メガシンカの話を資料と交えてプラターヌ博士から教えて貰ったが、俺が前世で見たものより分かっていることが少なかった。やはり、メガシンカについて色々と判明してきているのは俺が10歳になる頃なのだろうか。
そんな事を思ったプラターヌポケモン研究所の見学を終え、その後はママさん達のミアレのブティック巡りに付き合ったりしながらカロス旅行を楽しんだ。
そして、俺たちがカントーに帰る日。今度はセレナは泣いて嫌がりはしなかったが、「帰っても連絡ちょうだい」と潤んだ目をして言った。
まあ、言われずともするつもりだったので「もちろん」だと返事をすれば、一気に嬉しそうに表情を明るくするセレナ。こうも美少女に懐かれると、やはり気分が良いものだと再確認しながら、俺とママさんは飛行機へと乗ったのだった。
「見てサトシ!商店街の福引きでアローラ旅行が当たったわよ!」
「……へ?」
7歳の夏、手っ取り早く夏期休暇中の宿題を終わらせようとしていたところに、「じゃじゃーん!」と福引きで当てたらしいチケットを見せつけるように持って、満面の笑みのママさんがそう言ってきた。
前世の記憶だと、アローラ旅行はママさんのバリヤード*1が当てていたはずだが、これも俺が転生した影響なのだろうか?
そう思い悩んだが、ウキウキと旅行の準備を始めるママさんを見て、そう深く悩むことでは無いな。と思い直し、俺も旅行の準備を始めるのだった。……あ、その前に森のみんなに旅行に行く事を伝えて来なくちゃ。
青い海、青い空、白い雲に照りつける太陽。南国らしい風景が、飛行機を降りた直後から目に飛び込んできた。
ここはアーカラ島のカンタイシティ。多くの訪れを喜びもてなす町と紹介されている場所である。
早速予約していたハノハノリゾートのホテルにチェックインして荷物を預けると、ホテルの近くにあるビーチへとやって来ていた。アーカラ島で1番大きなリゾートホテルである。
「凄いわねー。アローラの海って!」
麦わら帽子が風で飛ばされないように抑えながらも、そう言ってアローラの海を眺めるママさん。
俺という子持ちではあるが、今のママさんは26歳というまだまだ若いと言える年齢である。
その上、美人でメリハリのついたスタイルを惜しげもなく晒す水着姿である。ビーチの男どもからの視線を集めているのだ。
転生してからは俺の父親とは顔を合わせたどころか話も聞かないので、何をしているかは知らないが、今ママさんを守れるのは俺しかいないと、ママさんに声をかけようとしてくるチャラ男どもを睨みつけながら牽制しつつ、ビーチを歩いていると、
「きゃっ!」
と、少し先の方で白いワンピースタイプの水着を着た、同い年ぐらいの女の子が転けた瞬間が目に入り、慌てて駆け寄り「大丈夫か?」と声を掛ける。と、
「あ、はい。大丈夫です」
と、女の子は砂浜から顔を上げる。
恥ずかしそうに笑う彼女の顔を見て、俺の前世の記憶が刺激され、すぐに思い出した。
この子、前世の俺の推しキャラ、リーリエじゃん!
ピシャリと電撃のように走る衝撃。今はまだ前世の記憶の中にあるよりも幼い顔立ちだが、将来が楽しみになる程の整った顔立ちと愛らしさは、美少女と言っても過言では無いだろう。
「えっと、怪我とかしてないか?」
「問題ありません。こう見えて丈夫なんです」
むん!と存在しない力瘤を見せつけるように腕を曲げ、その後すぐに「リーリエ!」と叫びながら駆け寄ってくる、リーリエと顔立ちの似た黒い海パンの少年が駆け寄って来た。
「お兄さま!」
「まったく……。人が多いんだからあんまり走り回ってはいけないと言っただろう?」
「うぅ……」
叱られしょんぼりと肩を落とすリーリエ。彼女にお兄さまと呼ばれたという事は、彼がグラジオなのか。
そう思いながら黒海パンの少年を見上げていると、視線があう。
「お前は?」
そしてすぐさま警戒心剥き出しの声で誰何される。その声を聞いてリーリエが「この方は私が転んだのを心配して声を掛けてくれただけなのです!」と庇ってくれ、それに合わせて俺も「俺はサトシ。目の前で勢いよく転んだから心配してな」と名乗る。
「……そうか、すまない。俺はグラジオ、そしてこっちが……」
「リーリエです。……けど、そんな勢いよく転んでませんよ!」
丁寧に育ちの良さが垣間見える自己紹介をして、リーリエがぷりぷりと怒り出す。
その時の顔が可愛らしく、思わず笑ってしまうとリーリエは「もう!」と更に怒ってしまった。
「しかし、サトシは1人なのか?」
「いや?ママ……母さんと来てるけど……って、あ!」
グラジオに尋ねられ、ママさんを探して後ろを振り返れば、ナンパされて困っているママさんを見つけた。
「わりぃ!ちょっと行ってくる!」と言い残し、俺は砂浜を駆け出した。ナンパされてしまっているママさんを救い出すために。