王女「魔王討伐から帰ってきた勇者様がすぐ死ぬんですけど!?」 作:名無し
ーーレティ姫が魔族に攫われた同時刻。
「勇者様!こっちにきておままごとしましょ!」
「おいずりーぞ!なあ勇者様!ままごとより魔王をぶっ倒した勇者直伝の必殺技教えてくれよ!」
「あ、あの勇者様……また冒険のお話聞かせて欲しくて……」
「ゆーちゃしゃま!どんぐりあげりゅ!」
「ちょっと待って!待って!一人ずつ!一人ずつ!」
王城に併設された孤児院。その庭の一角で、勇者ロイドは大勢の子供たちに囲まれ身動きが取れなくなっていた。子供たちがはしゃぐのも無理もない。目の前にいるのは五十年間誰も倒すことができなかった魔王を倒し、世界を救った勇者。
そんな大英雄が今、自分たちの目の前にいるのだ。
「なあなあ!勇者様!魔王ってどんなやつだったの!?」
「え、えーと……大きかったよ」
「どれくらい!?」
「この孤児院の十倍くらい……かな?」
「「ええええええ!?」」
「うそだろ!?そんなのどうやって倒したんだよ!?」
「剣で」
「剣で!?魔法じゃなくて!?」
「うん。だって俺、魔法使えないからね」
「ま、魔法使わず剣で魔王を倒すなんて……」
「すっげー……さすが勇者様……」
「あっ、みんなこんなところにいた!」
「おーい!みんなー!おやつできたってー!」
「まじ!?」
「いまいく!」
「早くいかないとおやつなくなっちゃう!」
「じゃあね勇者様!」
「またお話聞かせて!」
「ばいばい!」
そう口々に言って子供達は元気よく孤児院の中に戻っていく。勇者は子供達の後ろ姿を見送ってから呟いた。
「平和だなあ……」
自分が子供の頃とは大違いだ、と勇者は思った。自分が子供の頃はちょうど王国に大規模な魔物の襲撃があって人々は住処を追われ、その日の食事にも困る有り様だった。無論、それは早くに両親を亡くし、孤児となったロイドも例外ではなく……もしパンが貰えると聞いて『勇者選抜の儀』に参加していなかったら、ロイドの命は早々に消えていたことだろう。でも……
「出発した時はすぐ死ぬだろうと思っていたけど……まさか、生きて王国に帰れただけじゃなくて王女殿下との結婚まで……」
今でも信じられない。確かにあの時、国王陛下が言った通り『王女との婚姻』は平民である自分にとってこれ以上考えられないほどの褒美だ。
しかし、それ以上に……
「俺でいいんだろうか……」
だってレティ姫はこの国の唯一の王女。対する自分はただの平民。いくら国王陛下が俺のことを気に入ってくれているとはいえ、どうしたって身分に差がありすぎる。
「うん……国王陛下には悪いが……やっぱり断ろう。そもそも俺みたいな教養も品もない男が王女殿下と結婚するなんて畏れ多いにもほどがあるしな……」
そんなことを考えながら勇者が空を見上げた……その時だった。
「ゆ、勇者様!!た、大変です!!」
突然、王城の方から息を切らせながら兵士が走ってきたかと思うと、ロイドに向かって兵士は叫んだ。
「お、王女殿下が……!王女殿下が魔物に攫われました!!」