ナンパ男どもを追い払い、改めてグラジオとリーリエにママさんを紹介すれば、「お母様より若い……」と言うリーリエの囁きに笑ったり、その後やって来た2人の両親のモーンさんとルザミーネさんとも挨拶をしたり、話の流れでモーンさんが所長をしている空間研究所を見学させてもらう約束をしたり、浜辺でグラジオリーリエ兄妹と仲良く遊んだりと楽しんだ後、リーリエ達と共にハノハノリゾートホテルへと戻り、共に晩御飯を楽しんだ後別れた。
翌日。モーンさんは俺たちを研究所を案内する為の準備で別行動を取るらしく、俺、ママさん、リーリエ、グラジオ、ルザミーネさんの5人でアーカラ島の観光名所の一つであるオハナ牧場へと来ていた。
この牧場では、ドロバンコやミルタンク、メリープと言った牧場で飼われているポケモンとの触れ合い体験や、バンバドロのライド体験、ミルタンクの乳搾り体験などが楽しめ、ミルタンクから搾ったモーモーミルクを使った乳製品を購入出来るのだ。
「凄いですサトシ!ミルタンクのミルクが勢いよく出ます!」
「ちょっ、うおっ!わぷ!」
「はははははっ!グラジオは下手だなぁっ!」
キラキラとした眼差しで俺が搾るのを見ているリーリエの横で、うまく下のバケツに狙いをつけられずに、自分にミルタンクの乳が向いた状態で搾ってしまい、思い切り顔にミルクを自分でかけてしまったグラジオを見て俺は笑ってしまう。
そんな俺たち子供組から少し離れたところで、ママさんとルザミーネさんの大人組は売店で購入したモーモーミルクで作ったモーモーソフトを味わいながら俺たちを眺めているのが見えた。
「そうは言うがサトシ。お前は楽々としているが、これ、かなり難しいぞ!」
「これを難しいと感じるのはグラジオの修行が足りないんだよ。もっとポケモンに触れ合え」
「いや、俺もかなり触れ合っていると思うんだが……」
「いいポケモントレーナーってやつはポケモンに好かれちまうんだよ」
「そういうものか……」
グラジオ相手に前世の漫画なんかで聞き齧った台詞を適当に言えば、何故かリーリエの方が「なるほど……勉強になります!」と、何処から取り出したのか分厚い手帳にメモを取っていた。なんか恥ずかしい。
「ふう、とりあえず俺は搾り終えたな。どうだミルタンク、残乳感とかあるか?」
「んもう」
立ち上がり頭を撫でながら尋ねれば、首を横に張ってミルタンクは否定した。どうやらミルタンクの方も満足の出来栄えだったらしく、スキップ混じりに搾った乳が入ったバケツを持って木製の建物の方へ向かっていく。
この牧場に来た時に『関係者以外立ち入り禁止』だと注意された建物で、中ではモーモーミルクの調整や加工を行っているらしい。
正直言うと、非常に興味を惹かれるが、取り扱いに注意が必要な機械なども置いてあるらしく、流石に許可出来ないとの事だった。
「それじゃあ俺たち乳搾り終わったから、ママ達のとこに合流してソフトクリーム堪能してくるわ」
「ちょっ、おい!」
未だ乳搾りに悪戦苦闘して自分が乳搾っているミルタンクからも白い目を向けられ始めたグラジオを置いて、俺とリーリエはママさん達に合流してモーモーソフトを二つ追加で注文した。
「お兄様を助けなくて良いのでしょうか……?」
「問題ないよ。ああ言うのも経験さ。それよりほら、モーモーソフト」
「そうなのでしょうか?……っ!?おいしい!」
心配で後ろ髪を引かれている様子のリーリエだったが、モーモーソフトを一口舐めた瞬間、グラジオの事は忘れ去ったかのように熱心にモーモーソフトを舐め始めるリーリエ。
自分では気付いていなさそうなので、ポケットから取り出したハンカチでリーリエの鼻の頭に付いたクリームを拭き取る。
「クリーム付いてたぞ」
「えっ、あっ!?す、すみません……」
照れて恥ずかしそうに謝ってくるリーリエ。気にされても困るので空気を変えようと「せっかくの可愛い顔が間抜けっぽくなってたぞ」と少し揶揄うと、「かわっ……!?」と頰を朱に染めて固まってしまった。
「早く食べないとソフトクリーム溶けるぞ」と注意すれば、リーリエは真っ赤な顔のまま一心不乱に食べ始め、先に食べていたママさんやルザミーネさん達よりも先に食べ終えた。
「わ、私っ!お兄さまのお手伝いに行って来ます!」
そう言って慌ただしく未だ乳搾りに励んでいるグラジオの元へと駆け出していった。まるで脱兎の如く。
「なんか嫌われちゃったか?」
そんな事を言う俺を、その背後で信じられないものを見るような目でルザミーネさんが、呆れた目でママさんが俺を見ていた。と後でグラジオに教えてもらった。
そこまでの事を俺はしたのだろうか?更に謎が深まった気がした。