寮に入寮後に数日が経過、新越谷高校の入学式の日。私は寮に鞄を置いてからグラウンドに向かった。
(3年生の先輩たちはいないっぽい)
野球部のグラウンドでは2年生は集まっており、チームを纏める3年生は不在。
(挨拶しとこ)
グラウンドに入る前に一礼してから、私は中学の先輩の所に向かった。
「山崎先輩」
「久しぶり。チームの引退試合以来だね」
私と同じ美南ガールズ出身で中2の頃に正捕手で全国を経験している山崎珠姫先輩。ポジションは捕手で1年の頃は自主組でよく一緒に練習した先輩だ。
「タマちゃんの知り合い?」
「中学の後輩。ポジションは捕手だよ」
「へぇ~」
2年生で新越谷のエースの武田詠深先輩。長身で決め球は縦に大きく割れるカーブ。
(実際に対面すると威圧感を感じないというか……)
秋の大会で見た試合は相手を寄せ付けないほどの圧倒的なオーラを感じたけど、今はそんな風に感じない。
「明日香ちゃんはここでも捕手をやるの?」
「やりたいですけど、ポジションは拘らないです。中学でも控えだったし、拘れるだけの実績もないので」
メインとしては捕手をやりたい。簡単に出られる立場ではないのは理解してるし、他のポジションを必要としているなら、サブで出られるように準備はするつもり。
「1年生の頃にベンチ入りしてるんだから。実績はあると思うけどね」
「ブルペン捕手でしたけどね。代打と大差での出場と限定的だったし」
「いい音で取ってくれるじゃん」
「そこは心掛けましたね。見ている時間も長いので」
役割としては継投している投手が最高のパフォーマンスを発揮できるようにプルペンで気持ちを高めてあげる事。
(先に来ちゃったけど野村さん、まだ悩んでるのかな?)
荷物を置いてからグラウンドに向かう前に野村さんとすれ違った。寮に荷物を置いていくか、持っていくかで悩んでいる様子だったので、私は先に来たけど。
グラウンドに来ていた新入生はベンチ前に集合。
「きゃー! 5人も来てくれたんだ!」
チームのマネージャーで頭脳とも呼べる2年生の川口芳乃先輩。
「皆、鍛えられてるね!」
芳乃先輩は新入生の体に触れながら満足用に髪は左右に揺れる。
「芳乃先輩ってこういう人なんですか?」
「こういう人」
山崎先輩に耳打ちで確認を取ると即答で頷いた。
「明日香ちゃんのことも知ってると思うよ」
「私は知名度低いのに?」
「私のことも把握してたから」
山崎先輩は全国に出場してるし知名度は高いと思うと思うけど。
「芳乃ちゃんは明日香ちゃんのことは知ってるの?」
「知ってるよ。出場機会は少なかったけどいいリードするなぁって思ってみてたから」
遅れて合流した野村さんと斎藤さんを加えて、3年生の先輩たちがグラウンドに集合後に新入生は一列に並び、先輩たちに挨拶。
野球部への入部者は私を含めて7人。渡邊詩織さん、斎藤小町さん、長谷川美咲さん、東条蘭々さん。野村さん、村松京子さん。
野球部の先輩たちは2年生は中村希さん、藤田菫さん、川崎稜さん、川口息吹さん、大村白菊さん。3年生は藤原理沙さん、川原光さん、主将の岡田怜さん。
(先輩たちと向かい合うと強者って感じがする)
埼玉の高校野球は他の地域と比較すると激戦区。その中で強豪と渡り合あい、勝利を重ねてきた。
「昔はいろいろあったけど、この1年間、ゼロから真面目に野球に取り組んできた。今では名門に引けを取らないいいチームになったと自信をを持って言える。といっても、層は薄いからいいとおもったら使ってもらえるぞ。ドンドンアピールしてくれ!
「「「「「「「はい!!!!!!!!」」」」」」」
「それじゃあ、まずは守備の実力が見たいから。ノックにいこっか。キャッチボールをしたら希望のポジションについてね。週末の練習試合は全員出すから気合を入れていこう!」
希望のポジションはやっぱり捕手。私と同じ捕手に入った渡邊さんは同学年で同じポジションのライバル。
パン!!
「ナイスボール。いいボール、来てるよ」
「先輩たちが見てるから緊張する……」
「わかる」
斎藤さんは渡邊さんと組み、私は投手を兼任する東条さんと組む。
「私のボール、どう?」
「変化球はスラーブだけだけど。ボールは来てるから大丈夫だよ」
東条さんは未完成の投手。覚えていくことがこれから沢山あると思うし、大変だと思うけど、伸びしろはあると思うし、サポートしていきたい。
「高いからもうちょい低めだとありがたいかなぁ。対戦する打者にバックスクリーンに3連発食らいそう」
「打者は?」
「中田さん、陽さん、久保田さん」
「化け物じゃん!?」
甘いボールもある中で良さを引き出すのは私自体。責任重大だ。