬だけ何とも言えない顔をした後、すぐいつもの表情へ戻った。
「もちろん感謝してますよ」
その返事を横で聞きながら、ミカサは内心で頭を抱えたくなった。
サシャがこの男を意識していることは分かっている。
だが、どうしてよりにもよってディエゴなのかという疑問だけは、いまだに解けそうになかった。
「ただし」
エルヴィンの声で、空気が再び引き締まる。
「不問にするのは、あくまで結果と状況を考慮した今回限りだ。今後も独断を許可したわけではない」
「善処します」
リヴァイが露骨に眉を寄せた。
「その言葉、お前が使うと腹立つな」
そこで話は切られた。
エルヴィンが次の資料へ視線を移す。
「本題に入る。エレン、森で起きた変化についてだ」
部屋の空気が一段重くなった。
◆
「本当に何も覚えていないのか?」
エルヴィンに問われ、エレンは迷わず答えた。
「はい。女型と戦ってたことは覚えてます。蹴りを食らって頭を壊されて……そこから先は何も」
「恐竜のような姿へ変化した記憶もない?」
「ありません」
「自分で何かをしようとした感覚も?」
「ないです」
エレンの答えには淀みがなかった。
隣にいたアルミンも静かに頷く。
「僕も、エレンが意図してやったとは思いません。そんな能力があること自体、本人が一番理解していないはずです」
「俺もそう見てる」
壁際からリヴァイが言った。
「勘だがな。こいつが知ってて黙ってる顔じゃねえ」
「兵長、それ褒めてます?」
「お前にそんな器用な真似ができるとは思ってねえだけだ」
「やっぱり褒めてない……」
わずかに緩んだ空気を、エルヴィンの次の言葉がすぐに消した。
「問題は、誰が引き起こしたのかだ」
誰も口を挟まなかった。
エルヴィンは机の上で指を組む。
「トロスト区では、超大型巨人にも酷似した異常が一度起きている。そして今回はエレンだ。偶然と片づけるには、似た現象が続きすぎている」
アルミンの表情が変わる。
「つまり……誰かが意図的に?」
「その可能性を考えている」
「誰がです?」
エルヴィンはすぐには答えなかった。
自分自身、その結論をまだ完全には信じ切れていないようだった。
「現時点では分からない。ただ、一つだけ仮説がある」
ミカサが静かに見つめる。
「どんな仮説ですか?」
「我々と、我々が敵として認識している巨人側。そのどちらにも属さない第三の勢力がいる可能性だ」
エレンの眉が寄る。
「第三の勢力……?」
「エレンの変化を外部から引き起こせる何者かがいると仮定すれば、説明できることが増える」
「理由を聞いても?」
アルミンの問いに、エルヴィンは首を横へ振った。
「まだ材料が足りない。ここから先は仮説を仮説で補うことになる。今それを伝えれば、判断を濁らせるだけだ」
「でも、俺たちはもう十分混乱してますよ」
エレンが言う。
エルヴィンは少しだけ目を伏せた。
「それについては済まないと思っている。だが、だからこそ今は確実な情報と推測を分けたい」
それ以上の追及を許さない声だった。
「そして当面、エレンの巨人化は禁止する」
エレンは一瞬黙った。
それでも反論しなかった。
「……分かりました」
自分が巨人化した後、記憶すらない状態で別の怪物へ変化した。次も同じことが起きれば、味方を襲わない保証はない。
そこまでは理解している。
ただし、一つだけ無視できない問題が残る。
「じゃあ、女型巨人はどうするんですか?」
エルヴィンがエレンを見る。
「次にあいつが来た時、俺が巨人化できなかったら、また大勢の人が死ぬかもしれない」
「その時は、別の戦力を当てる」
エルヴィンは即答した。
「リヴァイ、ミカサ、ディエゴ。この三人を中心に対処する」
エレンは三人を順番に見た。
戦力としては納得できる。
むしろ過剰なくらいだった。
そこでリヴァイがディエゴへ視線を移した。
「お前はどうだ?」
「問題ありません。前回はエレンが突然あの姿になったせいで混戦になりましたが、それでも生きて帰ってきた」
「それで?」
リヴァイの声が僅かに低くなる。
「女型の中まで潜ったんだろ。何を見た?」
