「ぐううう……」
「がるぅ……」
睨み合ったままのイワークとガルーラ。が、気圧されたのかふいと視線を逸らし、イワークは森の奥へと消えていった。
イワークの姿が見えなくなると、俺はホッとして力が抜けてしまい、「だあっ」と勢いよくへたり込んでしまった。
「がるぅっ?」
ぐるりと振り返って俺たちを心配そうに見下ろすガルーラに「助けてくれて、ありがとうな」と感謝を言いつつも、俺の視線はそのお腹に釘付けだった。いや、正確にはそこに入っているポケモンに、だ。
ピチュー。この世界では十数年前に発見された、とあるポケモンの進化前に当たるこねずみポケモン。
本来ガルーラとは共生していないはずだが、何らかの理由で共に暮らしているのだろう。一緒に入っている子ガルーラとは仲が良さそうだった。
「か、かわいい……」
イワークが去ってリラックスしたのか、仲良く袋の中で戯れ会い始めた子ガルーラとピチューを見て、そうポツリと呟く女の子。
確かに可愛いが、俺が釘付けになった理由はそうでは無い。何故だか分からないのだが、このピチューに対して、とてつもないシンパシーを感じるのだ。陳腐な言い方になるが、運命としか言いようがない、それを。
「なあ、ピチュー」
「ぴっ?」
脅かさないように、優しい声を意識して呼びかけると、不思議そうに此方に振り返るピチュー。ゆっくりと右手を差し出しながら俺はピチューに「俺と友達にならないか?」と呼びかける。
「もちろん、ガルーラ達も」
「がるっ?」
視線を上げてガルーラにも呼びかける。すると、ガルーラは少し驚いた様子を見せた後、嬉しそうに俺へと手を伸ばしてくれた。
「っ!いいのか?」
「がるぅっ」
伸ばした俺の手を取り、握手してくれたガルーラ。それを見て袋の中の子ガルーラも嬉しそうに「がるっ、がるっ」と鳴いて、俺に笑いかけてくれた。
「……」
そして、その姿を見たからか、ひょこっと這い出ると、「ぴちゅ」と座り込んだ俺の膝にぴとりと触れた。
ピチューは人見知りの激しいポケモンと聞いているのに、こうして触れ合ってくれたのは、きっと親代わりのガルーラと兄弟の子ガルーラが俺を認めてくれたからだろう。
「これから仲良くしてくれよ、ガルーラ、ピチュー」
俺はそう言って3匹に笑いかけるのだった。
ガルーラとピチューと笑って別れた後、何でか俯いたままの女の子の手を取りながら森の中を歩いて、キャンプ場に戻る途中。「あの……」と呼びかけられたので振り向くと、俯いていた顔を上げた女の子が俺を見つめていた。
「えっと……、どうした?」
「あの、その……。な、名前!名前教えて!」
「うおっ!?」
ウロチョロと視線を彷徨わせた後、必死な様子で大きな声を出す女の子。ちょっとその勢いに面食らうも、「さ、サトシだけど」と何とか答える。
「さ、サトシって言うんだ……」
……何だか俺の名前を呟きながら「えへへ……」とか笑ってるんですけど、この子。前世含めて彼女いた事ない俺にはすこーし刺激が強いんですけど。
なんて、思いながらも、自分の世界にトリップしちゃってる女の子を放置出来ないので、手を繋いだまま先導を続けていると、
「ああっ!居たぁーっ!」
と近くの茂みから出て来た、葉っぱまみれでボサボサの白衣のお兄さんが俺達を指差して叫んできたので、二人揃って肩をビクッと跳ねさせる。
「良かったぁ……。よし、2人とも。お兄さんと一緒にキャンプ場に戻ろう」
「着いて来てね」と言って手招きするお兄さん。手を繋ぐ女の子と見合った後、お兄さんの後を着いて行くことにしたのだった。
その後の話になるが、キャンプ場に戻った俺たちを待っていたのはオーキド博士とそれぞれの母親からのお説教だった。
心配させたのも事実なので、真摯に受け止めていたが、はたから俺を見て嘲笑していたツヨシくんの姿を見つけて、例のイワークの話をすれば、厳格らしいツヨシくんのお父さんが俺たちに事実確認をして来た。
その結末はツヨシくんの頭にどでかいタンコブが出来ていたことからも簡単に分かるものである。
そして、俺が助けた女の子。母親も含めてお互いに自己紹介しなおした時に驚いた。
なにせ、女の子の名前は“セレナ”。朧げになってしまった記憶でも残っている、XYの女の子主人公のデフォルトネームである。そして、アニメではサトシくんと共にカロスを旅した仲間の少女の名前。
まさか、こんな所で出会うとは思わなかったが、もじもじとしているセレナを見て、考えても仕方ないと思いなおすのだった。
転生サートシくんが運命を感じたピチュー。多分知ってる人は分かるでしょう。
後、バタフリーエフェクトでセレナちゃんとの出会い方も変わりました。