俺たちが住むマサラタウンのあるカントー地方のお隣、ジョウト地方。
前世では関西辺りがモデルになったと言われていて、コガネシティにあるグローバルターミナルは、ゲームではWi-Fi通信機能を使った施設であったが、この世界ではカントー・ジョウトの二つの地方に住む人が利用する空港になっている。
そして、そのグローバルターミナルを見た時、俺は妙な既視感を覚え、すぐにその訳を理解した。
「これ、まんまカンクウ*1じゃん」と。
前世でU○Jに遊びに行こうと、大阪に来た時に利用した事がありすぐに分かった。
まあ、だからと言って特に無いのだが、少しだけ前世を思い出して懐かしくなった。
「よぉーし、着いたー!」
飛行機を降り、ミアレ空港のロビーで勢い良く両腕を伸ばすと、「こら、騒がないの」と怒られてしまった。
「けど、初めてのカロスだぜ?少しは興奮しちゃうさ」
「それもそうねぇ……。なら、仕方ないかしら」
そう言って笑うと、ママさんはポケギアを取り出して暫し操作をすると、「よし」と言って側のキャリーケースの取手を持った。
「サキさん達が迎えに来てくれてるらしいわ。サトシ、行きましょうか」
「おう!」
ママさんの先導に従いながら空港内を歩き、下に降りると……
「うおっ!?」
「サトシ……!」
勢い良くセレナに抱きつかれ……と言うか押し倒された。プロのラガーマンばりのタックルを横っ腹にくらい、少しグロッキーになっている俺をよそに、「サトシ、サトシ……!」と何度も俺の名前を呼びつつ抱き締めてくる力を更に上げるセレナさん。
「ちょ、サトシ大丈夫!?」
「セレナ!はやく離してあげて!サトシくんの顔色が凄いことになってるわよ!?」
ママさんとセレナのお母さん、サキさんのお陰で川を渡らずにすんだ俺は、お腹の痛みを堪えながらも、セレナに「久しぶりだな、セレナ。ポケギアで何度か顔を合わせて話していたけど……生で見たら更に可愛くなったな」と昔見た雑誌の教え通りに相手を褒めながら挨拶すれば、また力強く抱き締められ……って、セレナさん。気道が……気道が閉まっちゃってる!
必死にタップするも、気付いてて貰えず、今度はサキさんが実力行使で引き剥がしてくれた。
セレナの「サトシ〜!」と悲痛そうな呼び声には罪悪感が湧き上がるが、俺もこんなに早くは死にたくないので、暫くは引き剥がされたままで居て下さいセレナさん。
「あー……グダグダになっちゃったけど、改めまして。久しぶりね、サトシくん」
「はい、お久しぶりです。サキさん」
空港内のカフェでに場所を移すと、改めてサキさんと挨拶する。
「でも、ポケギアで話してたからそこまで久しぶりって感じはしないわね」
「本当ですね〜。けど、お元気そうで良かったですよ」
そうやって雑談を始める保護者ズ。優雅に紅茶とコーヒーなんか飲んで話に花を咲かせ始める。
その横で、俺は再びセレナにしがみつかれ、左腕が封印されていた。
「えへへ〜、サトシだ〜」
「あのー、セレナさん?」
グラスにオシャレな感じで注がれたミックスオレ片手に呼び掛ければ「なぁに?」とコテンと可愛らしく首を傾げながら見つめ返してくるセレナ。
「その、左腕を離してくれませんかね?」
「……サトシは、私がくっついているの、嫌なの?」
丸いお目々を潤ませて、悲しそうに呟くセレナに、「嫌とかじゃなくて、その、気恥ずかしくて……」としどろもどろになりつつ言い訳する。と、
「わ、私もその、恥ずかしいよ……?」
「なら離してくれませんか!?」
頰を薄らと朱に染めてはにかむセレナに思わず口調が乱れながらも、懇願するが、「でも、サナちゃんが“男の子はこう言うのに弱い”って……」なんでボソリと呟いた。
なんて事してくれるんだよサナちゃん……。まだ子供ながらも女の子らしい柔らかさとか、フローラルな香りとか、男にはかなり刺激が強いのですが……!
まだ大人になっていない体に感謝しつつも、精神をゴリゴリと削られながら早く時間が経つのを待つのだった。