俺の初めてのポケモンとなるウツロイドをゲットしたのを見ていたダンデに「それでは行こうか!」と言われて、ダンデのスマホロトムを手渡された。
「……えっと、これは?」
「恥ずかしい話だが、俺は方向音痴らしくてな。サトシくん。君には道案内を頼みたいんだ」
「世界規模で迷子になっている俺にっすか」
しかし、前世の記憶によればダンデの方向音痴は凄まじいらしく、相棒のリザードンがいなければ目的地まで行けないらしい。……ならなんで伝言役を頼んだんだ。思わずそうツッコミたくなったのを我慢して、ダンデからスマホロトムを受け取ると、マップアプリを開き自分の現在の向きを確認する。
「まずは駅に向かうんですよね?」
そう尋ねれば「ああ」と頷くダンデ。それを踏まえてマップで距離を確認すればなかなかに遠い。
「……なら、今出れば途中で野宿する事になる。今日はこのむらに泊まろう。俺も、むらの人達に挨拶したいですし」
「良いですか?」と聞けば、「うーむ……。まあ、仕方ないか」と呟くと、
「分かった。明日の朝、出発にしよう」
と良い笑顔で言い、この件を師匠に伝えるから先に準備しておけと言われた。
翌朝になると、俺とダンデは早速フリーズむらを出発して、昼過ぎには駅へと到着した。
昨日はむら全員の人に挨拶に行き、その別れを惜しまれながらも「元気でね」と温かい言葉を贈られ、出発の時もむら総出で見送ってもらえ、俺も思わず涙ぐんでしまった。
そして現在、ブラッシータウン駅で乗り換え、アーマーガアタクシーに揺られて、ヨロイ島に到着していた。
「こっちはカンムリ雪原とは違って温暖なんだな……」
駅内で脱いだコートを鞄に突っ込みながら、呟くと「あそこと比べるとな……」と苦笑しながら反応するダンデ。
この島にはマスター道場の関係者ぐらいしか来ないためか、ブラッシータウン駅では、かなりのファンに囲まれていたが、ここでは駅員から熱い視線を向けられているだけで済んでいた。
「それにしても……ヤドン。多く無いですか?」
駅を出てすぐに目に入ったのは、マサラの森でも見かけた事のあるヤドンが海岸沿いに数十匹の群れを成して寛いでいる姿だった。
そんなカントーでも見た事のない光景に驚いていると、
「それはねー。ヨロイ島は元々ヤドンの楽園なんて言われていたからだよん」
と、突然第三者の声がすぐそばで聞こえてきた。
すぐに飛び退き、警戒して腰にぶら下げていたウツロイドのモンスターボールを構えて見ると、そこには腕を背中に回して笑う、眉毛の特徴的な好々爺がそこに居た。
「貴方は……」
口から溢れる疑問。俺の隣で額に手をやりながら溜息を吐くダンデ。そして、
「何やっているんですか、師匠」
と呆れた様子の声音で老人に向けて言った。
「……師匠?」
俺はダンデを見ながら目の前の老人に指を指して、言外に「この人が?」と尋ねると、ダンデが答える前に老人が口を開いた。
「そうだよーん。ワシちゃんがマスター道場の道場主、マスタード!こう見えて、ポケモンめっちゃ強いよん!これからよろぴくねー!」
おちゃらけた口調と軟派な態度で自己紹介する老人、マスタード。しかし、最初に会ったときの気配の消し方といい、今の姿勢の隙の無さといい、只者で無いのは確かだった。
「えっと、俺はマサラタウンのサトシです。今回はお世話になります」
しかし、それとは別に今回世話になるのだからと、気持ちを切り替えて頭を下げて挨拶すると、「すごいねー。サトシくんはしっかり者なんだねー」と言いながら笑うマスタードさん。
「それじゃあ、早速ワシちゃんの道場に行こうか。連絡取りたいんでしょ」
「ありがとうございます」
お礼を言えば「気にしなくて良いよーん」と言われたが、これで助かったのは事実なのだ。感謝の一つぐらい言わせて欲しい。
サトシくんの手持ち
ウツロイド(色違い)Lv.22