週末の大宮一との練習試合。
1回の表の大宮一の攻撃、新越谷の先発の小町は先頭打者にヒットを打たれたが、後続をショートへの併殺崩れに打ち取る。
「ナイスピー!」
「ナイス斎藤!」
小町はストレート中心の投球でインハイの高めを打ち上げさせ、レフトフライに打ち取る。
「皆、無難にこなすわね……」
「ピッチャーもいいよ。フォームも完成されているし」
二死・一塁で迎えるのは大宮一のスーパールーキーの江川。
(データでしか見てないけど、ガールズ時代にボコボコに打たれてるよね。確かに他とは違うふいんきだ。慎重に外のカットから入ろう)
江川との対戦を心地町にしていたように小町は笑みを浮かべながら初球を投じる。
(は……!? ど真ん中!?)
小町が投じたボールは詩織の意図とは外れる様にど真ん中への接好球。
バキィン!!
江川がフルスイングで捉えた打球は右中間への大きな当たり。抜けたと思われた打球は京子が俊足を飛ばして打球に追いつき、スリーアウト。
「あぶなー……」
「怜、今の追いつけた?」
「わからん……レフトフライの時もカバーが早かったよな。今、一番即戦力に近いのは」
出場しない新越谷のメンバーはベンチで新戦力の選手たちのプレーを点数をつける。
(渡邊さんは外に構えてた。それが中に入るってことは)
明日香は最後の投球に思うことがありながらも、確信が持てなかったので、珠姫に確認する。
「山崎先輩、斎藤さんって多分」
「明日香ちゃんの思ってることでいいと思うよ」
「データ的にそうですよね」
明日香は打席の準備をしながら、珠姫と小声で確認を取りながら、詩織と小町のやり取りを見る。
(今日は関与しないけど、今後リードするなら一発病は克服してもらわないと困る)
小町の弱点は超強打者を意識した時に見られる一発病。
「さぁ! 攻撃だよ! どんな風に返すのか見せてもらうからね」
「はい!」
| 1 | 一 | 伏見 明日香 | 右/右 | 1年 |
| 2 | 右 | 川口 息吹 | 右/両 | 2年 |
| 3 | 中 | 村松 京子 | 左/左 | 1年 |
| 4 | 捕 | 渡邊 詩織 | 右/左 | 1年 |
| 5 | 二 | 長谷川 美咲 | 右/右 | 1年 |
| 6 | 遊 | 野村 瑞穂 | 右/右 | 1年 |
| 7 | 左 | 東条 蘭々 | 右/右 | 1年 |
| 8 | 投 | 斎藤 小町 | 右/右 | 1年 |
| 9 | 三 | 川崎 稜 | 右/左 | 2年 |
1回の裏の新越谷の攻撃。1番の明日香はネクストでバッテリーの投球練習を観察後に打席に入る。
(ふん。そんなに簡単にチャンスなんて)
瑞穂は都合よくチャンスが生まれるわけがないと思っていた。
(こういう投手はフライを打つよりはゴロを打つイメージ。二遊間が広く空いてるし、あそこを狙う感じで)
カキィン!!
明日香は初球のストレートを打ち返す。二遊間の守備シフトの中央を抜ける強烈なゴロとなり、センター前ヒット。
「伏見、ナイバッチ! 狙ってたのか?」
「初球は見ていこうって思ってたんですけど……甘かったんで、打った方がいいかなって」
明日香は初球は見ていこうと思いながら打席に入った。初球に投じられたボールが甘く、見るよりは打った方がいいと思い振りぬいた打球はセンターへとヒットになった。
息吹はフルカウントまで粘り、四球で出塁。無死・一・二塁。
(はっ……? 都合よすぎだろ!?)
京子は俊足を生かすためにセーフティ気味へのバントはバットの先端に当たり、捕手への小フライ。
「すみません……」
「打ってほしかったけど。狙いとしては悪くなかったよ」
1死・一・二塁で打者は4番に抜擢された詩織。
(大宮一の2番手。スコアと映像を見た印象は左打者に弱い。フライボール型の投手。秋は諸角に被弾している。今のバットフライを見てもポップ成分が多い球質。伏見さんはゴロを打つイメージで打ったんだろうけど。4番に求められているのは長打!)