部屋が静かになった。
これが三つ目の話題だった。
ディエゴはすぐには答えなかったが、回答を引っ張る必要は、もうない。
エルヴィンが以前「炙り出す」と言った時点で、敵の候補をある程度まで絞っていることは分かっていた。
さらに、エレンへ忍ばせていた小型恐竜を通して、アルミンたちが女型の正体へ近づいていることも把握している。
今さら名前を伏せ続ければ、逆に不自然になる。
何より、アニの身体にはもうスケアリー・モンスターズが入っている。
調査兵団が彼女を捕らえるために何を企もうが、必要ならこちらから盤面をひっくり返せる。
「結論から言いましょう」
全員の視線がディエゴへ集まる。
「女型巨人は、アニ・レオンハートです」
エレンが息を呑んだ。
「……アニ?」
ミカサの目が細くなり、アルミンだけは驚きながらも、何かを確認するように僅かに視線を落とした。
「間違いないのか?」
エルヴィンの声は変わらない。
「ええ。女型巨人の内部で、本人を直接見ました。言葉も交わしている」
「何を話した?」
「大した内容じゃあない。お前だったのかと言うと、そうだよと返ってきただけです。
殺し合いの最中なんでね」
「…まあ、いいだろう」
リヴァイの返答に、ディエゴは肩を竦めた。
エルヴィンは数秒だけ黙る。
「そうか」
それから短く息を吐いた。
「やはり、アニだったか」
エレンが勢いよく顔を上げた。
「知ってたんですか!?」
「知っていたわけではない。疑っていた」
アルミンがそこで口を開く。
「立体機動装置の検査……ですね」
エルヴィンは否定しなかった。
「いくつか不自然な点があった。ただ、今までは捕縛へ踏み切れるだけの証拠がなかった」
ディエゴはそれを聞きながら、内心で答え合わせをしていた。
やはり、ここまで来ていた。
ならば今の情報には価値がある。
エルヴィンがこちらを見る。
「君の証言が事実なら、大きな前進だ。次はアニ・レオンハート本人を確保する」
「そうでしょうね」
「他人事みてえに言うな」
リヴァイが横から睨む。
「失礼」
表情だけは殊勝に見せながら、ディエゴの胸中は正反対だった。
こいつらはこれから、全力でアニを捕まえようとする。
好きにすればいい。
ただし、自分の用が済むまでは捕まえさせない。
――せいぜいしっかり捕まえなよって感じのセカイだぜ……無駄なことだしな……カスどもが。
そんなことを考えているとは露ほども見せず、ディエゴは黙ってエルヴィンの次の言葉を待った。
会議は、最後にもう一つだけ決定を残していた。
◆
「エレン、しばらく地下牢へ移ってもらう」
「地下牢?」
真っ先に反応したのはミカサだった。
「必要ない。エレンは自分の意思であの姿になったわけではない」
「だからこの程度で済んでるんだ」
リヴァイが冷静に返す。
「こいつがあの状態で団員を一人でも食い殺してたら、地下牢で済む話じゃねえ」
ミカサがリヴァイを睨んだ。
「実際には誰も殺していない」
「分かってる。だから悪いようにはしねえよ」
リヴァイはエレンを見る。
「お前自身を守る意味もある。原因不明のままもう一度変化して、次は誰かを食ったなんてことになれば、お前の処分を止められる奴はいなくなる」
エレンはしばらく黙っていたが、最後には小さく頷いた。
「……分かりました」
納得しているわけではない。
それでも、自分自身の身体がどうなっているか分からない以上、拒否できる立場でもなかった。
エルヴィンが立ち上がる。
「今日はここまでだ。アニについてはこちらで作戦を詰める。四人とも、この部屋で聞いた内容は口外しないでくれ」
「了解です」
アルミンが答え、ミカサとエレンも頷いた。
ディエゴも同じように返事をした。
「もちろん」
誰も、その返事を疑わなかった。
少なくともこの時点では、エルヴィンたちはアニ・レオンハートをこれから捕らえるべき敵として見ている。
だがディエゴにとって、彼女はもう少し違う存在になっていた。
捕まえる前に、聞くべきことがある。
その機会は、思っていたより早く訪れることになる。
