王女「魔王討伐から帰ってきた勇者様がすぐ死ぬんですけど!?」 作:名無し
突然開いた扉にレティ姫は戸惑いつつ、恐る恐る部屋の中に入っていく。
「ゆ、勇者様……?起きていらして……?」
不気味なほど、静かな部屋をレティ姫は一歩一歩慎重に進み、部屋の奥にある天蓋付きのベッドの近くまで来たところで……その上に眠る勇者の姿を見つけた。
「ああ、やっぱり寝ていらしたんですね」
ベッドに眠る勇者の姿にホッとしつつ、
(起きた時すぐ勇者様が薬草茶を飲めるように側に置いておきましょう)
と思い、レティ姫が勇者を起こさないようにそっと勇者に近づこうとした時。
「……あら?」
そこでレティ姫は違和感に気付いた。
「勇者様……?」
あまりにも勇者が静かなのだ。寝息すら聞こえない。
「あ、あの勇者様……?もしもし、勇者様……?」
なぜだか胸騒ぎがしたレティ姫は眠る勇者に声をかける。
「………」
だが、返事は返ってこない。
「ゆ、勇者様……!勇者様!起きて下さい!!」
もう一度、今度は大きな声をかける。しかし、返事は返って来ず、痺れを切らしたレティ姫がその手を掴んだ瞬間。
「ひっ!?」(冷たい……!!)
勇者の手のあまりの冷たさにレティ姫は短い悲鳴を上げる。そしてそのあまりにも生きてる人間だと思えぬほど冷え切った体温にレティ姫の額に冷たい汗が一筋流れる。
(ま、まさか……)
脳裏に浮かぶのは、昨晩の生気が消え失せた……食卓に突っ伏す勇者の白い顔。
そして今。
ベッドの中で、いくら声を掛けても微動だにしない冷たい体の勇者。そこから導き出される答えは……
「ひっ、ひいいいいいい!!だ、誰かあ!誰か神官を呼んでえーーっ!!ゆ、勇者様がまた死んでいますうううううう!!」
レティ姫の悲鳴が城内に響き渡った。
「姫様!?」
すぐさま部屋の外に控えていた侍女や近衛兵が駆け込んでくる。
「一体何事ですか!?」
「どうしたのです!?」
「ゆ、勇者様が……!勇者様が……体が……!」
「体が……?」
「と、とにかく急いで神官を呼んできなさい!はやく!」
「はっ、はい!!」
ただならぬ姫の形相に近衛兵の一人が慌てて部屋を飛び出していく。
それから僅か数分後。酔いを覚ます為に王城に泊まっていた大神官が近衛兵と共に部屋へ駆け込んできた。大神官は床に横たわるロイドを確認すると、すぐさま表情を引き締め、蘇生術をかけ始める。大神官の呪文と共に暖かな光が勇者を包み込み、
(ああ勇者様……!)
レティ姫は祈るように両手を握りしめ、固唾を呑んでその様子を見守り続け……どのくらいそうしていただろうか。
「……うっ……」
不意に勇者が呻き声を漏らした。