オハナ牧場を楽しんだ次の日、俺たちはモーンさんの案内で空間研究所を案内してもらっていた。
そして今、3階で何故空間研究が行われているかの説明を受けていた。
「……つまり、このアローラでは他の地方よりも不安定な空間の波長が頻繁に感知されていてね。稀に穴が開くんだ。私はこの穴をウルトラホールと名付け、この向こう側に反応だけだけど確認されたポケモンによく似た存在をウルトラビーストと名付けたんだ」
「「ほへー……」」
モーン博士の説明を受けながらも、よく分からなかった俺たちは気の抜けた相槌を打つ。
それに気付いたモーンさんは「あはは……。ちょっと難しかったかな?」と苦笑した。
「まあ、このアローラではたまーに空に穴が開いて、その向こうにはポケモンとよく似た存在が居るってことだけ分かって貰えたら良いかな」
そう言って、俺たちに見せていた資料やグラフなどが表示された大きなモニターを戻し、「次は実際に実験の様子を見てもらおうか」と言い出した。
「実験って危険なんじゃ……」
「あー、大丈夫ですよ。安全マージンはしっかりと取っていますから」
心配そうなママさんの言葉に、モーンさんは笑って答える。リーリエとグラジオは父親の仕事が見られると楽しそうにソワソワしていた。
実験場へと先導するモーンさんに着いて行こうと、俺も歩き出したみんなの後を追おうとした時、ふと何かを感じて足が止まる。
「どうしたの、サトシ」
「あ、いや。なんでもないよ」
ついてこない俺を不審に思ったママさんに、問題ないことを首を横に振って伝えると合流する為に少し駆け足になる。
しかし、先程感じたものは一体何なのだろうか?何かこう、もわっと言うか、むわっと言うか、そんな感じのものが身体を襲ったのだ。
「……まぁ、気のせいか」
自分の感覚を気のせいだと断じる。俺の小さな独り言が聞こえたのか、「何か言った?」とママさんに尋ねられるが「何でもない」と誤魔化した。
「さあ、ここが空間研究の……ウルトラホールの実験場だよ!」
空間研究所の地下、四方が真白いコンクリートの壁で作られ、部屋の中心には大きく不思議な機械がその存在感を放っていた。
「あの機械は一体……?」
「あれこそが私の研究によって開発されたウルトラホール発生装置さ!……と言っても、ようやく出来たばかりで実際にウルトラホールを発生させられるかは分からないけどね」
グラジオの疑問に、我が子が興味を持ってくれて嬉しいのか、モーンさんは嬉しそうに説明してくれた。
その説明に、みんなは「へぇ〜っ」やら「凄いです!」やら反応していたが、俺は幾つかの言葉に何故か引っ掛かっていた。
モーン、ウルトラホール、実験、リーリエ、グラジオ、幼少期……。
喉のところまで何かが出かかっているような、もどかしさを感じながら、必死に記憶を探る。俺は何を思い出そうとしているのか。
「さあ、ウルトラホールが開くのか……。作動!」
そんな俺を他所に、機械のスイッチを入れるモーンさん。機械からギュイィィィンと駆動音が鳴り響き、バチバチバチッと小さな電撃が機械の上を走り始める。
空間が震え、地下なのに激しい風が吹き始める。そして、
ブワァァァァアッ!!
ウルトラホール発生装置の上の、何もない空間に亀裂が走り、そして穴が開いた。
「や、やった……!ウルトラホールの人為的な発生に成功したぞ!」
自身の理論が合っていたからか、歓喜に叫ぶモーンさん。リーリエやグラジオ、ルザミーネさんも「やったわね、あなた!」「凄いです!」と称賛する。
「本当にさらに穴が開くのねぇ……」
俺の横で感心したように呟くママさん。俺も今は考え事をするのを止め、ゲームやアニメでしか見なかったウルトラホールの異質さに圧倒され、ただひたすらに注目していた。
だからだろうか。
にゅるり
「……っあ!?」
ウルトラホールの向こうから伸びて来た白い触手。それを見てようやく思い出せた。
これ多分モーンさんの行方不明イベントだわ!