美少女名探偵(自称)森下藍ちゃんと隣の席の男子 作:ペロロペ
僕の名前は上田徹也。3年間親元から離れることができる素敵な学校、東京高度育成高等学校に入学したばかりの1年生だ。
「上田徹也。見てください、卵ちゃんが割れちゃいますよ。あぁ、あぁ……」
そして僕の目の前で生卵ちゃんを納豆君の上に落そうとしているのは自称・名探偵の祖父を持つ同じクラスで隣の席の森下藍ちゃん。
「あぁ! 卵ちゃんと納豆君がぐちゃぐちゃに混ざって、混ざって……む、何を見ているんですか。破廉恥ですよ上田徹也」
ぼちゃんと落とされた卵ちゃんと納豆君がぐちゃぐちゃと混ぜられている様子をみていると、藍ちゃんに理不尽に罵倒された。
「自分から見てっていったのに」
「あなたは女性が「今から着替えているところ見てて❤」って、言ったら見るタイプですね。間違いない。むっつりスケベェめ。美少女名探偵・藍ちゃんの目はごまかせませんよ」
「え、むしろ見ないほうが失礼じゃない?」
「……確かに。私も「見てて❤」って言われたら、普通に見ますね」
藍ちゃんは雑穀米に卵ちゃんと納豆君を混ぜたご機嫌な物体をのせて一口食べた。僕もまたサンマの塩焼きと大根おろしに少量の醤油を垂らしたものを口に入れてから、白飯を口に入れる。
「「美味い」」
本当に美味しいものに余計な感想はいらない。それは藍ちゃんも同じだったようだ。
「それにしても僕達なんだか波長が合うようね。まだ出会って1日しか経ってないのにさ」
「……もしかして口説いているのですか?」
「いや、今の発言には僕も驚いてるよ。まさかこの口が自然とナンパ師みたいなセリフを吐くとはね」
「全く、MACポイントー1点ものですよ」
「……なにそのポイント? ハンバーガー? パソコン?」
「まさか、あのMACポイントをご存じでない!? あのMACポイントですよ!!」
藍ちゃんは「嘘、ま~じ信じらんない」みたいな顔をしてるけど、僕はMACポイントなる制度なんて初耳だ。
「仕方ないですね。無知蒙昧な上田徹也にMACポイントの何たるかを啓いてあげましょう」
「お願いします。藍ちゃん先生」
「MACポイント──通称、森下藍ちゃんポイントは簡単に言うと、好感度みたいなものです。相手の保有するMACポイントが高ければ高いほど、その人と話すとき私がご機嫌になります」
「藍ちゃんがご機嫌になると、何かいいことがあるの?」
「こんなにも可愛い美少女がご機嫌になるんですよ。人類の想定しうる最大限の幸福を間近で享受出来るなんて、上田徹也は幸せ者ですね」
大言壮語も甚だしいとは思うけど、藍ちゃんの自信に満ちた表情を前に僕はなにも言い返せなかった。
「ちなみに、現在の僕のポイントは?」
「私は親友枠ではありません。攻略される側です」
「攻略されたい願望はあるんだ」
「しかし私の攻略は容易ではありませんよ。なぜなら、私もまた攻略する側にまわるからです」
「斬新だね。まさか攻略していたと思ったら、攻略されていたなんてさ」
その後も朝食を取りながら中身のない会話をしていると、食堂に居る人間がめっきりいなくなっていることに気が付いた。
「藍ちゃん、もしかしてこれって」
「えぇ。時間を見るに遅刻というやつですね。折角ですし、無断欠席と洒落こみますか。一度やってみたかったんですよね」
「入学してから2日目で無断欠席なんて……悪だね、藍ちゃん。僕は後が怖いから、一応休みの連絡を入れておくよ」
「つれないですね。なら、私の分もお願いします。森下藍はゆらりと蝶のように飛んでいったと伝えてください」
僕は端末に保存してある学校の番号に電話をかけた。
咳き込む演技を交えながら休む旨を伝えた後、藍ちゃんに関しては彼女の要望通り原文ママを先生に伝えてあげた。
後日、藍ちゃんが職員室に呼び出されたのは、まぁ語るまでもないだろう。