詩織はインコースのストレートを左中間に弾き返す。打球のノビはフェンスまで後、数センチの距離でレフトが捕球。明日香はタッチアップし、三塁に進塁する。
1死・一・三塁。
(意識をしていたのに下を叩いた。思ったよりもいいボールだったな)
詩織の打球の失速はボールの下を叩いていたから。
「かなり直球はノビがあるから。打ちにくいかも」
「了解」
「サンクス」
詩織は美咲と瑞穂に打席での印象を伝える。
(あれだけ飛ばしておいて、打ちにくいって嫌味かよ。っていうか、何で私が6番なのよ。あの4人よりも下ってことかいな)
瑞穂は打席で打順が下であることに不満を持ちながらも、美咲はダウンスイングで叩きつけた打球はサードの江川への正面。
(あっ……!?)
打球は江川のグローブを弾き、ボールは中間守備のレフトの前に転がる。明日香は江川が弾いたのを見てスタートを切り、先制のホームを踏む。
「サードへのタイムリーエラーで先制!」
「ノビがあるって教えたから明らかに叩きつけましたね」
「うん。パワーがないうちはこれでいいと思うよ」
新越谷1ー0大宮一。
(浮かれやがって、伏見以外は無安打じゃんか……でも、私の第一印象はあの4人より下なんですよね)
瑞穂は格下に思われていることを後悔させてやると初球から豪快なフルスイング。
ぶぉん!!
瑞穂の狙いはバックスクリーンへのホームラン……だったらよかったのだが、ボールは捕手のミットに収まっており、豪快な空振り。
「私が捕手なら続けてストレートを投げさせる」
「狙い球がストレートですって言ってるのに?」
「変化球でタイミングを崩して打ち上げさせたらいいんだけど。あの空振りで変化球に逃げるよりはストレートを打たれた方がいい」
瑞穂の狙いはストレートではなく緩い変化球。明日香は自分が捕手なら変化球よりもストレートの方がいいといった。
(あれだけ豪快に空振りをしたら次に投げるとしたら……)
瑞穂の狙い通りにバッテリーが投じたのは緩い変化球。タイミングを崩されるように打ち上げた打球はセカンドへのフライ。
(息吹先輩はあの人から出塁した。1年違うだけでこんなに差があるのか)
瑞穂は実力の違いに落ち込みながらも、怜と理沙が励まし、気持ちを切り替える様に声を出してグラウンドへ。
先制点を貰った小町は切れ味のあるスプリットを武器に4回まで無失点に抑える。
「いいスプリット」
「でも、さっきの4番への配球は気になったな」
「データを見てると斎藤さんは超強打者には滅法弱いんだ。昨年のガールズの平均OP・770に対して、斎藤さんの被OPSは・600程度」
「凄いじゃん」
「でも、平均OPS1・500を超える世代の目玉球の打者に対してはこの数字以上に打たれているんだ」
小町は江川の前にランナーを貯めずに二死を取る。
「さぁ。懸念の4番だよ」
江川は威圧感を発しながら打席で構える。
(ランナーもいないし、私なら弱点を攻めながらカウントが不利になったら歩かせる)
(さっきはカットが曲がらなかった。スプリットから入ろうか)
詩織は落ちのいいスプリットを選択。
「単に委縮してしまうのか、それとも丁寧に行かないといけない分っているのに、気持ちが昂って、中途半端に行ってしまうのか」
小町が投じたスプリットはど真ん中へ。しかも今度は落ちが甘くほとんど変化しないボール。
カキィィィン!!
打者にとっては打ってくださいと言っているような絶好球。江川が放った打球はフェンスを越える場外への同点のホームラン。
(斎藤さんはうちらの間でもよく名前が挙がってた。これがなければ、味方じゃなくて敵として会っていたかもしれない)
新越谷1-1大宮一。
「一発病、これさえなければ強豪に誘われていたかもね。でも
内野陣は間を取り、マウンドに集まる。
「ソロホームランだから全然OKだぞ」
「まだ同点だからね」
「江川は千葉でも有名だったからな。仕方ががない。でも何で強豪にいなかったんだろうな」
「守備と走塁が弱点だからじゃない?」
江川は圧倒的な打力を持ちながらも守備と走塁が弱点。