王女「魔王討伐から帰ってきた勇者様がすぐ死ぬんですけど!?」 作:名無し
勇者帰還から一夜明けた城内は昨晩の祝宴の余韻がまだ残っており、城の兵士達は二日酔いの頭を押さえたり、眠い目を擦りながらそれぞれ警備にあたっている。
そして、そんな中をカツカツとヒールを鳴らしながら歩く一つの影があった。
「勇者様、起きているといいんですが……」
レティ姫である。その手にはポットとカップが載せられたお盆が握られており、ポットからはほんのりと白い湯気が立ち上っていた。何故、一国の王女であるレティ姫が早朝の城内をそんなものを持って歩いているのかと言えば……
昨晩、宴も終わりに差し掛かったあたりで、興が乗った王がレティ姫の制止も聞かず勇者にたらふく葡萄酒を飲ませていたからだ。しかも、飲み方を分かっていないのか王に勧められるまま勇者は度数の高い葡萄酒を水のごとくガブガブと飲んでおり……故に二日酔いを心配したレティ姫は朝早く起きて料理長に頼んで二日酔いに効く薬草茶を用意して貰い、このように勇者の元に薬草茶を運んでいる最中なのであった。勿論、王女であるレティ姫がわざわざ運ばなくても侍女に頼めば済む話なのだが、レティ姫はそうはしなかった。だって……
「……風の噂では龍の尻尾を素手で引きちぎったり、自分の背丈ほどある大岩を持ち上げてゴーレムを倒したと聞いていてもっと大柄で粗暴な方かと思っていましたが……実際に昨日初めて勇者様とお会いしてみて……素朴で穏やかで礼儀正しくて……ワタクシ、勇者様となら結婚して……うふふ、いけませんね。勇者様は十年間も世界を旅していたんですもの。きっと、その旅の中で大切な方ができているかもしれません。……まずは、想い人がいないかどうか確かめてから……ふふふ」
そう真心半分下心半分を含んだ呟きを漏らしつつ、勇者が泊まっている部屋の前についたレティ姫は一呼吸おいたのち、その部屋の扉を軽くノックした。
「勇者様、おはようございます。レティ・フォン・ロートンです。お茶をお持ちしたので扉を開けて下さいますか?」
「…………」
「勇者様?」
返事はない。声が聞こえなかったのだろうか?と思い、レティ姫は先程より少し強めに部屋の扉をノックした。
「勇者様、レティです。起きてらっしゃいますか?」
「……」
返答はない。恐らくまだ寝ているのだろう。
「寝ているのかしら……?ど、どうしましょう。せっかくの薬草茶が冷めてしまいますわ……」
しかし、これ以上声を掛け続けるのはかえって勇者の安眠の邪魔になるだろう。と、思った姫は仕方ないと諦めて踵を返そうとした……その時。
キィ……
「……あら?」
何の前触れも無く部屋の扉が開いた。