二つのニンジンを村長に見せると「そのニンジンは売り物に出来ないし、サトシくんが貰っちゃってよ」と言われた。
が、これを人間が食べても問題ないのかが分からない為、取り敢えず借りさせて間貰っているログハウスの冷蔵庫に放り込むことに決めて村長宅からログハウスへ向けて歩いている途中、むらを囲う柵の向こうに二体の大きなうまポケモンの姿を見つけた。
片一方は雪のように真白く、もう片一方は幽鬼のような印象のうまポケモン。
その姿を俺は前世でよーく見ていた。彼らはブリザポスとレイスポス。あるポケモンの愛馬とされているポケモンで、前世では伝説のポケモンとして扱われていた。
此方の世界ではどう扱われているかは分からないが、恐らくはかなりレアなポケモンとして扱われているのだろう。なにせ、オーキド博士のところにあったポケモン図鑑にも載っていないのだから。
と、ここで気がついた。あの二体の視線、俺に……というか手元のニンジンに向けられていた。
「……もしかして、食べたいのか?」
視線の先が分かれば、何故見ているのか、すぐに理由に思い当たった。
二体のポケモンを刺激しないようゆっくりと近付き、そっとブリザポスにはつめたいにんじんを、レイスポスにはくろいにんじんを差し出す。すると
「「っ!?ぶひひんっ!!」」
息の合ったタイミングでそれぞれの大好物のニンジンを貪るブリザポスとレイスポス。
ニンジンはすぐに食べ終え、ブリザポスとレイスポスは満足そうに鼻息を鳴らす。そして、視線を改めて俺へと向けてゆったりと顔を近付けて来た。そして、
「おっ、おっ!?うおおおっ!?」
其々から挟まれるように左右の頰を一舐めされた。
「あははっ、もしかして感謝してるのか?」
「ばしろぉぉす」
「ばくろぉぉす」
俺がそう問えば、ブリザポスとレイスポスは小さく鳴く。そして、ゆっくりと離れていくと山の方へと軽やかに駆け出して行った。
「元気でなー!」
二体の姿が見えなくなるまで俺は手を振って、見送る。ほんの僅かな時間とはいえ、触れ合ったあの二体のポケモン。仲良くなれたのはきっと気のせいではないだろうから。
「……よしっ!」
二体のポケモンを見送り、改めて仕事に戻ろうと振り返ると、むらのご老人にスマホロトム片手に話しかけている男性の姿を見た。見てしまった。
「ん、んんっ!?」
「うんっ?」
俺の唸り声が聞こえたのか、こちらを不思議そうに見る男性。ガラルには知り合いがまだフリーズむらの住人以外存在しないが、それでも俺はその男のことをよく知っていた。
その座についてから全戦無敗、誰か呼んだか“無敵のチャンピオン”。ガラルが誇るトップポケモントレーナー。その名は……
「ダンデが何故ここに……!?」
「おっ、俺を知ってたのか」
「あははっ」と呑気に笑うダンデ。まさか過ぎる出会いに、俺は驚きのあまり固まってしまうのだった。