王女「魔王討伐から帰ってきた勇者様がすぐ死ぬんですけど!?」 作:名無し
それからも勇者は……
汚れた体を清める為にお風呂に入ったら
「勇者様?随分長く湯に浸かっていますが、どうし……きゃああああ勇者様がああああ!!」
「姫様どうしましたって……うわあああああ!!勇者様が浴槽の中で沈んでいるぞおおお!」
十年ぶりとなるお風呂のあまりの気持ち良さに溺死し、またある時は、剣を携えて王城に併設されている孤児院に慰問に向かおうとする勇者にレティ姫が
「あら。うふふっ、勇者様ったら。孤児院に魔物はいないのですから剣は必要ありませんよ?」
「そ、そうでしたね。もう世界は平和に……ウッ!」
「ゆ、勇者様!?」
と、言っただけで突然胸を押さえて死んだり、またまたある時はレティ姫の付き添いで城下町に視察に出掛けた先で野良猫に懐かれて
「も、申し訳ありません。自分を攻撃しない四足歩行の動物に耐性が……ウッ」
「勇者様ーー!!」
と、猫に足をすりすりされて死んだり……挙句の果てには見ず知らずの通行人の赤ちゃんに笑いかけられただけで死んでいた。本人曰く『邪気のない赤ん坊の笑顔が胸にきて……』と言っていたが……
「でもこんなに死んでいたら勇者としての威厳もあったものではありませんわ!!ねえ、お父様もそう思いますよね!?」
「はははっ、まあ。よいではないか我が娘よ。きっと勇者は余とお前が想像もできないくらいの苦労をされてきたのだろう。それに、これから勇者にはお前の伴侶として王族に相応しい振る舞いを身に着けて貰わなければならないからな。今だけは自由にさせてもいいのではないか?それにお前は勇者の妻となるのだ。このくらい大目に見て流せるようにならないといけないぞ!はっははは!」
「もうっ、お父様ったら……」
豪快に笑う王にレティ姫は不貞腐れた顔をする。確かに父である言う通りなのだろう。
十年間もの間、魔王を倒す為に戦い続けた勇者がようやく手に入れた平穏なのだ。多少……いや、多少じゃないけど、勇者がどうしようもない理由で死を繰り返したとしてもそのくらい「王族」ならば大目に見て流さなければいけないのかも知れない。だからこそ――
「……陛下、失礼します。そろそろお時間が……」
「むっ、もうそんな時間か。我が娘よすまない。余はこれから商人連合と貿易船の再開について会合があってな。……また時間がある時にでも茶会に誘ってくれ」
「あっ、お父様!…………はぁ、行ってしまいましたわ……」
そう呟いてレティ姫は手元に視線を落とす。と、レティ姫の側に控えていた老齢の侍女が小さく笑った。