マサラの森に入って少しすれば、この森でよく遊ぶキャタピーやポッポ達がやって来てくれた。
「せっかく友達が出来るチャンスなんだけどなあ……。どうしたもんか」
「ぽぉ?」
「ぎゃぴー?」
俺のスピードに合わせて足元をピョンピョンと移動するポッポとキャタピーが不思議そうに鳴きながら見上げてくる。
その様を見てると、何だか「まあ、いっか」なんて楽観的な気持ちになってきたので、このサマーキャンプでの友達作りは諦め、ポケモンたちと遊ぶ事に決める。
「よーし、キャタピー。ポッポ。今日は遊ぶか!」
「ぽぉっ!」
「ぎゃっぴー!」
俺がそう言えば、2匹とも嬉しそうに鳴き声をあげる。うん、本当に可愛い奴らである。
「……ん?」
マサラの森をキャンプ場の方から少し奥に行ったところにある、少し大きなオレンの木が生えた川辺でキャタピーやポッポ、そして後から合流して来たマンキー、ニョロモ、コイキング、ディグダ達と川岸に転がっていた小石を集めて、チーム戦で誰が1番高く積み上げられるかの、白熱した勝負をしていた時、ふと遠くで叫び声が聞こえた気がした。
「ぽおっ?」
「ココッコッ?」
「あ、いやなぁ。なんか聞こえた気がしてな」
見上げてくるポケモン達にそう言いながら勝負に戻ろうとする。が、どうにも気になる。
……よし、気になることを放置出来ないよな。
「悪い!俺ちょっと言ってくる!」
「も!?」
「でぃぐ!?」
後ろから驚くポケモン達の声を聞きながら、悲鳴が聞こえて来たと思う方角へと走る。
このボディはスーパーマサラ人なんて揶揄される程の運動能力を持つサトシ君のものだ。凸凹とした森の中でも余裕で走り抜けられる。
「……っ!?見えたっ!」
走っていくと、木々や茂みの向こうに少しひらけた場所が見えた。そこへ飛び込めば、何やら興奮した状態のイワークが、地面に座り込んだマサラタウンでは見た覚えのない可愛い女の子を睨み付けていた。
「ちょっ、何があった!?」
慌てて女の子とイワークの間に滑り込み、女の子を背後に庇う。その様を見ていたイワークはピクリと反応するが、攻撃してこない。
「……それで、何があったの?」
イワークから視線を逸らさずに背後の女の子に尋ねれば、「え、っとね」とつっかえつつも教えてくれた。
曰く、ツヨシと名乗った男の子とその友達達に強引に一緒に森を歩こうと連れ出され、森の奥で眠っていたイワークを発見。ツヨシ君が「俺はイワークなんかより強いんだぜ!」なんて言いながら落ちていた石をイワークにぶつけたところ、いいところに当たってしまったのか、目覚めたイワークが不機嫌そうに睨み付けて来て、ツヨシ君達はビビって女の子を置いて逃げちゃったらしい。
おいおい、何してんくれちゃってんだあのばかガキ大将達は!
なんて、内心暴言を吐いても、何も解決しない。一体どうすれば……。
冷や汗が垂れるのを感じながらも、イワークを見つめる。まだこれがスピアーとかじゃなくてよかった。なんて思うが、今の俺には何も解決できる手段が無い。逃げようにも、森の中だ。いかにスーパーマサラ人の体とは言え、こんな森の中、同い年の女の子を抱えて逃げようにもすぐに追いつかれてしまうだろう。
「これならポッポ達を連れて来ればよかった……」なんて後悔しつつもイワークと睨み合っていると、
「……ぐわぁああっ!」
痺れを切らしたのか、遂に襲いかかって来た。
「きゃっ!?」
咄嗟に背後へ振り返りながら女の子の体を抱えて横へと飛び退く。ギリギリで回避が間に合い、俺たちの体のすぐ側を勢いよく通過する岩の巨体。通り過ぎて少し離れたところで再びこちらへ振り返ろうとするイワークを見ながら、俺も何とか身体を起こす。
「ふぅー、あっぶねぇ……。突然悪かったな、痴漢とかで訴えるのはやめてくれよ?」
「う、うん……」
抱えている女の子を安心させようと、少し意識して茶目っ気を出してウインクする。女の子の顔が少し赤いのが気になったが、今はそれどころでは無いのだ。
「ぐぅぅう……」
『たいあたり』を躱された事も腹立たしいのか、更に鋭い目つきになったイワークが唸り声を上げる。
さっきのように躱すのも難しい。……と言うより、十中八九不可能だろう。助けが来ないかなぁ、なんて奇跡を願いながらゆっくりと立ち上がる。と、
「ぐおおおっ!」
とイワークの叫びと共に、イワークの周囲に巨大な岩石が複数生成され始めた。
「ちょっ!?『がんせきふうじ』は洒落にならん!?」
慌てて背後に庇いなおしていた女の子に覆い被さるように抱き付く。俺は2回目だが、この子は違う。頑丈なサトシ君ボディで庇えば、この女の子だけでも助かるかも知れない。そんな希望的観測も込みで目を瞑り歯を食いしばって、来るであろう衝撃に備える。が、
「がるぅ!」
そんな声が聞こえたと思ったら、背後で大きな衝撃音がして、それで終わった。来ると思っていた痛みが無かったのだ。
「……え?」
戸惑いつつも身体を起こして、恐る恐ると振り返ると、そこには……
「がるぅう!」
「がるー!」
「ぴっちゅ!」
程よく怖くて、それほど凶暴性も攻撃的でも無いので、こう言う展開にはイワークさんが便利。