◆
旧本部が完全に静まり返った深夜、ディエゴは一人、自室の窓辺に立っていた。
廊下を歩く音はなく、次の見張り交代までもまだ時間がある。
ディエゴは窓を開けると、何もない夜の闇へ視線を向けた。
しばらく待っていると、窓の外から小さな爪が木枠へ掛かる。
一匹の恐竜が音もなく室内へ入り込んできた。
人間ほどの大きさもない、二足歩行の細身の恐竜だったが、その瞳だけは妙に人間らしい。
ディエゴが指を僅かに動かす。
恐竜の身体が震え、鱗が消え、尾が縮み、爪が人間の指へ戻っていく。骨格そのものが組み替わり、数秒後には一人の少女が床へ膝をついていた。
アニ・レオンハート。
完全に人間へ戻った瞬間、アニは大きく息を吸った。
それから顔を上げる。
目の前にはディエゴがいた。
窓際ではない。
いつの間に移動したのか、テーブルの横に置かれた椅子へ優雅に腰掛け、湯気の立つコーヒーを飲んでいる。
テーブルの向かい側にはもう一脚の椅子が用意され、その前にも入れたばかりのコーヒーが置かれていた。
アニは自分の手を見た後、窓へ目を向け、最後にディエゴを見る。
自分の身に何が起きたのかを理解するまで、そう時間はかからなかった。
「……何が目的だい?」
声は低かった。
ディエゴはカップを口元から離すと、向かいの椅子を顎で示した。
「まあ座れよ」
アニは動かなかった。
「毒でも入ってる?」
「そんな面倒なことする必要がオレにあるように見えるか?」
答えになっているようで、まるで安心できない。
アニはディエゴを睨んだまま、しばらく立っていた。
ディエゴは気にせず、コーヒーをもう一口飲む。
「そう肩肘張らなくてもいいじゃあないか。オレたちは同期なんだから」
口元には、どう見ても友好的とは思えない笑みが浮かんでいる。
アニはようやく椅子へ近づいたが、まだ座ろうとはしなかった。
「同期であっても、あんたを仲間だと思ったことは一度もないよ」
「やれやれ。随分嫌われたもんだな」
ディエゴは大げさに肩を竦めた。
「アレか? 対人訓練の時のことでも思い出したか? だとしたら、そいつは悪いことをしたな」
「そういうところだよ」
「何が?」
「あんたを仲間だと思えないところは」
「なるほどね」
全く反省していない。
アニにもそれくらい分かる。
ディエゴはカップをテーブルへ戻すと、そこで初めて笑みを少し消した。
「まあいいさ。どっちみち、お前に選択権はない」
アニの表情が変わる。
「すべてを話せ。お前が知ってることを全部だ」
「……断れば?」
ディエゴは僅かに首を傾げた。
まるで夕食の献立でも聞かれたような反応だった。
「そうだな…とりあえず恐竜化させて、アルミンでも食ってもらうかな」
アニの目が鋭くなる。
「……!」
「いや、恐竜になったまま巨人の口へ飛び込むってのも結構ありかもしれない。どっちが好みだ?」
「最低だね」
「否定するつもりはないが…巨人になってお仲間を殺しまくったやつと比べると、どうだ?
いい勝負じゃあないか?」
アニは拳を握る。
だが、身体は思うように動かない。
命令されれば恐竜へ変わる。
自分の意志とは関係なく身体を操られる。
先ほど窓から入り込んだ時の記憶もある。本当に嫌だったし、止まりたかった。それでも身体はディエゴの命令通りに動いた。
つまり、今ここで飛びかかっても無駄である。それどころか、何かアクションをする前に首をはねられる可能性も十分にある。
ディエゴはそれを分かっている。
「フン……さっさとしろよ」
ディエゴは再びカップを持ち上げた。
「お前のためにコーヒーを入れてやったんだ。全部話せよ……できれば冷める前にな」
アニは湯気の立つカップを見る。
次にディエゴを見る。
逃げ道はない。
少なくとも今は。
やがて、アニはゆっくりと向かいの椅子を引いた。
その音だけが、静まり返った部屋の中へ響く。
ディエゴは満足そうに笑った。
壁の外。
巨人の正体。
ライナーとベルトルトの目的。
そして、アニたちが帰ろうとしている「故郷」。
ようやく、その全てを聞く時間が来た。