クールな天才捕手は白球に夢を乗せる   作:小羽空

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いいチーム

 

新越谷に入学してから数日が経過した。

 

「ナイスボール」

 

斎藤さんの投球練習でボールを受ける。明日の試合は先発だからボールにも気合に乗り移ってる。

 

(全国での経験はないけど、知名度は高い投手。気になるのは一発が多い所)

 

斎藤さんは私たちの世代では知名度は高かった。勝負所での一発が多いのが気になるけど、明日の大宮第一には強打者はそんなにいない。

 

「投げやすい」

 

「ありがと」

 

投手に合わせるけど、基本的には捕球から送球まで速いテンポでやるようにしている。

 

「スプリット、行くよ」

 

「こい」

 

ノビのあるストレートに加えての落差のあるスプリット。試合の映像で見ていて、打ちづらそうと思ったけど、受ける立場になると決め球にも使えるし、相手打者の目線も変えられる。

 

「タマちゃんに似てるね。明日香ちゃん」

 

「明日香ちゃんは緩急と大胆なリードが特徴。強肩を生かしたスローイングで盗塁阻止率は1年生の頃から高いからね」

 

明日は後半から出ることになってるから斎藤さんと試合で組むことはないけど、守備位置から見てて伝えられることはありそう。

 

「行くね」

 

「お願いします」

 

3年生の川原先輩のボールを受ける。

 

「どう?」

 

「いいボール来てますよ。遠慮なしで大丈夫です」

 

武田先輩の陰に隠れているけど、川原先輩もいいボールを投げている。

 

(秋で印象が良かったのは川原先輩なんだよね。武田先輩も良かったけど、全体的な出来の良さというか)

 

変化球はチェンジアップとスライダー。制球力は安定しており、ストレートの回転数は高い。弱点は球威面だけど、駆け引きは充分出来る。

 

ベンチで水分補給をしている合間に渡邊さんと明日の大宮第一の打者の印象を話し合う。

 

「要警戒は江川さんだけだと思うよ」

 

「斎藤さんは結構打たれてる」

 

「ランナーを貯めての一発だけは避けたい」

 

大宮第一のスーパールーキーの江川さん。中学の練習試合で一度対戦したことがあるけど、守備と走塁には穴がありながらも打撃はこの世代においてはトップクラスだ。

 

「伏見さんは中学ではずっと捕手なの?」

 

「練習では他のポジションに入ってたけど、基本的には捕手」

 

「……ふーん」

 

渡邊さんからはジト目を向けられる。渡邊さんは武田先輩と同じ中学の出身らしい。初日に山崎先輩とも話していたし、2人に強いあこがれを持ってきたのかな。

 

(東条さん、村松さん、長谷川さんは息吹先輩のファンみたいだしね)

 

3人は息吹先輩のプレーを見て新越谷に来たとのこと。

 

(1番かぁ。後ろに息吹先輩がいるから気楽には立てるけど)

 

明日の私の打順は1番。後ろが全員左で大宮第一の投手は左打者に弱いことから、この打順を組んだんだろうけど、中村先輩の後の1番って思うと凄いプレッシャー……。

 

練習が終了後に私は芳乃先輩に許可をもらってグラウンドで素振り。

 

「明日香ちゃん」

 

フォームを確認しながら素振りをしていると近くから名前を呼ばれたので振り返る。

 

「山崎先輩も自主練ですか?」

 

「久しぶりに見てあげようかなって」

 

「ありがとうございます」

 

私に声をかけたのは山崎先輩。中学の居残りでもよくフォームを見てもらった。

 

「緊張してる?」

 

「久しぶりの実戦ですからね。準備はしてきましたけど、1番なので」

 

「希ちゃんの後の1番だと皆、そうだよね」

 

中学では下位打線を打つことが多かったから1番抜擢は驚いたし、適当に決めたわけではなさそう。

 

「先輩たちはデータを集めてるんですよね?」

 

「うん。明日香ちゃんも集めたでしょ?」

 

「中学の習慣で。何もしないよりは望めるかなって」

 

中学の頃から試合前のデータ収集は念入りにやった。相手打者の特徴から、守備位置。投手の特徴から苦手な所まで念入りに。

 

「中学と比較してどう?」

 

「うーん……。まだ数日なので具体的なことは言えないんですけど、いいチームだと思いますよ。全国を目指してるって聞きましたし、チームとしての士気も高いですし」

 

グラウンドでは和気藹々と野球を楽しみながら、練習は熱を帯びており、チームの目標が明確であることから士気も高い。

 

「スイングが力強くなったね」

 

「ホームランが打てるようになりたいなぁって思いながらやってますからね」

 

「打てた?」

 

「まだですね……。高校で打てるようにはしたいですね」

 

タイプ的にはホームランが打てる打者ではないけど、昨年の春頃から徐々に長打が増えてきた。高校で最初に達成したいのは練習試合、公式試合でのホームランだ。

 

「武田先輩って吉川先輩に似てませんか?」

 

「ボールが?」

 

「ベタベタしてる所が」

 

「してないよ」

 

山崎先輩は否定するように顔をそむける。2人は煮てるように感じたんだけど違うのかな。

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