ウルトラホールの先にあったの長い洞窟を抜けると雪国であった。……なんて、思わず川端康成が溢れ出る程に衝撃的だった。
記憶には薄らだが残っていた。が、だからと言ってそう簡単に飲み込めるかどうかは別である。
「降り積もる雪に少し離れた場所に見える列車の駅らしきものは、島だらけのアローラには存在しない鉄道が通っていることの証左。……って事はやっぱり」
「べの……?」
「ここ、ガラルじゃねぇーかー!?」
俺の魂からの叫びを聞き、ビックリしたのか「べのー!?」と鳴き声をあげるウツロイド。もしやと思っていたがややっぱりお前ノリ良いな?
しかし、常夏のリゾート地から雪原に移動とは、俺がサトシくんでなければ激しい寒暖差で体調を崩していただろ。
「……っと、確かゲームの知識だと下の方に村があったよな?何か長袖みたいな暖かいもの貸してもらえないか交渉しなくちゃな」
今の俺の格好はアローラにいた事も理由になるが、こんな寒冷地に相応しくないアロハならぬアローラシャツである。幾ら波導の応用である程度外気温を防げるとは言え、限度がある。
ぶるりと身震いしながら二の腕を摩っていると、ふわりとウツロイドが触手を使って俺に覆い被さって来た。
「もしかしてお前、俺を暖めようとしてるのか?」
「べの!」
「そうだよ!」と頷くウツロイド。その優しさに少しうるっと来つつも、ウツロイドに語りかける。
「ありがとうな、その気持ちは嬉しいよ。けどな……」
「べの?」
「お前の身体石英に近いからかすんげー冷たいんだよ」
「べのめ!?」
ガーン!とショックを受けたのか、ふらふらと力なく俺から離れると、触手を使ってズーンと傘の部分を俯かせた、落ち込んだ人のポーズをとった。
器用だなー。なんて思いつつも「お前の気持ちは嬉しかった!嬉しかったから!な!」と慰めて、なんとかウツロイドの元気を取り戻す。
「ぶぇっくしょん!……いやいや、こんなことしてる場合じゃねぇや。ほらウツロイド、早くあそこの村行こうぜ」
「じぇるぷ!」
気を取り直して歩き出す。と、
「ごらぁっ?」
「……うわぁお」
のそりと近くの茂みから、なんとも立派なガチゴラスが姿を現した。凶悪な風貌に似合わない、つぶらな目と思わず視線が交わり、変な声が漏れ出てしまう。
まあ、俺たちが出て来たであろうウルトラホールがあるのだ。遥か太古から化石ポケモンも迷い込んでしまったのだろう。
「…………ごらぁっ!!」
「うわぁっ!?」
暫く固まったままだったガチゴラスが、ハッとした様子で吠え立てる。慌てて逃げ出すが、慣れない雪の上のせいで上手く走れない。そして、ガチゴラスが大きく地面を踏み締めると、途端に地面が揺れ始めた。
技の威力的に、恐らくガチゴラスは“じならし”を行ったのだろう。唯の地ならしでもガチゴラスのものだと、かなりの威力を誇り危険だろう。しかし、この状況だと更に凶悪になってしまう。
ドドドドドッ……
「じぇぷ!?」
「やっぱり雪崩が起こったか……!」
ガチゴラスの地ならしによって、すぐ側に切り立っていた崖の上から勢いよく雪が流れ始めて来た。
咄嗟にウツロイドにしがみ付くと、俺の考えを把握したのか、触手で俺の体を包み込んできた。
そして、流れて来た雪崩に飲み込まれ、上下左右が分からない程にひっちゃかめっちゃかになりながら、俺とウツロイドは流されてしまうのだった。